第767話 ど女エルフさんとシチュエーションウワキツ

【前回のあらすじ】


 女エルフ必勝の型!!

 セーラー服の下にブルマを仕込むのは、ラブコメ格闘キャラの秘奥!!


 スカートを脱いでよし、着ていてもよし!!

 チラリズムによる破壊力は、アンスコ、パンツよりも強烈!!

 そう、下手に下着が見えるより、マニアックなアイテムが見える方が、男というのは興奮するものなのだ!!


 そして、もはやそのオーパーツを装備できるのは、昭の和に産まれた者だけ。


「見たか、これが私の本気――!! 本気のブルマとセーラー服姿よ!!」


 なんのいかがわしいお店か。


 冷静なように見えて、やっぱりちょっとどうかしているぞどエルフさん。

 いつかぶりのはっちゃけぶりを炸裂させてテイスティングに挑む。


 はたして、彼女の攻撃やいかに――。


◇ ◇ ◇ ◇


「いやーん!! 遅刻遅刻ぅ!!」


 !?

 

 思わずそんな疑問符が飛び出す謎展開。

 別にここは、男と女がぶつかり合う朝の辻でもなんでもなければ、結婚相談所よりも出会うことができる交差点でもない。


 だというのに、女エルフ、食パンを咥えて走る素振りをしてみせる。


 これはいったいどういうことか。

 衝撃の走る中、なるほどそういうことかと、女エルフの生態研究については一日の長がある男騎士、額の汗を拭って口の端を釣り上げた。

 分かるのかティトと風の精霊王が尋ねる。


「おそらくモーラさんは、自分の普段の素振りでは、あのセックスモンスターであるアシガラにかなわないと考えたのだろう」


「まぁ、どんな女もあれだけはっちゃけている奴を相手にしたら、敵わんわな」


「だからこそ、そのハンデを覆すべく、彼女は自分の得意なフィールドで勝負することにしたんだ!!」


「得意なフィールド!!」


 そう、女エルフの得意なフィールド。


 それは――。


「少女漫画的な世界観!! 古今東西、ありとあらゆる少女漫画絵巻を見て来たモーラさんにはできるのだ!! ウワキツ仕草、それを上回ることができる、強烈なシチュエーションと妄想が、彼女にはできるのだ!!」


「シチュエーションと妄想じゃと!!」


 その言葉に、風の精霊王にもピンと来る物があった。


 かくいう精霊王。

 彼もまた、かつて女エルフと男騎士に、ラブコメしないと出られない部屋という試練を与えて、そのシチュエーション能力を試したことがある男だ。


 その時のことを思い返せば、自ずと答えは導かれる。


「確かに、モーラちゃんのシチュエーションの設定能力は、三百歳を過ぎたアラスリエルフとしては、目を見張るウワキツさがあった。普通、そんな少女漫画みたいな世界設定に憧れますぅ、という、ちょっと年齢が見えていない感があった」


「だろう、カイゲン」


「モーラちゃんはまだ、あの年齢だというのに、心は乙女なのじゃな。じゃからこそ、セーラ服だって着れるし、ブルマだってスカートの中に仕込める」


 その通りだとばかりに首肯する男騎士。


 長年、女エルフと冒険を共にしてきた彼には、もはやすべて、説明されるまでもなく、彼女がこれからやろうとしていることが丸わかりであった。

 むしろ、久々に彼女の本気が見ることができると、興奮気味であった。


 男騎士。

 なんだかんだで女エルフの趣味には一目を置いているのだ。


 一方でカイゲン。女エルフが思わず見せたその業の深い趣味に唸りながらも、しかしながらありかもしれんと腕を組む。


 はたして、パンのテイスティングに、シチュエーションの与える影響たるやいかほどか。彼女のこの服装、そして行動が、どれほどのウワキツをはじき出すのか。

 未知数の展開を前にして、男騎士たちが静かに息を呑んだその時。


「ドシーン!! いったーい!! もうっ、どこ見て歩いてるのよ!!」


 女エルフ、寸劇を始める。


 しかもこてんと倒れてMの字に脚を開いてだ。

 流石にこれには男騎士も、彼と一緒に部屋の様子を見ていた風の精霊王も。


「「ちょっと待て!!」」


 ちょっと待てボタンを押してツッコまずにはいられないのであった。


「ドシーンて!! おい、ドシーンて自分でいうたぞモーラちゃん!!」


「効果音はええんじゃ!! モーラさん!! 効果音まで口で言わんでええんじゃ!! そこまで気合入れて、ウワキツやらんくてもええんじゃ!!」


「型から入るのう。はぁー、これはウワキツですわ。有効一点ですわ、開始早々」


「やはりモーラさん。年中妄想して、乙女力を高めているだけはあるのう。炸裂じゃのう乙女力。やってくれるのう、ラブコメシチュエーション」


 ぶっちぎりのほめちぎり。

 一回戦の面目躍如か、いきなり炸裂させた、シチュエーションウワキツは、見事に風の精霊王の、なかなかにニッチな性癖を穿ったのだった。


 もちろん、彼女の公私のパートナーである男騎士までもろともに。


 はたして、今回も赤バニからくり娘の独壇場かと思われた、ウワキツ格付けチェック。


「おもしろいことになってきよったで」


「しかもモーラさんもしっかりとカメラワークを把握してましたからね。くっきりと、ブルマを見せつけてきてますよ」


「ホンマじゃ、一カメに向かってばっちりブルマを見せつけて来とる」


「でしょ」


 赤バニからくり娘のカメラ芸をどこから盗んだのか。

 あるいは、彼女のウワキツが、その存在を気づかせたのか。

 なんにしても、一回戦の時とは気合が違う。


 より見栄え――周りにウワキツく見えるかを意識した女エルフに、もはや死角はなし。


「こりゃ、こっから先どう転がすか楽しみな所じゃのう」


「きっと期待は裏切りませんよ。モーラさん、やればできる女ですから。やればできる乙女ですから」


 いやがおうにも、彼女のこれからのウワキツ劇場への期待は高まるのだった。

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