日常の中にある闇

紫遠

プロローグ

人通りのない路地裏の通路を、雨が激しく叩きつける。



それを金の髪に虚ろな緑色の瞳で見つめる一人の少女。



全身ずぶ濡れで路地の角に座り込んでいる。



季節は夏とはいえ、奪われていく体温に死を予感させた。



……「こんな所でどうした? 家出か?」



突然の頭上からの声に身体を揺らす。



人なんて信用できない。

この人も珍しいから声をかけただけ。

直ぐにいなくなる。



……「一緒に来るか?」



今までとは違う反応に思わず顔を上げる。



……「決まりだな!」



腕を掴まれ立たされる。



……「俺は、望月拓海」



先に名乗り、名前を促される。



……「由姫」



これが、奇妙な共同生活の始まりだった。


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