第65話

ルナさんの意識が戻らない中、歓喜の声をあげる冒険者。



女神の治癒魔法も効かないとなると静かな所で、とりあえず介抱して様子を見るしかないだろう。幸い呼吸はしているしな。



そこにユウヤが近寄ってきて何があったのかと聞いてきたが説明できる情報が無さすぎてこちらも黙ってしまう。










「グオオオォォォ」



そんな中突然激しい揺れと共に雄叫びが聞こえる。



湖の中から突然空に飛び上がる赤く光っているドラゴン。ルナさんの与えた傷や切り裂いたはずの翼も修復している。


「な、なんで」


ユウヤが声をあげる。




「ちょ、ちょっとあそこって私の秘密の工房じゃん」




ん?いつ来たんだ?セツナが俺のすぐ近くで大声をあげている。






「真さん、あのドラゴンさんとっても強そうになってたりするんですけど。ルナさんもいますし、みんなで逃げませんか?」


負債神は相変わらずブレないな。

ルナさんの件は確かに一理あるが、それこそ誰かが対峙しないと逃げることすらできないだろう。


先程まで歓喜していた冒険者もいつの間にか逃げていてほとんどいないしな。腰を抜かした数人がいる程度だ。


戦うなら俺達だよな。

そんな時ふと親方が目に入る。


「親方さん!この子が意識を戻さないんです。安全な場所に避難してもらえませんか?」


「ぬぅ。しかしアイツの素材が.....」


そういうことか。自分の命よりそこまで職人魂が大事なのか。


「あのドラゴンの素材が手に入ったらお渡しします。俺達でどこまでできるかわかりませんが」



そういうと親方さんは渋々ルナさんを背負って町の方向へ走っていく。




便乗して帰ろうとした負債神は、もちろん縛り上げてこちらに残す。


セツナはなぜかここに残っているが、こいつも素材目当てなんだろうな。危なくなったら逃げてくれるだろう。








さてと、どうするかね。

まだドラゴンは空を飛んでこちらを睨みつけている。



ドラゴンの心臓部に見た覚えのある石らしきものがある。


「セツナ。あの心臓部の石みたいなもの見覚えないか?」



するとセツナが顔を赤くしていく!


「あぁ!私の!あいつ許せん!台座共々武器にしてやる」



あぁ。やっぱりか。

武器作りの時使ってるのを見た台座か。よく分からないが台座食べて元気いっぱいみたいな感じか?

あからさまにさっきより強くなってるみたいだけどな。



「さあ。俺達でアイツをどうにかしないとな」



そう言うと

「僕達でできる限りのことしないとね」


「私はお役に立てないのでみなさん頑張ってくださiiiii~(ビリビリビリ)」


「あ、お兄さんこれ渡しそびれちゃった。はい。あと私も手伝うよ。その代わり素材手に入れたら使わせてよ」


心強いユウヤ、少しはやる気出せ負債神、斬輝の杖を渡してくれた職人魂満載のセツナ。



少し締まらないがあのドラゴンを放っておけない以上やるしかない。

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