第970話 どエルフさんとロ○コン村
【前回のあらすじ】
熱帯密林都市ア・マゾ・ンをコントロールするマザーコンピューターに接触した男騎士達。それこそは知恵の神アリスト・F・テレスの現し身であり、今の人類の元となった、未完成だった人類の祖先を世に放った存在。
その名をDXデーモン。
略して○ラえもんと言った。
「いや、言わない呼ばないわよ、そんな危ない呼称」
人類が自分たちの力で進化し、神と同じ領域に登ってくると信じていたDXデーモンとアリスト・F・テレス。二つの人を越えた存在は結託し、神々がまだ認めていない人類を大地へと解き放った。
彼らの思惑はぴしゃりとはまり、人は自分たちで力を獲得した。そして、神から庇護する対象として認識されて、今日に至るまでの繁栄を手に入れたのだった。
しかし、そうして現在の人類が、神々が望む存在としての地位を確立してなお、まだア・マゾ・ンは存在している。稼働し、今日も新たな人を作り出そうとしている。
はたしてそれはどうしてか。
その答えは――。
もう一つの南の大陸にある都市にあった。
「ここ、ア・マゾ・ンと競い合わせることで、よりよい人類の姿を夢想した跡。もう一つの人類創世の地」
「ライダーンが造った都市!!」
「もう一つの人類創世の地!!」
「その名を――がんばれロ○コン村!!」
破壊神ライダーンが創造した夢の都市。
この都市から、人類誕生の地を守るために、DXえもんは戦っていたのだ。
はたしてここに神VS神の仁義なき戦いの幕が上がる――。
◇ ◇ ◇ ◇
「そう、人造神オッサムはアリスト・F・テレスとライダーン、二柱のテクノロジーを得意とするに神々に人類の設計図を渡していたのです。そして、二つの神を競い合わせて、より優れた人類を採用する予定だった」
「……それじゃ、つまり」
「このメタリックなゴーレムのように見えるのは、まさか」
「そうです。これはもう一つの人類の形。ライダーンは人の未来の姿にELFたちのようなゴーレムとの融合を見ました。進化適応して成長していくのではなく、自分に足りない部分を科学技術で補う。そんな未来をライダーンは夢想したのです」
もう一つの人類。
そして、その人類を造った文明。
頭の悪い男騎士にも分かる衝撃が走る。
自分たちを置き換えるかもしれなかった存在達との邂逅。
そして、そんな者達が自分たちを造った都市を狙っているという不気味さ。
自分たちを守るためならば自衛のために戦いもしよう。
また、日々進化し続ける相手に対抗するためならば、こちらも進化を止めるわけにはいかない。人類の創造という目的を果たしたDXデーモンたちが、今なおも停止しない理由は腑に落ちた。
そして――。
「ここに俺たちを呼んだのは、それをどうにかして欲しいからか、DXえもん」
「いや、微妙に混ぜるな。デーモンじゃいかんのか?」
「えぇ、いや――そうなんだよぉ。僕もこれまで、自分でできる範囲で一生懸命やってきたつもりなんだけれども、もうどうにもならなくって。ごめんねぇ、ティト太くん。悪いんだけれども、このア・マゾ・ンのために力を貸してくれないかなぁ?」
「そしてお前もノリノリで猫なで声になってるんじゃない!! しばくぞこのぽんこつロボットが!!」
小ボケはとにかく、男騎士達が召集された理由はそこ。
神々は今、男騎士達の力を欲していた。自分たちの生存圏を死守するために。人類発祥の地をこの世界に残すために。
再び口調を戻して、マザーコンピューターは男騎士に求める。
「ア・マゾ・ンを守っているのはそれだけではありません。この都市間の抗争に終止符が打たれたその時、破壊神ライダーン率いるもう一つの人類は、現在世に満ちている人類を滅ぼそうとするでしょう。これはおそらく間違いないことです」
「確かに破壊神ライダーンの本質は文明の破壊。かつて、多くの文明や国が、神々の怒りに触れてライダーンの軍勢によって滅ぼされてきました」
「そんな神が造った人類が攻めてくるなんて、考えただけでヤバすぎるじゃない」
「だぞ!! 間違いなく人類の危機なんだぞ!!」
「しかも彼らは、私たちなんかより遙かに優れた生命体なんですよね――勝てるんですか、そんな戦いに」
不安が男騎士パーティに蔓延する。
戦う前から気分で負けていては仕方がない。いけないと男騎士が空気を切り替えようとするが、この空気を覆す要素が何も見つからない。
どうしたらいいのか。
ここまでも、様々な危機を乗り越えてきた男騎士達だが、都市まるごとその全てを相手にして戦うことができるのだろうか。
そんな不安に、思わずリーダーの男騎士まで飲み込まれそうになっていた。
安心してくださいと声をかけたのはマザーコンピューターだ。
「まだ、時間はあります。ライダーンが治めているがんばれロ○コン村も、この都市との戦いにより装備が万全とは言いがたい状態です。また、彼らは自分たちを改造するために、資源と設備を必要とします」
「……なるほど、放っておけば自立して勝手に増える我々と違って、奴らは進化するペースが限られているということか」
「はい。その隙を突けば、我々は勝利することができるはずです。なんにしても、この人類発祥の都市、熱帯密林都市ア・マゾ・ンが破壊された時が、人類の最後。ティトさん。本来の道程とは異なってきますが、我々に力を貸してくれませんか?」
頼まれごとに弱い男騎士。
すぐそこまで、この都市の崩壊が迫っていると聞かされれば、なおのこと断ることが難しい。さらにそこに人類の危機までからめられては、ほぼ詰んだも同然。
神妙なその顔つきを見れば、長い付き合いの仲間達に考えていることは伝わる。最後に、彼が最も信頼する女エルフに視線を向ける。すると、長年連れ添った彼のパートナーはしょうがないわねと苦笑いを返すのだった。
かくして、男騎士パーティの方針は決まった。
「分かった、受けようその依頼。人類発祥のこの都市を守るために、力を貸そう」
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