第2話 ―それからの日常②!?―

 それから、リリーが用意してくれた昼食を食べた。


「美味しいのじゃ!!」


 お嬢様は、店主との食事など久々なので、とにかく嬉しくてしかたなかった!


「ありがとうロニー!」


「あっ!そうじゃな。いや、本当に美味しいのじゃ」


 お嬢様は女戦士に気まずそうに返事をした。店主との食事が、美味しさを一段と増すものだったからだ。


「あれから、一ヶ月か」


 店主は以前に、お嬢様が来た日を思い出していた。


「そうなのじゃ!長かったのじゃ!!」


 お嬢様は店主と1ヶ月ぶりに会った。それもそうだ。箝口令(かんこうれい)が敷かれていたとはいえ、どこからか噂が流れるか分からない。


 毎日、客でにぎわう武器道具屋。もう以前のように、おいそれとは、お忍びで店主の店に来れるものではない。(まあ、薄々とは気づかれてはいるが、皆、帝国への帰属意識があるので黙っていた)


 それでも、お嬢様は店主に会いたくて、刀の調整を理由に店に来たのだが、調整する必要もなく。次の理由を考えなくてはならなかった。


『ジャックが屋敷に来てくれればいいのじゃ!!』


 何度も店主を誘ったが、店主にとっては居心地が悪いようで、そのうち!と、言ったきり来る事はなかった。


『と、言うか、わらはとの挙式はどうなるのじゃ?せめて婚約ぐらい』


 帝国にて挙式をあげるには、女性はおおむね16歳ぐらいからとなっていた。男性も同じぐらいからでも出来るが、男性の場合は生活が成り立ってからというのが多いので、最低でも20歳以上からが平均だった。


 つまりは現在、13歳のお嬢様が挙式を上げるには、あと3年といった所であった。とはいえ、店主が結婚をするのであればの事だが。


『もう、のらりくらりと、この男は!?』


 と、お嬢様は思いつつ、この店主を好きになってしまったからには、仕方ないかとも思っていた。まあ、そもそもは店主しだいなのだ。


 食事をしながら見回す店主の二階のリビング兼ダイニング。店主の店に来ると、お嬢様には色々な事が思い出された。


『思えば、初めての戦いは犬じゃったな!今ではもう怖くないが、あの時は足が震えたのじゃ』


 お嬢様は思い出しながら食べていた。


『そして、天空の城では見た事もない巨大な怪物ミノタウルスやケルベロスを見たのじゃ。それは物語でしか知らない怪物』


「本当にいたのじゃな」


「ロニー、どうした?」


『声に出てたのじゃ!』


 お嬢様は顔を真っ赤にした。


『もしかして、さっき婚約してくれ!も言ってたのかも知れないのじゃ!?』


 と、ドキドキしていた。それを誤魔化すかのようのに、お嬢様は言った。


「いや、冒険の事を思い出していてな。怪物など本でしか知らなかったから、本当にいるのを見て驚いたのを思い出したのじゃ!」


 下を向きながら、ブツブツ言った。


「確かに絵や物語でしか知らない怪物を実際に見ると驚くよな!特に天空の塔では、ミノタウルスにケルベロス!!俺もそうだったよ!!!」


 店主は興奮気味に言った。お嬢様の驚きを共有するかのように。


「ジャックもそうなのか!?」


 それは、お嬢様にとって、とても心地よいものだった。


「ジャックは他に、どんな怪物を見たのじゃ?まさかドラゴンとかも見たのか?というか、ドラゴンは本当にいるのか?」


 お嬢様は、目を輝かせて店主に聞いた。


「いやー、ドラゴンは見たことないな!てかまず、居るかどうか分からないしな!!俺が思うに、あれはさすがにいないだろ!!」


「なんと!ドラゴンはいないのか!?」


「まあ、伝説の怪物となっているが、相当な大きさらしいが、だけど実際に見たり聞いたりはなかったからなあ。だから、さすがに居ないんじゃないかな?」


 と、言い切る店主に、お嬢様は少し残念な顔をした。


「どうした?残念そうだな?」


「ドラゴンと騎士とかよく物語にあるから期待したのじゃ」


「そうか……で、騎士はドラゴンを退治出来るのか?」


「そうじゃ!ドラゴンを倒し、お姫様をまもるのじゃ!!」


 お嬢様は、キラキラの目で言った。


「まあ、お話の中なら倒せるかもしれないが、もし本当にドラゴンが居たとしたら、人間には巨大過ぎて倒せないだろ!?」


 店主は、お嬢様のキラキラの目を見ていたら、つい言ってしまった。


「なんと!巨大過ぎるとは!?」


「本とかお話から想像すると多分……ケルベロスがエサだな!!」


「ええっ!!あのケルベロスがドラゴンのエサなのか!?」


 お嬢様は天空の塔で見た、犬と言うには余りに巨大すぎる怪物を思い出し、それをペロリを食べるドラゴンを想像するも、大きすぎてイメージがぼやけてしまった。


「ああそれに、本当に戦うにしても、まずウロコが斬れない気がするし、斬れても傷の深さなんて、ドラゴンにはかすり傷程度だろうなあ。だから、よほどの攻撃でもないと、ドラゴンを倒すのはダメだろうなあ」


 店主は腕を組んで考えていた。今までの店主の経験を持ってしても倒せない相手のようだった。とはいえ、お嬢様はもはや想像出来ず、お嬢様の思考も止まった。


「良くは分からんが、つまりはドラゴンは居ないのじゃな」


 そんな残念そうな、お嬢様の様子を見て、言い過ぎたかな?と、思った店主は話を変えた。


「あっ!そうそう伝説で思い出した。海で人魚を見たぞ!!あれは本当にいたぞ!!!」


「本当か!人魚は本当にいるのか!?」


「ああ、物語と同じで、唄で人間を誘き寄せるんだ。それで」


「それで胸はどうなのじゃ?」


「ああ、丸出しだったなあ!大きいのが二つ!!ブルンブルンだった」


「やらしいのじゃ!!」


「聞いたのはロニーだろ!……おっと、話の途中だった。それで、唄で仲間の船が誘き寄せられ、なんと巨大イカのクラーケンが出てきて腕に絡まれて、あっというまに海の藻屑(もくず)だったよ!!」


「どうやって戦ったのじゃ!?」


「その時は商船で、大砲も一つしかなかったから、流石に勝てないと思って、音には音で戦って逃げたんだよ」


「音?どうやったのじゃ?」


「ヴァイオリンさ! もしかしたら!と、思って持って行ったヴァイオリンを弾いたら、人魚の唄を聴いてた奴らの目が覚めたんだよ!俺も弾くまでやばかったぜ!!それで、必死に逃げ出したんだ」


「なんと!ジャックは ヴァイオリンが弾けるのか!?」


「おいおい!反応はそこかよ!!」


 お嬢様は店主のヴァイオリンと言う言葉に嬉しくなった。


「わっ、わらははピアノが弾けるのじゃ!だから今度、一緒に演奏するのじゃ!!」


『これでジャックと一緒に居られる!!』


 と、お嬢様は喜んでいだが、それを聞いた女戦士は言った。


「私、フルート吹ける」


「……」


 三重奏が決まった瞬間だった。お嬢様は、八重歯で食いしばりながら、スゲーやな顔!をした。




 昼ご飯が終わった。女戦士が食器を片付けていく。第二ボタンまであけたYシャツからは、いつものごとく大きな胸の谷間が見える。


『んっ?』


 店主の目がその一点を見ていた。


 でも、いつもと違うのは、少し大きめのYシャツなので、食器を取ろうとしてかかんだ時に、胸元から黒いブラが見えたのだ。その様子を、お嬢様は見ていた。


『リリーめ!ラッキースケベを狙ったのじゃ!!こういう事を淡々とするとは!ホントに恐ろしい女なのじゃ!!』


 そして、お嬢様は自分もゆるいのを着てくれば良かった!と、思った。とはいえ、店主が見てたのは一瞬だけで、女戦士は黙々とテーブルの上を片付けていた。


『ふう!良かったのじゃ。ジャックの心を奪うのは、わらはなのじゃ!!』


「というか、ジャックは何をしておるのじゃ!?」


 お嬢様は、店主が次に起こした行動に、ビックリした!


「爪切ってんだよ」


 食事の済んだ店主は、ゴミ箱を持ってくるとその上で、さっきのダガーナイフで器用に爪を切っていた。


「なんだか、危なっかしいのじゃ!」


 そのやり方は、爪の先をそいでいき、最後に刃先をヤスリがわりに使って磨いていた。


「それに、汚らしいのじゃ!爪切りはこの家には無いのか!?」


 お嬢様には考えられなかった。爪は爪きりで!と、思っていたからだ。


「意外とこのダガーナイフは切れ味が良くって、髭も剃りやすいんだぞ!!」


「そんな事、知らないのじゃ!」


 お嬢様は目を丸くする。そして女戦士に助けを求めるように言った。


「リリー!まさか、リリーはナイフで爪など切らぬよのう?」


「私もナイフで切ってるわ」


 女戦士は食器を片付けながら、お嬢様に答えた。


『あー、しまったのじゃ!時々、ワイルドなのがリリーなのじゃった!!』


 お嬢様はガッカリした。その時、店主が声を上げた!


「そういえば!!」


――ビクッ!


「いきなり何なんじゃ!?」


 店主の声に、お嬢様が驚いた。


「ダガーナイフの凄さを教えるの忘れてた!」


「なんなんじゃ?」


 ちょっと、ガクッとしている、お嬢様。


「殺傷力だ!それがダガーナイフの最大の利点なんだ!!」


 お嬢様は『殺傷力』の言葉に、ドキッとした。


「普通のナイフだと峰(みね)の部分があり、両刃より刺しにくいし、それに刺したあと抜けにくい。また、峰側のには傷がつかない。しかし、両刃のダガーナイフだと、切り裂いて刺せ、また抜けやすい」


 ドキっとしたとはいえもう、お嬢様も慣れているので聞き返した。店主からの大事なレクチャーだからだ。


「刺しやすいは分かるが、抜けやすいと……どうなるのじゃ?」


「この抜けるか抜けないかは重要で、ナイフが刺さったままだと、血管から血が出ないが、抜く事によって出血量が増え、それだけ致命傷になるんだ」


「なるほどなのじゃ」


「だから、もし刺されたら。ナイフを抜くな!」


「わかったのじゃ」


 お嬢様は真剣に答えた。その様子に店主は何か閃いたようだった。


「良し!じゃあ、午後はダガー及び、徒手空拳(としゅくうけん」の練習をしよう!!」


 店主は嬉しそうに言ったのだった。


【ステータス】


☆お嬢様

・動きやすい服装

・白のパンツ


★女戦士

・胸元がメチャクチャあけた動きやすい服装

・もちろん!黒の下着上下


つづく

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