2000年のカトマンズ

第3話 前夜 走り出す前に

 来週の日曜日から走りに行く。

今年もやっぱりネパ-ル。(日和ったのさ)

あっという間に今日になった。


 毎年この時期憂鬱になる。何でだろう?


 多分怖いのだと思う。

じゃあ、何が?


 初見で走る海外。(今年は二回目のネパ-ル走行になるけど)

いつも思う。

本当に帰ってこれるのか?

トラブったりしないのか?


そんなことは、誰にも分からない。


 中断していく仕事。

上司や後輩は、しゃあないなぁって言ってくれる。

けど、その台詞に甘えていていいのかな?


 それ以上に

何時までこんな事やってんだって声が、内側から聞こえる。


 怖くてたまらない。

 足がすくむ。

部屋の中にすっこんで、布団被っていられたらとさえ思う。


 走り出す前はいつももそうだ。


 幾つかの国を走ったって意気がってみても、その内実はこんな物だ。


 それでも私は走り出す。

臆病さを何とか手なずけて、そいつと共に。

他にやり方を知らないから。

 いや、他にやる事を思いつかないからかも知れない。


Hypericum


 それでも私は走り出す。


モニタ-越しの景色なんざうんざりだ。

創り話なんか、もういらない。


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