第1043話 仮面の騎士さんと主人公機
【前回のあらすじ】
キングエルフ、まさかのここで参戦。
ロボットモノ展開と相性の悪そうなエルフ。それでなくても肉体戦闘担当、筋肉タンクキャラのキングエルフに、機械鎧のパイロットなんて務まるのか。
いや、こんなギャグキャラを引き受けてしまって大丈夫なのか。
なんとか煙に巻いて追い返そうとする艦長。
しかし、こんなトンデモキャラクター、艦に乗せてしまった時点で詰んでいた。
「オーバースキル!! 白い
「ぎゃぁああっ!! ふんどし!! 白いふんどしが!!」
「うわぁ、あれはなかなか精神ダメージが大きそうですね」
「あれやられたらしばらく行動不能になりそうだな。よかった、後ろに下がってて」
うらなりの士官とエルフの荒ぶる族長では話にならない。
あっという間に武力制圧。宇宙戦艦オーカマは、ふんどしエルフによって乗っ取られてしまうのだった。
「お前たち!! これからは私がこの船を仕切る!! みんなで世界の平和を守るためにエクソダスするぞ!!」
エクソダスとは?
◆ ◆ ◆ ◆
「まぁ、うん、もう何も俺は言わんよ。なんかやる気みたいだし、アンタがやればいいんじゃないでしょうか。どうせ俺も雇われ艦長ですし」
「なんで拗ねちゃってるんですこの人?」
「言ってやるなよ。物語の都合で無茶苦茶な目に会わされてる人間なんだから」
「なんなの、嫌になっちゃう!! 急にお前ら関係者だから行ってこいって押しつけられるし!! 勝手なのよオッサムさまも、トミーさまも!! なんでもかんでも手広くやるのはいいけれど、それに振り回されるアタシ達のことも考えてよね!!」
完全に自棄になっている。
上に立つ者はそれはそれでいろいろと苦労が多いものだが、どうやらこの艦長もそこそこに苦労しているらしい。少し高圧的な態度もあいまり、ここまでちょっと反抗的に接して来た少年勇者と仮面騎士は、そんな彼に少し同情してしまった。
対して――。
「軟弱者!! 上に立つ者がそんなことでどうするのです!!」
「……なんか、ポジション奪われていませんか、セイソさん」
「いいよもう。艦長変わったし、別にその設定は生きてないだろ。それに、そんなこと言ってたら、お前もすぐにポジション奪われるぞ」
「そんなダメな艦長!! 修正してやる!!」
「……うわぁ。もう、なんでもアリじゃないですか」
「賞獲ってからの方がパロディやメタネタ酷くなるとか誰が思うかよ。本気かよ、こんな著作権法にメッタ刺しにされそうな奴に本を書かせるとか」
本気なんですかね?(白目)
なんにしても、仮面の騎士と少年勇者のポジションもぶんどって、好き勝手やるキングエルフに宇宙戦艦オーカマは乗っ取られてしまうのだった。
まぁ、変に新キャラが出て来て仕切るよりは話の展開はスムーズかもしれない。
「という訳で、私がこれからオーカマを仕切るキングエルフ。本名、チ〇包金玉だ。気軽に金玉と呼んでくれ」
「キングエルフさんで」
「よろしく頼むぜキングエルフ」
「なんだお前ら、そんな永久凍土のように冷たい対応。もっと心を開けよ」
心を開くとか冷たいとかそういう問題ではない。
倫理とレーティングの問題だった。
艦長から帽子とジャケットを奪って羽織るキングエルフ。彼はさっそく、戦力分析という感じにカタパルトから直結している格納庫を眺めた。
ずらり並ぶのは鋼の甲冑。
いかめしい機械鎧がそこには並んでいる。
トンチキなやりとりに圧倒されていたが、あらためて仮面の騎士達が息をのむ。
「すげぇな。詳しい理屈は分からねえが、恐ろしい魔力の胎動を感じる。間違いなく教会秘匿レベルの特級神器だぜ」
「神器ですか。とすると、やっぱり神々の内乱っていうのは本当なんですね」
「……あぁ、その辺りの説明の途中だったな。実は」
「よし!! そこのなんか主人公のライバルっぽい感じのお前!! 仮面付けてる格好つけ!! お前の機体はあのピンクの奴だ!!」
「人がしているんだから聞きなさいよ!! 話を!!」
いよいよ艦長、セリフ回しも怪しくなってきた。
いいからちょっと休んでいてくださいと少年勇者と仮面の騎士が気をつかって彼を横に移動させる。肩で息をする艦長、彼は頭を抑えながらも、自分が軍人にあるまじき冷静さを欠いた状態だということに気がついたのだろう、そっと黙り込んだ。
いや、もう、本当にいろいろあきらめたのかもしれない。
無理もなかった。いきなり話をぶった切られて、機械鎧の話なんかにすげかえられたらそりゃ怒るのも止む無しだった。
艦長を譲ってしまったのだから仕方がない。しぶしぶ、キングエルフの前に戻った仮面の騎士と少年勇者。たぶんも何も、仮面付けてる格好つけとは仮面騎士より他にいない。なんでそんな指示をされなくちゃいけないんだろうと思いつつ、彼はそのピンク色の機械鎧を見た。
「へぇ。なるほど、流線型のいいボディだ。アレは動き易いだろうな」
「他の鎧と比べても小型ですね。あ、けど、複眼ですけどいいんですか?」
「まぁ、俺はキャラ的に単眼だよな。というかピンクじゃん。赤でしょ、そりゃまぁプラモデルの色的に、ピンクだけれどもさぁ」
キングエルフにつられて、ついついメタなことを話し出す二人。
キャラ的なカラーとか言うもんじゃない。けれども、確かにエドワルドくんの言うことももっともだった。
ここまで忠実に、ロボットモノの仮面強キャラのイメージを守ってきたのに、なんだか少し違うチョイス。どちらかというと、宇宙世紀以降の雑魚マシンみたいなフォルムをしたそれに彼は首を捻った。
これは俺が乗る機体じゃないんじゃないか――。
「何を言っているんだ。お前にぴったりな機体じゃないか」
「……そうか? どの辺が?」
「ピンクだぞピンク。仮面を被った敵のキャラが、最終戦闘で乗るだろう」
なるほど。
言われてみれば、ピンクの奴に乗っているイメージがある。
Wでは仮面を被った敵キャラがピンクの奴に乗っていた。
「それにほら、袂を分った幼馴染や元仲間が乗るのもピンクじゃないか」
「……言われてみればそんな感じもしますね」
「もう完全に宇宙世紀じゃないけど」
「それにいざとなったら追加装甲で補強すればいい」
「それもそうか」
「あれ? けど、それって……」
「黒い鎧でがっちりと固めて、それで元の機体が分からなくなって、物語の最後に装甲が全て外れたときに初めて――」
それは違う仮面キャラだしピンクの機体だ。
だから、雑にスーパー大戦みたいな広がりをみせるのはよせ。仮面の騎士と少年勇者は冷たい視線をキングエルフに向けた。
大丈夫だろうか。こんな男を艦長にして。
そして、こんな雑なパロディ展開をしてしまって。
一堂、今更ながら変な緊張が走った――。
「機体コードはそうだな、メンズエステにしておこうか」
「……これ本当に怒られないかな。大丈夫かな坊や」
「聞かないでくださいよそんなの」
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