第1326話 ど男騎士さんとどこでも扉
【前回のあらすじ】
今回のデラえもんたちの暴走は、そもそも知恵の神が仕組んだものだった。
南の大陸の外に人類を逃がしたのは人類創造の計画の内。
自然によって鍛えられた人類と、自分達の手により作り上げられた人類。どちらがよりいっそう強いのか。そんな好奇心に負けた知恵の神が企図した、壮大な人類への試練だったのだ――。
「介入するべきか、最初は我々も悩んだんだよ」
「これは不足の事態という奴では。人類に対して、我ら神々が力を貸してでも、デラえもんの暴挙を止めるべきではないのか……とな」
「けれども七つ柱の神々は合議の末に『これも人類に与えられた試練だ』と、あえて放置することにした。それが、この南の大陸で行われていた陰謀の真相だよ」
まぁ、なんとなくそんな感じはしていたので、特には驚かない男騎士に女エルフ。
七つの柱の神。その二つの柱に祝福されて、人類はついに神々からこの世界の主役の座を勝ち取った。自分達の力と流した血により。
「さて、それでは。勇者ティト。我々からお前に渡すべきものがある――」
そんな訳で、どエルフさん第九部もここで本当の終わり。
今週末での決着を目処に粛々と神との謁見をこなして行きます――。
◇ ◇ ◇ ◇
「君たちの旅路は我々も見させていただいているが、いささか移動に時間がかかりすぎだ。神々との謁見をスムーズに行うなら、もっと高速な移動手段が必要だ」
「しかし、それもまた試練の一部ではないのですか」
「今時非効率なのは流行らんよ。いいかい、物語というのはね伝えるべき要点を押さえて的確に描写されるべきなんだ。だらだらえんえんと続けて良いのは、『別に面白くないけど、他に面白いものもないし、惰性で読むか』と思われたような知名度のある作品を書いた時だけ」
「このシリーズ全否定するようなこと言うのやめてもらえますかね」
知恵の神は辛辣だった。
伊達に元ネタが「どの回を読んでも神がかって面白い」漫画家だけはあった。
書けば書くほど人が離れる(面白くない)ギャグ小説の登場人物にはたいそう耳が痛かった。書いてる奴の心臓にも痛みが走った。
「私も同じ意見だ。まずは小さな作品でいいから、しっかり自分の持ちうる技量の全てを使って仕上げること。それが上達の秘訣だと思う」
破壊の神も辛辣だった。
彼もまた映像作品の設定協力だけでなく、壮大な作品を幾つも残している伝説級漫画家がパロ元だけあって、言うことがたいそう厳しかった。
本当にその通りだった。こんな小説をダラダラ続けても意味などなかった。
「おいおいおい、終ったわこのWEB小説」
「半年に一回くらいしか☆も入りませんしね。打ち切りになっても仕方ないのでは」
「だぞ。まさかこんな所で連載が終るなんて」
「エリィ!! まだ何も活躍してません!!(幼児化したまま)」
「いやいや、話はちゃんと聞きましょうって。アリスト・F・テレスさまは、そこをなんとかしてあげようって言ってるんじゃないですか」
ごそごそと頭に被ったベレー帽をまさぐる知恵の神。
そこから取り出したのは――あきらかにベレー帽の中に収まるサイズではない扉。ピンク色をした壁のような引き戸だった。
どこかで見たことがあるようなないような。
既にネタにしたことがあるようなないような。
じっとそのピンクの扉を見つめる男騎士に、アリスト・F・テレスが説明する。
「これはどこでも扉と言って、その名の通りどこにでも移動することができる魔法の扉。使わない時は手のひらサイズに縮小させて持つことができる」
「おぉっ、それは確かに便利なアイテム」
「これを使って今後は移動しなさい。もっとも、制限はあるがね――」
どこでも扉の制限は三つ。
一つ、確実に移動場所をコントロールすることはできないこと。過去に自分が行った場所なら可能だが、行ったことのない場所についてはおおまかな所にしか移動できない。非情にギャンブル性のある移動手段だということ。
二つ、移動先は地表に限られること。【MM砲】のような天空に浮かぶ施設への移動はこのどこでも扉では行えないこと。大きな問題ではないように思うが、例えば城塞に籠もっている軍の中枢――城の頂上にいきなり殴り込むというような使い方は、このどこでも扉はできなかった。
そして三つめ――。
「三回に一回、このどこでも扉は移動に失敗する」
「移動に失敗するだって!?」
「三回に一回はかなりの高確率よ!! 大丈夫なの、そんなアイテム!!」
「大丈夫。失敗しても実質的なダメージはゼロ」
「「ダメージはゼロ?」」
「まぁ、とりあえず一度使ってみなさい」
そう言われて、男騎士はさっそくどこでも扉のドアノブを握りしめた。
いいか、大丈夫か、本当にノーダメージか。そんな迷いをみせつつ、彼はゆっくりと扉を手前に引く。
すると――。
「……うぉっ、なんだこの湯気は。いったいどこに繋がったんだ」
「……うわぁ、嫌な予感」
扉から漂ってくるのは白い熱気。むんむんととした水蒸気。
ジュウという音と共に水蒸気がその濃度を増す。
どうやら水を気化させて入るタイプのサウナのようだ。
こんな所になぜ繋がったのか。困惑する男騎士たちの視線の先に、絶妙に股間が見えないポーズで長椅子に座った男達の影が見えた。
どいつもこいつも歴戦の兵という面構え。
そして、手には白樺の枝を持っていた。
「「「「いやーん、ティトさんのエッチ!!」」」」
「どういうことだ!!」
「「「「バーニャ!!」」」」
男騎士は白樺の枝でしばかれると扉の外に弾き飛ばされた。
葉のついた白樺の枝にはお湯が滴っており、男騎士の汚い尻にぶつかるとそれは散弾銃のように弾ける。びしょびしょになった尻と混乱、そしてほんのちょっぴりの快楽と共に、男騎士がその場に立ち上がる。
「このように三分の一の確立でどこでも扉は風呂場に繋がる」
「「どうして!?」」
「どうしてと言われても、そういう道具なのだ」
「「意味が分からないよ」」
「ちなみに、さっきのはハズレだ。当たりだと、サイレント・ミナモトちゃんのお風呂シーンに突入することになる。金曜日の午後7時に流しても、ギリギリ許されるようなお色気サービスカットだぞ」
「「そういうのこの作品に求められてないから!!」」
なかった。
この作品は女エルフをひたすらに下ネタで弄るギャグ小説。
お色気とかそういうのは正直、必要ない要素だった。
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