第992話 どエルフさんとチームリベンジャーズ・インフィニティー

【前回のあらすじ】


 レッドを男騎士が、ブルーを女修道士シスターが演じることになった。

 はたして秘密戦隊とはどういうことをすればいいのか。何をすれば怪しまれないのか。男騎士と女修道士シスターが男ダークエルフに問う。


 日アサ文化を解する男ダークエルフ、端的にそれぞれのカラーの特徴を男騎士たちに説明する。


 曰く――。


 レッドは未成熟なリーダー。

 ブルーはそんなリーダーを支える落ち着いた男。


 たしかにそれはその通り。まさしく戦隊リーダーの理想的な配置。

 しかしながら――。


「レッドは発明品により世界を滅ぼしかけたり、一人で突っ走りますね」


「ブルーはいろいろ抱え込んで、チームを分断したりしちゃいますね」


 その例は、日本のヒーロー戦隊ではなかった。

 アメのコミのほうのヒーロー。しかも、戦隊ではなくチームだった。


「まぁ、タイトルからパロ元お察し案件よね」


 その流れだと、どエルフさんは筋肉マシマシ緑のオークみたいな奴になっちゃう感じですけれど、それはいいのですかねどエルフさん。そんなコスチューム、ピンクより恥ずかしいんじゃないですかね、どエルフさん。


「いや、そう言って、それより酷いオチになるんでしょう。知ってるわよ」


 はてさて、それはどうなることやら。


◇ ◇ ◇ ◇


「だぞ、こっちも着替え終わったんだぞ!!」


「お、その声はケティさん」


「ケティさんは確かイエローポジションでしたっけ? どのような格好になられたんでしょうか……」


 元気な声が更衣室から響いたかと思うとさっとカーテンが横に開く。出て来たのは男騎士パーティの中でも、一番若くて幼いワンコ教授だ。

 その元気なイメージに沿って、彼女が担当することになったのはイエローポジ。

 秘密戦隊のイエローといえば隊内のムードメーカー。ともするとシリアスに話が行きそうになる所を、軽妙なキャラクターで転がすキーメンバーであった。


 確かに性格的にはワンコ教授が適任。

 しかしながら、話を動かすレベルの動きができるだろうか。そんな不安を抱きつつ男騎士と女修道士シスターが目を向ける。


 するとどうだろう。

 そこに立っていたのは――。


「あれ、ケティさん? 着替えたんじゃなかったのか?」


「いつも通りの白衣姿じゃないですか? えっ、イエローじゃないんですか?」


「だぞ。そう言われても、この服だったんだぞ」


 ぶかぶかの袖長の白衣。

 黄色いセーター。

 そして、ケモノ耳に尻尾。

 ボーイッシュなワンコ教授の天然パーマのボブヘア。


 瞳にハイライトが入っているが間違いない。


 アグネスのタ○オン。

 なんの脈絡もなく、アグネスのタ○オンのコスプレをしたワンコ教授が現われた。


 秘密戦隊もなにも関係ない。

 ただ旬なだけの――しかもこれ掲載するときには下火になっているかもしれない、ウ○娘ネタであった。


 これはいったいと男騎士と女修道士、ワンコ教授が男ダークエルフに目を向ける。


「いやぁ、まぁ。戦隊ヒーローの黄色キャラっていうのは、見た目よりも内面の方が大事でして。その点でいくと、ケティさんは既にキャラが充分立っていらっしゃいますので」


「だぞ? なんだか分からないけれど、褒められてしまったんだぞ?」


「まぁ、確かにケティさんのキャラは立っていますけれど」


 むしろこれまで長く連載をしておいて、立っていなかったら不思議なくらいだ。

 唯一無二のパーティ内の博士役。兼、純粋な子供枠。ワンコ教授は確かにキャラ立ちとしては申し分なかった。


 他のキャラの方が立っている気がしないでもないが、そこはご愛敬。

 アホとか、どエルフとか、性職者とか、面子が強烈過ぎるのだ。その面々に混ざって、堂々と活動できているだけでも、充分に彼女はすごかった。


「だぞ。話は外で聞いていたんだぞ。秘密戦隊のメンバーとして、適切な動き方をする必要があるんだぞ。任せるんだぞ。僕もやってみるんだぞ」


「お、頼もしいな、ケティさん」


「イエローは具体的にはどういうキャラなんです? 色物とは言いましたが?」


 再びキャラ談義。男騎士達が、ワンコ教授が演じるべきイエローのキャラクターについて男ダークエルフに問うた。少し面食らっていた男ダークエルフは平静を取り戻すと、そうですねと小首をかしげる。


 どうやらイエローというキャラクターを説明するのは難しいらしい。

 実際、ヒーロー戦隊のイエローポジションは、千差万別色んなタイプがいるので、一概にどうというキャラクターを述べることは難しかった。


 少しの沈黙の後、歯切れ悪く男ダークエルフが切り出した。


「まぁ、奇抜なキャラというのが共通して言えることでしょうか。それこそ、皆が一様に同じことを考えている中で、一人だけ全然違うことを考えている。そしてそれが許されるようなタイプ。多様性を求められていると言えますね」


「だぞ、まさに僕にぴったりのキャラクターなんだぞ!! 冒険者パーティーの中で一人だけ研究者!! 僕がやらなくちゃ誰がやるって感じなんだぞ!!」


「あ、僕っ娘ってのもポイント高いですね。いいいですよいいですよ。そんな感じで天然にやっていれば大丈夫だと思います」


 まさかのマッチング。

 ワンコ教授は特にキャラを演じる必要もなく、根っからの秘密戦隊イエローとしての素養を持ち合わせていた。


 とはいえ、少しくらいは何か合せるべき場所はあるのではないか。

 男騎士と女修道士シスターが、本当にそで大丈夫なのかという顔をすると、それに苦笑いで男ダークエルフが応える。自信満々にしているワンコ教授に釘を刺すように、彼はできればと注文を差し挟んだ。


「まぁ、今のままでも充分ですが、イエローは狂言回しですから、トラブルを巻き起こすという役割もあります。ケティさんは少しおとなしすぎる所がありますから、その辺りを意識されるといいかもしれませんね」


「だぞ? 狂言回しなんだぞ?」


「たとえば――怪しい薬を仲間に飲ませてしまうとか、あるいは、秘密戦隊内で恋愛を流行らせて、敵との戦いをぐだぐだにしてしまうとか。そういう、仲間なのは頼もしいけれど、ちょっと厄介で取り扱いに注意が必要って感じを、もっと全面に出していった方がいいかもしれませんね」


 だからアグネスのタ○オンである。

 そして、純情○隊のイエローである。

 確かにどちらもトラブルメーカーという点において、なかなか高ポイントな例ではあるが、いろいろと尖りすぎた例であった。


 世の中には普通のイエローだっている。

 確かにトラブルメーカーという側面があるかもしれないが、ちょっと穿った目で見すぎではないか。


 しかし、日アサの分からぬ男騎士達は、素直に男ダークエルフの言葉に従うことしかできないのだった。


「だぞ!! 頑張るんだぞ!! やってみるんだぞ!! ふんす!!」

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