第863話 ど法王さんとスイーパー
【前回のあらすじ】
聖女を僭称する女の性根を叩き直すため、あるいは、彼女が本当に聖女であるならば、自分を倒すことができるだろうと、法王は魔法少女勝負に名乗りを上げた。
これは女と女の意地をかけた戦い。
そして、中央大陸全土、世界最大の宗教勢力である、教会の威信をかけた戦いであった。
はたして、そんな戦いを前にして、彼女が選んだ魔法少女コスチュームは――。
「ひゅーほほほほほほ!!」
全身を赤い謎素材スーツで身に包むという強烈なインパクトのあるものだった。
その姿に、一同が驚愕すると共に。
「虚乳スイーパー!! 見参!!」
「「虚乳はアンタだ!!」なんだぞ!!」
ぼよよんぼよよんと、彼女の身体にはなかった二つの山が揺れる。
いったい何を詰めたのか、スーツ姿になると共に巨乳になった法王。
はたして、彼女の真意はいかに。
そして、明言こそされていなかったけれども、赤い謎プラグスーツにツインテという、ご本家パロディのパロディとはこれいかに。
「……エヴァン○リオンVS○乳ハンターなんて、分かる人いないでしょ」
みんな、図○先生の漫画を読もうぜ!!
◇ ◇ ◇ ◇
虚乳スイーパーとは。
魔法少女に変身後、突如として名乗ったその不穏な単語に、ワンコ教授と新女王が戦慄する。
相対する聖女もまた、何を言っているんだこいつはと、すっかりギャグ顔。
昭和の漫画のような変顔をここぞという場面のリアクションでかますこの作品。だがしかし、今この瞬間、彼らがしている表情は――昭和なのだけれども、いかんとも判別がつかない、なんだったっけかなこれみたいなものになっていた。
見たことがある。
けれども、なんかいまいち作品名が分からない。
ジャン○漫画のようなくどさがなく、かといってマガジ○漫画のような荒々しさもない。強いて言うならサン○ー漫画だが、こんなとぼけた表情あっただろうか。
とまぁ、強いて言うならそんな感じ。
ぞっとするようなギャグ顔を、
敵味方からも存分に視線を集めて法王は、またしても特徴的な高笑いを上げるとともに、後ろ飛でリングの四方にあるポールの上に飛び乗ったのだった。
「見たか!! これこそが、世の貧乳女子の味方にして、巨乳を憎むジェラシーが産んだ救世主!! 巨乳という女性の欺瞞を暴いて回る天からの使者!! 私こそが、虚乳スイーパー!! 乳なんて、ただの飾りですことよ!!」
「な、なんですって!!」
「言っている意味はさっぱりと分からないけれど、とにかく凄い自信なのは分かるんだぞ。そして、とても説得力のあるセリフなんだぞ」
「あ、ケティさんもやっぱり気にしてらしたんですね」
持つ者はいつもそうやって無自覚に持たざる者の地雷を踏み抜く。
瞳孔を開いて、ガンギマリの目を新女王へと向けるワンコ教授。彼女もまた、
まぁ、そんなやりとりはともかくとして。
ここに魔法少女勝負、二人の役者がリングに揃った。
「ふざけた格好をしてくれてまぁ。けれども、そんな露出の低い魔法少女スーツでは、攻撃力もお察しというもの。飛んでも跳ねても色気の出ない、どころか、昨今の需要から外れた格好。古臭い貴方のような貧乳にはお似合いかもしれませんね」
「ふっ、減らず口とおっぱいはそこまでにしておくことね、この偽聖女!! 貴様の正体も、そして、おっぱいも、丸っと白日の下にさらしてくれるわ!!」
「いや、おっぱいはさらしちゃダメなんだぞ!!」
「ちょっと落ち着いてくださいリーケットさん!! お気を確かに!!」
心配する仲間達をよそに、紅葉に染まる森の中にあるリングに鐘が鳴り響く。
魔法少女バトル開始を告げるその音と共に、飛び出したのは改造巫女服――自称聖女。ジャンヌ・ダルクを語る怪しい女は、どこから取り出したか大幣を振るうと、魔法ステッキよろしくそれを構えた。
風が山の嵐とばかりに吹き抜ける。紅葉を巻き上げて吹いたそれは、聖女が持つ大幣を揺らして吹きすさぶと、その白い御幣を揺らして旋風の剣となった。
その風の刃をかざして聖女は笑う。
「私の身に宿りしは、シマバーラの地を護りし神風!! 神通力、東の島国の民を何度も救った烈風をその身に受けてみるがいい!! 喰らえ、疾風迅雷!!」
大幣から巻き起こった風の矢。
幾条もの鋭きそれが
ポールの上という逃げ場のない場所に立っていたのが運の尽きか。
迫り来るそれに、
そして、そんな彼女の行動が分かっているように、天を見上げて大幣を握りしめる聖女。この状況を狙ったとばかりに、彼女は風が渦巻く棒を後ろに引くと、そのまま切り上げるように振り上げた。
「喰らえ!! これが我が必殺の――山嵐鉄槌だっ!!」
沸き立つ風の刃。
護国の神風、その神威と荒魂を束ねて狂い風の一撃にすると、聖女は落下してくる法王に向かって解き放った。強烈な、全てを巻き上げて遠く彼方に吹き飛ばすようなその一撃を前にして、ワンコ教授達が息を呑む。
「避けるんだぞ!! リーケット!!」
「あぁ、リーケットさま!! ダメです、まともに喰らってはいけません!!」
しかし、そんな彼女たちの悲痛な叫び声は。
「甘い!! ならばこちらも秘奥を使おう――眼鏡ビガーン!!」
バイザー・サングラスから照射された、赤黒い謎閃光によって相殺された。
それはもう、おそろしい破壊力であった。
もう、マーベ○真っ青の、破壊のエネルギーであった。
そして――。
「「世界観が違い過ぎる!!」」
魔法少女というにはあまりにも、アメリカンでハリウッドな大技だった。
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