第944話 ど男騎士さんと禁じられたパロディ

【前回のあらすじ】


 パロ元への敬意が足りない!!


 鬼というか天狗というか、とにかく初手で殴られる暴挙。

 雑なパロディをかまして女エルフにたしなめられた男騎士たち。


 そんな風に怒っても、悪いのは彼らではない。

 いくら長年に渡って書き続けてきていてキャラ立ちしているにしてもこんな展開にはしないだろう。トチ狂ったような展開を書いた作者が全て悪かった。


 そう、悪いのはキャラクターたちではない。

 彼らはただ、もはや立ちきって作者にもコントロールできなくなった、そのキャラクター性によって暴れているだけなのだ。キャラが勝手に動き回る。そんな制御不能の状況に持ち込んでしまった、作者の筆力のなさが全ての諸悪の根源だった。


 すまない、本当にすまない。(定型句)


 そして、悪くないから女エルフや邪神の注意を男騎士も聞きやしない。


 もはや止まれぬ暴走特急と化した男騎士とその仲間達。

 はたしてパロ元に敬意のないパロディを続けて、どれだけの悲しみを生み出すというのか。どれだけの怨嗟を生み出すというのか。


 おそろしいかな男騎士。

 いや、鬼の呪い――。


 これからはじまる怒濤の展開。これは作者のせいではなく、作者の身体を借りて好き勝手するキャラたちの所為なのでどうかあしからず。


「卑怯すぎる逃げ口上!!」


◇ ◇ ◇ ◇


「じゃぁ、なんですか? 持ちネタの鬼○パロもダメですか? ○惨もしちゃダメですか? せっかく○○座の台詞も練習してきたのに、ダメなんですか?」


「ダメに決まってるだろうがよ。そんな○二つ使って隠しても、キャラクターが一意に特定できる知名度のある漫画。前にやった時は、まだ評価が定まってないからギリギリなんとかなったかもしれないが、もはや時代を象徴するヒット作品ぞ」


「……お前も鬼にならないか? モーラさん?」


「だからやるな!!」


「いいじゃんモーラちゃんよぉ!! 俺さまも能力によって刀身の色が変わる剣になれるもんならなりたいぜ!!」


「なりたくてもなるなそんなもん!!」


 あらすじの流れでなんとなく察したと思うが、既に生殺与奪の権は男騎士達に握りこまれていた。


 この小説が生きるも死ぬも、もはや男騎士と女エルフの掌中だった。


 かくしてこの話の最後の良心、女エルフが止めたことにより、雑な鬼パロディの流れは握り込まれようとしていた。鬼がテーマの作品、意外と数があるのだけれど、それらを雑に敵に回す展開だけは回避されようとしていた。


 別に鬼太郎だからって鬼という訳ではないのだが、そこはご愛敬である。

 そして、クライマックスバトル突入だというのに、またしてもぐだぐだトーク回なのもお察しくださいである。このまま放っておくと男騎士のことである、取り返しのつかない暴挙に及びそうなのは女エルフにも想像できた。


 というか、既に暴挙に及んだ後であった。

 そして、今もまた暴挙に及ぼうとしていた。


「じゃあ太鼓叩いて変身する鬼は?」


「ダメです」


「今流行の明智一族の末裔というのは?」


「ダメです」


「宇宙から旦那様を求めてやって来た」


「アカン」


「食用」


「ジャ○プから離れろ。もっとアカンわ」


「仮面を被って進化するアステカの」


「だから○ャンプから離れろURRYYYYY!!」


「鬼畜陰険な獄卒」


「それもアカン!! 女の子に人気ある奴はほんとヤバいから!!」


「恐竜帝国を打倒して次の敵になった」


「男臭いのもアカン!! 特にそれは世の男性の半分が応援しているコンテンツ!! もう片方は機械○と戦う奴!!」


「ならいったいなんやったら許してくれるねんやモーラはん!!」


「そうだよ、お姉ちゃんてば厳しすぎだよ!! それじゃパロディなんにもできないよ!! ねぇ、エロブレ!!」


「変化球で鬼じゃない奴ぶっ込んでくるな!! 飛田腱鞘炎先生に謝れ!!」


 濃いタッチなのに絶妙なデフォルメ顔になって抗議する男騎士と魔剣。

 そのまま放っておくと、魔剣が二足歩行してしまいには紅ショウガみたいな刀身になりそうだったので女エルフはあわてて止めた。


 まだ赤く色が変わるなら赫刀の方がよかった。

 なんでもあり便利ソードになられて引っかき回されるよりは、よっぽどそちらの方が精神的に楽だった。


 というか鬼じゃない。まったく鬼関係ない。

 むしろ魔剣がらみ。魔剣というか邪剣がらみ。邪な剣であることは間違いないけれども、カテゴリが違う。なんで出した邪○さん。


 とにもかくにも男騎士たちのパロディ熱が止らない。

 止められれば余計にやりたくなるのが人の性とでも言うべきだろうか。やけに男騎士達は女エルフに食い下がってくるのだった。


 女エルフの口から魂のごとくため息が抜ける。


「せっかく赫青鬼の力を借りて能力を安定化させたのに、どうしてそういう使い方しかできないのよ!! ぐだぐだのパロをやるために力を借りた訳じゃないでしょ!! もうちょっと真面目にやりなさいよ!!」


「真面目にやろうとしているのに、モーラさんがいちゃもんをつけてくるんじゃないか!! 俺たちは最初から大真面目だ!!」


「そうだそうだ!! 最初から俺たちは真面目にパロディしようとしているんだ!! なのにモーラちゃんがなんやかんやいちゃもん付けてくるんじゃないか!! 自由にやらせろ!! そもそも、赫青鬼からしてパロディじゃないか!!」


「……いや、誰も気づいてないからそういうの言わなくても」


「ゼクスタントとユリィ姉さんが出てきたら、その関係性からバレバレだろ!! どうするんだよ!! 作者つい最近まで、元ネタ履修してなかったんだろ!! 映画の方だけ見て、なんとなく書いてたってそれの方が許せるかよ!!」


「そうだ!! パロ元に敬意をって真面目な顔して言うなら、そもそも原作をちゃんと読むべきだ!!」


 なんで非難の先が作者にくるのか。

 読者どころかキャラクターにまでも咎められる作者。


 ここ一ヶ月ほど、ちょっと他の原稿やっていて、書き方を忘れてしまったばっかりにあんまりである。ついでに言うと、クライマックス展開という一番難しい所で抜けてしまった為に、ストーリー展開につまりにつまっているのにあんまりである。


 お前ら今すぐ不思議な光線で焼き尽くして、どエルフさんの次回作にご期待くださいオチにしてやってもいいんだぞ。


 まったく。


「いや、楽屋ネタはあらすじだけにとどめておけよ!! 本当においこまれているんだなおい!!」


 体調不良(不眠)と合わさって、もうなんというか何も出てきません。

 許してください。


 お願いだから、いい加減君たち言うことを聞いて。


 作者としてもこの収集不能の状況に困ってはいるが、それで止めるなら男騎士も魔剣も、そもそもパロディなんてし始めない。


 とにかく、出口の見えない糾弾地獄。もはやこれ、どうやって最終決戦のノリに戻すのかというグダグダっぷり。なんとかしてくれと誰もが頭を抱えたそのとき――。


「うろたえるな小僧ども!!!」


 この○チンポス編に最も似合うパロディの台詞を繰り出して、ようやく邪神がこの場をシリアスに巻き戻す攻撃を繰り出したのだった。

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