第789話 おヘルス仮面さんと悪魔神の試練

【前回のあらすじ】


 久しぶりの仲間との再会。

 地獄の底から帰ってきた女修道士シスター

 彼女を囲んでまずはいつものように、ツッコミを入れて盛り上がる女エルフたち。しかしながら、彼女はただ戻ってきた訳ではなかった。


 霞む女修道士シスターの身体。

 その突然の変異に、男騎士たちが絶句する。

 そこで冷静に声を発したのは、誰よりも彼女のことを案じる、実の妹――法王ポープ


「説明も何も。姉さまの身体は、教会で保管しているのですよ。どうしたら、こんな東の海の果てに、一瞬で現れることができるというのです」


「ここにいる私は幻。とある神の力を借りて、一時的に顕現しただけの、影法師に過ぎないということです」


 地獄の底に住まう悪魔の神の力を借りて、一時的にはせ参じた女修道士シスター

 その代償は神への隷属。二度と蘇生がかなわぬという、過酷なものだった。


 なぜ仲間のためにそこまで命を削るのか。

 女修道士の献身に、怒る女エルフたち。

 どうするのよと女エルフが涙したその時――。


「あ、けど、大丈夫です。そこは私もちゃんと復活できるように交渉しましたから」


「交渉、したんかい!!」


 綺麗なボケとノリツッコミがスパーンと決まったのだった。


◇ ◇ ◇ ◇


「悪魔神ナッガイは意外とフレンドリーで話の分かる神様でした。私の事情を察するや、二つ返事で皆さんへの助勢を許し、神に抗うだけの力と、頭と局部を隠すアイテムをくれました」


「もらったアイテム的に、絶対に話の合わない神様の気がするんだけれど気のせいかしら?」


 必要最低限の装備かつさりげないセクハラ。

 ろくでなしの匂いしかしないと白目を剥く女エルフ。

 対して、女修道士シスターはなんだかまんざらでもない表情であった。


 この辺りは、もう、感性の差としか言いようがない。

 そして、服装については無頓着な男騎士にもワンコ教授にも、それは判別のつかない話であった。


 それはそれとしてと話を続ける女修道士。


「しかし力を貸すならその代価はいただくそうで。具体的には――『冥府神ゲルシーと自分の待つ冥府島の神殿の最下層まで、十二の試練を用意した。十二の〇金闘士を倒して見事我が元までたどり着いてみせよ』とのことです。たいへんたいへん」


「〇金闘士ってなによ!! もー、また勝手な約束して!!」


「大丈夫、モーラさんたちなら十二の試練に打ち勝って、無事に私の元までたどり着いてくれると、私は信じていますから。巨大なコスモ力、略してコスる力を持っている〇金闘士を倒して、無事に助けに来てくれと信じていますから」


「〇金闘士がいっきにきな臭くなった!!」


 それを言うならイカではないのか。

 男騎士の言葉をそれ以上いけないと女エルフが咄嗟にナイスセーブする。


 なんにしても、十二の試練は予想以上にギリシャでアテネでオリュンポス、きわどいことになりそうな予感がひしひしと伝わってくるものだった。

 FG〇的にも、聖☆矢的にも。


 徐々に消えゆく女修道士シスターの体。

 最後に、微笑んで彼女は仲間たちの姿を見る。


「皆さん、冥府の底で私は待っています。必ず、あなたたちならば、十二の試練に打ち勝って、私の下にたどり着く。そう信じていますから」


「コーネリア!!」


「コーネリア姉さま!!」


「コーネリアさん!!」


「コーネリアぁ!!」


「……最後に、私からこれだけ渡しておきます。いざというときには、この悪魔の力が宿った伝説の道具を使ってください。きっと、皆さんの内に秘めたるコスる力を解き放ってくれることでしょう」


 そう言って露と消えた女修道士シスター

 彼女がいたその場所には、四つの前張りと一つのタイツが落ちているのだった。


 これが、悪魔の力が宿った伝説の道具。


 これから男騎士たちを待ち受けるだろう、十二の試練に打ち勝つだけの、力を秘めた装身具。

 黒と肌色に輝くそれを手にして女エルフは――。


「……捨ててしまってもいいわよね?」


「だぞ!! 不法投棄はダメなんだぞモーラ!!」


「そうですよモーラさん!! 出すべきところに出せば、それなりのお値段が付く、そういう類のアイテムですよ!! それを捨てるなんてもったいない!!」


「そうだモーラさん!! ちょうどここに目利きに精通した店主が一人!!」


 まかせなとここぞとばかりに前に出る店主。

 えぇと女エルフがひるんだすきに、その手から伝説のアイテムをひったくる。


 手の中で転がし、鼻先で匂いを確認し、太陽にかざして透けてみる。

 丁寧に、嘗め回すように、そして、楽しむように一通り確認する。

 その目はまさしくプロの目。

 本物を知る男の目。


 しばらくして、彼は口を開いた――。


「言い値で買おう。これは価値のつけられないものだ」


「値段がつけられへんのかーい!!」


「エルフが着用したものならともかく、人間の着用したものだからな。ちょっと、俺はそこは専門外なので、適正な値段を設定することができねえ」


「エルフならできるんかーい!! かーい!! かーい!!」


 真顔でしょーもないことを言うのだった。


 かくして、女修道士シスターは再び冥府へと帰った。

 仲間の到着を信じて。


 冥府島ラ・バウルの最下層。

 地獄の果てに。


「……はぁ、感動の再会と別れなのに、締まらないこと」


「まぁ、モーラさんが相手だからな」


「……どういう意味かな、ティトの字?」


 果たしてどエルフさん第七部。

 ここに、東の海の果て、冥府島へと向かう冒険は、一旦の幕を下ろすことになるのだ――。


「ちょっと待つでゲソ!! いろいろと張り巡らせていた伏線が、消化不良になってるんじゃなイカ!!」


 という所で、予想外の人物が、ここに乱入してくるのであった。


 つづく!!

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