第837話 ど女エルフさんと装備強化
【前回のあらすじ】
白羊宮を司る○金闘士。
それはまさかの白銀の髪をした美エルフであった。
しかも、なんという偶然――。
「私はかつて、西の森に住まうエルフ達を守護していた族長。クイーンエルフとして代々あの森を守ってきた三代目、純白の賢者アリエル」
「……もしかして、おばあさま?」
出てきたのはまさかの女エルフさんの身内。
かたや獅子宮でも男騎士の身内が煉獄○立ちをしているというのに、さらに身内が彼らを攻めてくるのであった。
はたして、予想だにしない展開を迎えた試練。
この先、男騎士達はどうなってしまうのか――。
「はーい、おばぁちゃまですよー。モーラちゃぁーん」
「おばあさま、苦しい、苦しいです!! 胸の圧が!!」
「モーラさんのおばあさん!! 俺も貴方の孫のようなものです!! よしよししてください!!」
「アホか!!」
物語の混迷はさらに加速していく――。
◇ ◇ ◇ ◇
「なるほどなるほどー、大切なお友達を助けるのと、神に挑むためにここにやってきたのねー。ふーん、なるほどぉ。モーラちゃんてば元気なのねぇ」
「いや、元気なのね、というか、なんというか」
「いいのよぉ、エルフの女の子はちょっとくらいお転婆なほうが愛嬌があって旦那さんが見つかりやすいんだから。かくいう私も、おじいちゃんとは色々あってね」
「えっ、えっ、なにそれ!! 聞きたい聞きたい!!」
完全にお婆ちゃんと孫娘のノリになっている。
男騎士は、真っ黒焦げにボンバヘッドされた状態で、目の前のパートナーと、パートナーのお婆さんを眺めながら思った。
完全に、優しいおばあちゃんと、そんなおばあちゃんにぞっこんの孫だ、と。
俺たちは試練を受けに来ているのではないのか。
なんでこんなほのぼの系のやりとりをしているのか。
そもそも、親族だと分かったくらいで、試練を途中で放り出していいのか。
割とここまで待ったのは、真剣に試練をする用意が自分たちにも会ったからではないのか。そんな複雑な思いが、男騎士の頭の中を駆け巡る。
しかしながら。
「そうよぉ、お爺ちゃんはね、それはもう、おっぱいが好きでおっぱいが好きで」
「……へぇ」
「僕もおっぱい大好きです!! アリエルおばあちゃん!!」
「おめーは黙ってろこのボイン戦士!!」
またしても火炎魔法が炸裂する。
その衝撃で、全盛期の肉体のおばあちゃまのたわわがぷるるんする。
もはや男騎士に爆炎など問題ではない。
今一時、女エルフの祖母の美しい姿を、目に焼き付けんと目を見開いた。
そう、彼は目を見開いたまま業火に焼かれた。
当然のように目を痛めて、メガーメガーと叫ぶことになった。
あまりにも見事すぎる、おっぱい戦士としての生き様であった。
そんな間抜けを余所に、女エルフとその祖母は話を進める。
女三人寄ればというが二人でも充分かしましかった。
とはいえ――。
「けどモーラちゃん。大切な試練の途中なんでしょう。ここでお婆ちゃんとお話していても大丈夫なの?」
「あ、大丈夫大丈夫。上の階に仲間を残してきているし、ちょっとくらいおばあさまと話してても、あいつらがきっとなんとかしてくれるから」
「でもぉ。悪いわぁ、待たせてしまったのに、こんなことになってしまって」
彼女たちは怪奇メフィス塔を攻略中の身である。
ぶっちゃけ、こんな所で油を売っていていいような状況ではない。
時は一刻を争う状況――だというのに、この言い様である。
結果的に、一番○金闘士の中で、男騎士達を足止めしているのは、女エルフの祖母である。
トイレ中から、逆走、この雑談も含めて、一番男騎士達を足止めしているのは、この目の前の人畜無害としか言い様がない好々爺ならぬおばあちゃまであった。
おそるべし、第一の刺客。
普通、一番最初に出てくる敵というのはかませ犬、あるいは主人公達の協力者ポジだというのに、この見事な足止めっぷりである。
最初から攻めてきたなと――男騎士の腰の魔剣は密かに思った。
思ったが、目の前の○金闘士の大事な娘さんを、いろいろと振り回した事もあり、彼は黙った。珍しく黙った。余計なことは言わんとこと黙り通した。
その時である。
唐突に、怪奇メフィス塔に鐘の音が鳴り響く。
「あらぁ、もうかれこれ三刻くらい経っちゃったわね」
「……え? そんなに?」
「楽しい時間はあっという間ね。あ、ごめんなさいね、モーラちゃん。おばあちゃんが、引き留めちゃったからこんなことになっちゃって」
「いやいや、そんなことは」
「そうですよお婆さま。そんな心配しないでください。なぁに、これくらいのタイムロス、どうということはない。これからいくらでも挽回してみせますよ」
とはいえ、それでは気が済まないという顔をする女エルフの祖母。
そうだわと彼女は手を叩くと――。
「それじゃぁ、せっかくだから、貴方たちの装備を強化してあげましょう。うん、それくらいのことをしても、きっとゲルシー様はお怒りにならないわ」
「……装備の強化?」
「へぇ、そんなことができるんですか?」
「エルフ族に伝わる秘術でね、精霊の力を装備に宿らせることができるのよ」
なるほど、それは便利そう。
女エルフと男騎士、二人は何の躊躇もなく、女エルフの祖母の提案に頷いた。
是非お願いします、と。
そう。
その秘術というのが、とんでもないもの――おそるべき方法で行われるものだとは露も知らずに。
「お願いしますね、おばあさま」
「お願いします、おばあちゃま」
「はいはい、任されましたよぉー。それじゃぁ、二人の装備を貸してねぇー」
差し出された、男騎士たちの装備たち。
その一つ、魔剣エロスを握りしめたかと思うと、女エルフの祖母――。
「それじゃお婆ちゃん、またちょっとトイレの中に入ってくるわね」
「「え?」」
「秘術だからね、のぞいちゃだめよぉー?」
それを握りしめて、トイレの中へと入って言ったのだった。
数秒後。
野太い、魔剣の声が、突然トイレから響く。
はたして、魔剣の身にいったい何が――!!
「やだぁ、何この剣!! いきなり喋ったわぁ!!」
「やだじゃねえよ、何するんだよババア!! なに考えてやがるんだ!!」
待て、次週!!(珍しい感じのヒキ)
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