第3話 ―最高の剣!?―☆
「じゃあ次ぎは、剣探しだな」
すると、店主は店から何十本と、同じような長さの剣が入った箱を持ってきた。お嬢様の剣ベルトには、その剣の長さに合う新しい鞘がつけられていた。
「じゃあまずは、この三本の剣を順に『片手』で持て。俺が剣で軽く打ち込むから、ちゃんと滑らせて受けろ」
見せられた三本の剣。でも、それぞれ柄の色が違っていた。
「分かったのじゃ」
「受けたら今度は打ち込んで来い!とにかく思いっきり振り回せ!それを何度もやる」
三本の剣とも、ちょうどお嬢様が、鞘から抜きやすい長さの、『両手持ち』の出来る剣だった。するとお嬢様は、勝手にその中の一本を持って振り出した。
「ちょっと待て!」
と、店主が言うが早いか、お嬢様は剣を横殴りに思い切り振ったかと思うと……
「きゃっ!!」
思いっきりこけた。
白のパンツだった。
「きゃー!見るでない!!見るないぞ!!!」
お嬢様は大慌てでスカートを押さえると、店主に叫んだ!!だが、店主はパンツに興味は無く淡々と言った。
「だから、待てと言ったろう!!剣を貸せ」
店主はお嬢様のパンツなど本当に気にも止めておらず、お嬢様から剣を受け取ると、地面に並べていた。お嬢様は老執事の手を借りて立ち上がった。
「あー!!」
お嬢様の驚きの声!
「今度はなんだ!?」
店主は慌てて頭を上げた!
「スカートが汚れたのじゃ!!」
お嬢様のスカートのお尻が、土まみれになっていた。店主はガクッとした。
「では、剣を順番に並べたが、分かったかと思うが、靴を脱いで裸足になれ」
「なぜじゃ!?」
「そんな事も分からないのか!?そんな靴だと、また滑って足をくじくぞ!!」
お嬢様は自分の靴を見た。踵(かかと)が少し高い、白のエナメル靴。確かにこれは滑りそうだ。
「はっ、裸足に!!!!?わらはに裸足になれというのか!?」
「嫌なら、また明日来い!ちゃんとした靴を履いて!!」
店主にぶっきらぼうに言われ、お嬢様はすぐに態度を改めた。
「なるほど、そうか!」
すると、お嬢様はスカートの両脇から中に手を入れた。その様子を、何気なく店主は見ていた。
「そなたは、むこうを向いておれ!!///」
お嬢様の顔が真っ赤になった。
「ああ、済まん。恥ずかしかったのか!」
お嬢様は顔を赤らめながら、超高級品の淡金色(たんきんいろ)の絹のタイツを足首まで脱ぎ、老執事の肩を借りながら靴と一緒にタイツを脱いで裸足になった。
「用意が出来たのじゃ!」
そして、お嬢様は腕を組んで仁王立(におうだ)ちになった。
「じゃあ、やるぜ!まずは青い柄の剣を持て」
「分かったのじゃ」
お嬢様は青い柄の剣を握り締めた。まずは店主が剣を振り下ろす。お嬢様はそれを受けると今度は剣を店主に向けて振り回し打ち込んできた。
――シャッ!
―シャン、シャキン!
剣を振るたびにツインテールも舞った。
「次は黄色の柄の剣を持て」
「分かったのじゃ」
また剣を受け合う。
「では赤い柄の剣」
三本目を振り回す頃には、お嬢様の額に汗が出て、すっかり息が上がっていた。頃合いを見て店主は聞いた。
「どれが振りやすかった?」
「ハアハア、最後の赤い柄の剣じゃ」
「そうか、では重心は柄寄りだな」
そう言うと店主は、何十本と入っている剣の箱の中から、今度は赤い柄の三本の剣を取り出し、お嬢様に渡した。そしてまた、店主とお嬢様は打ち込みを始めた。
「どれが振りやすかった?」
「ハアハア、二本目の赤い柄の剣じゃ」
「重さは中ぐらいか。じゃあ、次の三本な」
店主が次の剣を持ってくると、お嬢様は剣の違いにすぐに気づいた。
「握りの太さが違うのか」
お嬢様が剣を持ち、柄を見ると『中-細』と書かれていた。
「ああ、次は構えだ。また片手で剣を持って、それから構えろ」
「こう、であるか?」
「マジか!?」
明らかに内股で、肘や手首も曲がり、余った片手はダランとしていた。普通の『構え』すら知らなかったようだ。
「まず足を開け」
「こうか?」
内股のまま開く。
「はあ~」
店主は、ため息をつきながら、お嬢様の後ろに回ると膝の間に、自分の足を入れ開かせた。
「きゃあ!どこに足を入れておるのじゃ!?」
お嬢様はスカートを押さえた!!
「手だともっとマズイだろ!?てか、膝を開け!肘を伸ばせ!膝を曲げろ!!左手は鞘!じゃあ行くぞ、しっかり握れ!!!」
そう言うと店主は、お嬢様の剣に向かって、お嬢様の手の甲側から浅い角度で叩いた。
その瞬間!
―カランッ
お嬢様の手から剣が落ちた。
「次の剣を持て!」
「手がしびれたのだ」
「じゃあ、ここでやめるかっ!?」
店主の厳しい声が飛ぶ。
「分かったのじゃ」
次の剣も地面に落ちた。そして三本目にして何とか落とさずにいた。
「柄は太めか。まあ、ホントなら、このあともっと打ち合って、最良の重さと重心を出し、剣の幅と厚さの調整をして、最高の剣を作ると言ったところだな」
「素晴らしい計測です!」
それを見ていた老執事が賞賛した。
「こんなに緻密に調べる様子など初めて見ました。確かに自分に合った最高の剣こそ、最強の剣という訳ですね!」
「そんな甘かねえよ。強い奴は素手でも強い。そんな奴にかかれば全て最強の武器だ。あくまで今の自分にとっての最高の剣を持つ事ぐらいしか、勝てる確率を上げる方法がないんだよ」
「では、残りは剣術で?」
老執事はやけに話が早い。年の功か?と、店主は思った。
「まあな、でも結局は強い奴が使う、最高の剣と最高の剣術には勝てない」
老執事は、ウンウンとうなずいた。
「だからこそ最強の剣はあり得ないし、最強の剣術も無い。ただただ、最高の自分を目指すしかない」
その会話にお嬢様が割り込んだ!
「なら!魔剣なら!?」
店主は面倒臭そうに、お嬢様に振り向いて言った。
「命と引き換えならな。そもそも魔力あるのか?無ければ、ただ命吸われて即死だな」
「なら、ダメなのか?わらはには勝ちようが無いのか?」
絶望を確認してくるような問い。
『なんで、こんなに切羽詰ってるんだ?』
そう店主は思った。なので店主は真面目に答えた。
「それは素質次第だな。素質と努力。あとは運だ」
お嬢様はその言葉に望みをかけるように言った。
「なら、お前なら!……お前なら、わらはの素質が分かるのか!?」
お嬢様の目は、真剣そのものだった。
『はあ、面倒臭~!!こりゃもう、ある程度は腹をくくるしかないのか……!?』
そう店主は思いながら、お嬢様に言った。
「ああ、ある程度なら」
「なら!」
すると、お嬢様は店主に向き直り、深々と頭を下げた。
「この通りだ!わらはに剣のなんたるかを教えてくれ!!」
金髪のツインテールが、ふぁさっと垂れた。
『とはいえ、腹をくくるにしても、本人に強い意志があるのかを確かめねば』
と、店主は思って答えた。
「イヤだ!」
「なぜじゃ!?」
お嬢様は頭を上げた。
「俺は、ただの武器屋だ!剣術指南は別の所で頼め!!」
『さて、どうする?』
店主が見ていると、お嬢様は歯を食いしばった。
「うぅっ!」
そして嗚咽を漏らしながら目からポロポロと涙をこぼした。そして再び……
頭を黙って下げた。
その様子を見て老執事が言った。
「お嬢様が人に頭を下げたのは初めての事です!どうかこの通りで御座います」
老執事も、深々と頭を下げた。そして言った。
「仰(おお)せの通り、剣術指南の方は別の所で行いますので、ひとまず適性だけでも見てはもらえませぬか?」
それを見たお嬢様は、これ以上、下げられないくらいに頭を下げた。
そして、しばらく時が過ぎた。
「じゃあ、適正ぐらいなら」
『ひとまずは大丈夫そうだな』
店主はそう思って言った。
「教えてくれるのか!?」
お嬢様は目を丸くし頭だけを上げた。
「適正をみるぐらいならやってやろう」
その瞬間!
「わっ!やめろ苦しい!!」
お嬢様は、金髪のツインテールを跳ねらせながら……
「嬉しいのじゃ!!」
八重歯を光らせ、店主の首に抱き付いたのだった。
【ステータス】
☆お嬢様
・測定用両手持ち剣(柄赤-中-太=重心柄、重さ中、柄太め)
・淡金色(たんきんいろ)の絹のタイツ
・裸足
・下着は白のパンティのみ
・白い膝丈ドレス(高級裏地。だから残念!透けて見えないの~)
つづく
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