第1181話 どエルフさんと列車強盗
【前回のあらすじ】
イーグル市表層部へと向かうべく、娼婦型ELFに化けることになった女エルフたち。男達の欲望が詰まったELFの中から、彼女とELF娘が化けることになったのは、なかなかに色物タイプの二人組――。
「私たちはエレガンス&ビューティフォー!! 姉と妹二人揃ったELF――ビーナス&アフロ!! 力のビーナス、技のアフロ!!」
「……うわぁ、思っていたけれどやっぱりネタ枠だよ」
「ありゃー、なんかアメリカンなスタイルのELFですー!!」
ビーナス&アフロ。
アメリカ西海岸のノリをひしひしと感じるダイナマイトガールなELF娘。歩く姿で男の子がのっぴきらなくなる性的な身体をした人たち。(失礼過ぎる言い方)
そんなセックスシンボルみたいなELFに、女エルフ達は化けなくてはいけなくなってしまった。なぁに、貧相でもそこは勢いで誤魔化せる。二人組の姉妹ELFという設定で、身体の盛り上がりのなさはなんとかなる。
けど、アフロだけはちょっと無理かな――。
「アフロは嫌!! アフロだけはやりたくない!!」
「私だって嫌ですよマスター!!」
「あんた私に逆らえない設定でしょ!! やりなさいよアフロ!!」
醜くアフロを押しつけ合う二人。結局、さんざん押しつけ合った挙げ句の両成敗。二人は仲良く揃ってアフロにされて表層に送られることになるのだった。
◇ ◇ ◇ ◇
時刻は進み、女エルフ達が生産工場に侵入してから数時間後。
彼女達が入れ替わった段ボールは、トラックの荷台のコンテナに積み込まれて、表層部に向かう輸送列車が待つ駅へと送られた。地下から螺旋を巻いて地上へと向かう輸送列車。その最後尾に彼女達が乗ったコンテナは接続された。
「よし、これで積み荷は全部だな。どれ、それじゃさっさとこんな陰気くさい場所はおさらばしよう」
「そんなこと言ってさんざん色街で楽しんだくせに」
「うっせえな、それはそれだよ。それに、こんな危ない場所に来るんだ、それくらいの役得がねえとやってられねえよ……」
「そうっすね。今回の輸送では襲われないと良いですけれど」
そう語ったのは、輸送列車の機関部に載る操縦士達。どうやら、彼らにとってこの地下に向かう仕事は、決して楽なものではないらしい。
若い方の操縦士が「いいから無駄口叩くな!」と殴られる。
同時に、輸送列車が意味があるのかないのか汽笛を上げて――ゆっくりと表層部に向かってレールを駆け上がりだした。
列車の数は10両。距離にして200mちょっとある鉄の塊が、ぞろぞろと天井に向かって登っていく。誰もそれを眺めるものはいない。暗く静かなその運航は、なんだか途方もなく後ろめたい空気を背負っていた。
運航を開始してからおおよそ一刻が経った頃だった。
「……うん? なんだ?」
「霧?」
輸送列車の前方にスモークが立ちこめた。地下坑道には時々、ガスが溜まるような場所がある。ELFたちにそれは無害ではある。列車にもさほど影響はない。
特に気にせず彼らは突っ込んだのだが――。
バチィッ!
「がぁっ!!」
「うぎぃっ!!」
霧は目を眩ますためのブラフ。
そっと伸びた電極を首筋にたてられると、操縦士たちが電撃を喰らって気絶する。
倒れた彼らの傍に姿を現わしたのは、白い頭巾を被ったELFたち。
彼らは言葉も無しに目で合図をする。数名が操縦し達と共に機関部に残り、彼らを縛り上げると、もう数名が後ろの車両へと足早に移動した。
目につく荷物を片っ端から確認していく。その中から、持ち運びやすい貴金属や、価値のありそうな書類を見つけると、彼らはそれを自分の懐にしまった。
列車強盗である。
イーグル市の地下深く、地下都市と表層部と結ぶ暗い物資輸送。公にすることが難しいそれを狙って、不逞の輩が暗躍しないはずがない。今日は襲ってこないでくれよという操縦士たちの願いは見事に外れた。
よりにもよって女エルフたちが載る列車が襲撃されてしまうとは――。
「くくっ、まったく笑いが止まらねえぜ。政府が非公式にやっている、地下都市との物資のやり取り。被害を出そうにも、公にできないモノのやり取りだから、どこにも訴えかけることができねい。やりたい放題だ」
「兄貴。こっちに機械鎧がありやすぜ。型は古いですけれど、充分使えそうだ」
「おー、今日は機械鎧の輸送もしてやがったか。こいつは上々だぜ。帰りに乗っていこう。それに、機械鎧が使えるなら、もっと大型のブツも持って帰れるな」
「あ、兄貴ぃ!! 俺、一度で良いから、自分専用の女ELFが欲しかったんだ!! 持って帰っていいかなぁ!!」
「いいぜいいぜ!! そうだな、地下都市は娼婦型ELFの一大生産拠点だからな、この列車にも載せてるはずだよな……くくくっ!!」
舌なめずりをするELFたち。本来生殖を必要としない彼らが、どうしてそこまでこだわるのか。悲しいかな人間を模した時点でそうなるのは宿命ということか。
ぐへへとうひひと男達が列車を後部に向かって歩いて行く。
やがて、彼らは最後尾――女エルフ達が隠れる10両目へと到着した。
先ほど兄貴分の男に女ELFが欲しいと先走った屑ELFが、並べられた段ボールに駆け寄る。
「兄貴、あったぜ娼婦型ELFだ!! すげえ10体もある!! ハーレムだ!!」
「そうがっつくなよ。みんなで仲良く山分けといこうじゃないか。じっくりと、具合を確かめさせてもらってからな」
男達の下卑な笑いが車両の中に響く。
その時だった――。
「うわっ、なんだいきなりスモークが!!」
「なにっ!? ちくしょう、まさかハメられたのか!!」
「なんだこれ、前が見えない――」
『エレガンス&ビューティフォー!!』
「「「「!???!???!???!」」」」
吹き出す謎の濃霧。突如響き渡る謎のアナウンス。そして陽気なミュージック。
スモークの中にピンクと黄色の光が灯ったかとおもえば、怪しいシルエットを映し出す。そこに立って居るのは二人の女――そう、アフロとアフロ。
「エレガンスELFゥゥウウウ!! ビーナス!!」
「ビューティフォーELFゥゥウウ!! アフロ!!」
「「二人揃ってビーナス&アフロ!! フゥウウウSEXYYYYY!!」」
「「「「どどど、どういうことだってばよ!?!??!???!」」」」
どういうことなんでしょう。
なんか、いつになくはっちゃけた勢いで出て来た、女エルフとELF娘さん。
女エルフはいつものことだけれども――ELF娘さんはそれでいいのか。登場して初っぱなから、ちょっと心配になるとばしっぷりであった……。
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