第1079話 キングエルフさんとデビルほにゃンダム

【前回のあらすじ】


 場面変わってキングエルフたち宇宙戦艦オーカマ陣営。

 人類滅亡の危機を食い止めるため、南の大陸に乗り込んだ彼らは、さっそく現地での活動拠点とするべく、破壊神の都市ダイナモ市の乗っ取り作戦に出た。


 やることが完全に敵側。

 しかしながら、パイロットたちは意外に冷静。倫理観が現実世界の延長線上にある近未来と違ってここはファンタジー。原始的で荒っぽいやり方も、それほど抵抗なく受け入れられた。


 というか、逆に宇宙世紀以外のそれっぽくて、一部には好評だった。


「……いや、それにしたって嬉々としてやるなよ。ダメでしょ、侵略なんて」


 一部のツッコミが五月蠅く言ったがそれはそれ、意思決定も完了しいよいよ出撃という空気が漂うオーカマクルーたち。しかし、そこに突然の入電。

 ブリーフィングに使っていたモニターに表示されたのは、巨大な機械鎧が大暴れする姿。まさしく、女エルフ達を襲った敵の姿だった。


 アレはいったいなんなのだ。

 どうして都市が襲われているのだ。


 その異様な光景にパイロット達に動揺が走る――。


「うぉっ、なんだよあの禍々しいバケモノ。シリコーンと良い勝負じゃねえか」


「神の眷属ですかね。なんにしても、どうしてこの強襲のタイミングで」


「……いや間違いない!! アレはデビルほにゃンダム!!」


「「「「「デビルほにゃンダム!?」」」」」


 はたして、デビルほにゃンダムとは。いったい何ンダムなんだ。


「……いいのかしら、こんな雑なパロで」


◇ ◇ ◇ ◇


【機械鎧 デビルほにゃンダム: 人間が搭乗することでしか起動することができない機械鎧。その制限を回避するために作られたワンオフ機。擬似的な生命機構を搭載することにより機械鎧に人が搭乗していると誤認させ、さらにパイロットの防衛機能を暴走させることで、自立駆動を可能にしたものである。しかしながら、防衛機能の暴走処理に不具合があり、デビルほにゃンダムは歩く災害と化してしまった……】


「……いや、なんでお前がそれを知っているんだ?」


「キングエルフさん、普通にファンタジー側の登場人物ですよね?」


「なんだお前達、パイロットなのに読んでいないのか? パイロットマニュアルに書いてある内容だぞ。まったく、これだから感覚でロボットに乗る奴は嫌いなんだ。最初にほにゃンダムに乗った人を見習って、ちゃんと読め」


「「うわぁ、すっごい分厚い上に特徴的なマニュアル」」


 Vの字の装飾が施された機械鎧搭乗マニュアルを取り出したキングエルフ。

 そんなものがあることはおろか、まさかマニュアルを読んだくらいで機械鎧が操れるようになるとは思っていなかった少年勇者と仮面騎士は白目を剥いた。


 二人とも、どちらかというと実戦を通して強くなるタイプである。

 そういう地道な強くなり方とは無縁な方だった。


 対してキングエルフ。


「まったく、お前達はいつもそうだ。感覚で物事をすべて片付けようとする。お前達のような戦闘つよつよの人がポンポンと居れば話は別だがな、戦争というのはそんな単純なものではないのだ。いいか、戦争は数だ。そして、兵の質だ。平均化され統一された戦力を、いかに効果的に使うかだ。エースパイロットなど不要。必要なのは人を兵に変え、適切に運用するためのロジック・システム・マニュアルだ」


 こっちはこっちで徹底したマニュアル主義者。筋肉単細胞キャラムーブをさんざんかましておいてからの随分な手のひら返しだった。


 まぁ、エルフという体格で劣る種族にも関わらず、技術でそれを覆すというのが彼の操るエルフリアン柔術である。ここにいる誰よりも、現実的な戦い方をしているからこそ、出てくる言葉かもしれなかった。


 戦い方は随分非現実的だけれど。


「さらにデビルほにゃンダムは、DG細胞という特殊な魔法を使う」


「DG細胞」


「ほにゃンダム意味なくないですか?」


「これはドクロガイコツ細胞の略で、ELFがこの魔法にかかると、人間を模した体表部分が溶け落ちて、銀色のスケルトンに変貌するものなんだそうな」


「あ、なるほど、人間には実害ないんですね」


「まぁ、良かったのか悪かったのかわかんねーかど、とりあえず危ないもんじゃなくて助かったぜ」


「ちなみに、女は特に実害はないそうだが、人間の男が罹患すると腋が出るくらいに袖まくりしたくなるそうだ」


「「なんでなのよ!!」」


 咄嗟に袖を握りしめる少年勇者と仮面の騎士。

 昭和の時代ならそれも、大人の男のお洒落ファッションとして許されたかもしれないが、今の時代的にはNGだった。最近は、爽やか少年スポーツ漫画でも、そんな腕まくりしている奴なんていない、恥ずかしい奴だった。


 特に仮面の騎士は、元ネタがやっていただけに繊細な反応をしてしまう。

 おのれDG細胞、余計なことをと仮面の騎士はその仮面の奥に、負の感情を漂わせるのだった。


 なんにしても、おもいがけず巨大な機械鎧の情報は手に入った。


「で、どうすりゃいいんだ、いったい俺たちは」


「特に破壊神の勢力にある機械鎧という訳ではないのだが、アレが居てはダイナモ市を乗っ取る乗っ取らないの前に何もできない。まずは、最優先でデビルほにゃンダムを沈黙させる」


「……チッ、仕方ねえか」


「まぁ、確かにあれと共生することはできないでしょうしね。それに、我々の力を見せつけるのには、いい相手かもしれません」


 納得するパイロット達。

 彼らが一通り覚悟を決めた所で、デビルほにゃンダムを映していたホログラムに、今度は周囲のマップが表示された。


 女エルフ達がいるカプセルホテル。

 そこを中心にして描写されたマップに、パイロット達の名前が配置されていく。


「では具体的な作戦についてだ。デビルほにゃンダムとの直接戦闘は、アレックスとセイソくんの二人に任せる。セリス、アシガラ、ミレディは、後方から弾幕での援護射撃と、DG細胞に罹患したELFたちの掃討に当たれ」


「「「「「了解!!」」」」」


「デビルほにゃンダムは強い再生能力を持っている。これを封じるには、コクピットに収納されている、疑似整体ユニットの破壊が重要だ。それは、私が直接乗り込んで破壊する。それまで、デビルほにゃンダムの気を惹きつけてくれ」


 いつになく真面目な顔をするキングエルフ。彼は少年勇者と仮面の騎士の肩に手をかけると、「頼むぞ、アレックス・セイソ」と声をかけた。

 この短い期間で随分と信頼されたものである。


 まぁ、トンチキな流れには間違いないが、作戦は間違っていない。やることもそれほど説明されれば素っ頓狂なモノでもない。となれば、生粋の戦士である二人も、ついついその気になる。


「まぁ、任せろ。エースってのがどういうモノか見せてやるよ」


「まだ一度も出撃してないのにエースとかなに言ってるんですかセイソさん。まぁけど、頼られたならやってやりましょう」


 かくして、敵味方エルフ入り乱れてのミッションが幕を開けた。

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