どエルフさん ~仲間殺しの罪を背負って騎士団を辞めた元騎士、奴隷狩りに襲われていたエロい女エルフを助ける。エッチなエルフたちとはじめるきままなハーレム冒険者生活。~
第740話 ど維新志士さんたちと因縁の時
第740話 ど維新志士さんたちと因縁の時
【前回のあらすじ】
大性郷は大性郷であって大性郷ではない。
彼の遺志を受け継いだ、寄生獣ニシーが造りだしたコピー体であった。
と、驚く男騎士たちとは売って変わって。
場面はからくり娘たちの陣営。
なんとかモッリ水軍と大性郷を倒すという偉業を成し遂げた彼女たちだったけれども、それはそれ。彼女たちが受けた被害も甚大である。
こうなっては第五レースを戦い抜けるかどうかも怪しい。
すぐさま
それこそは、一致団結したGTR参加船団の中で、唯一協力を拒んだ船団。
「
そして暗黒大陸からの刺客。
道化のジェレミーであった。
◇ ◇ ◇ ◇
勝。
男騎士を襲った水着の刺客。
小清水次郎長一家。
そして謎の大陸商人Xたちは、勝に与えられた宿舎に集まっていた。
囲むのは、またしても大性郷が好んで飲んでいた酒。
それを白磁のお猪口に注いで回ると、彼らはそれをまずは担いで、同じ時代を生きた英雄の死を悼んだ。
各々、一口にそれを飲み干す。
熱くって敵わねえやと、包帯を解いたのは謎の大陸商人Xだ。
いままで、ひた隠しに隠してきたその顔が露になる。
しかしながら、もはやその言葉遣いや雰囲気で、親しき者たちにはわかっていたのだろう。誰もその姿を目にして驚く者は居ない。
はたして覆面の下から現れたのは――男騎士たちがよく知る男。
大陸商人こといきつけの道具屋の店主であった。
しかしながら顔つきがいささかいつもよりも真剣だ。
そんな彼は、飲み干したお猪口を床に置くと、胡坐をかいた自分の膝をぱんと叩いて一同を睨みつけた。
その視線の鋭さに、勝を除いた皆が息を呑む。
「さて、こうなっちまったことをどうのこうのと言う気はねえ。俺は俺の都合で東の島国の政変から手を引いた男だ。俺のような男が、いつまでも新しい時代の夜明けに携わっているもんじゃねえと、そう思ったからこそ適当な所で手を引いた」
「……まぁ、そうだろうな」
「アンタがいてくれたらきっと東の島国はもっとましなことになっていただろう」
「しかし、まぁ、ワシらは既にこの世界の理から外れたもんじゃきのう。勝先生。良馬のこっちゃ許しちゃってくれ。ワシらは本来、この世界の命運に深くかかわることは許されとらんちぃ。なんせ、仕える神が神じゃけぇ」
やれやれと深いため息を吐きだしたのは勝。
この好々爺は、いつの間にやら目の前へと移動し、店主の隣に回り込んだ水着の刺客の言葉に青色のため息を吐きだす。
どういう次第か分からぬ感じの次郎長たちに、お猪口を差し出して酒を注がせると、すぐに彼はそれを呷って熱い息を吐いた。
じろり睨んだ目は、年下のそれへと向けるモノではない。
自分より強い存在に向ける、とげとげしさが潜んでいた。
「ミッテル九傑が第三席と第九席に言われちまったら仕方ねえ。しかし、お前さんら、本当に難儀な存在だな」
「そういう風に宿命づけられているからな。席に列したその時から――定命の者ではなくなったその時から、俺たちはこの世界のメーンプレイヤーではなくなった」
「英雄の介添え人。伝説の見届け人。俺たちは、その時代を生きる強き者たちのためにその力を振るい、時に助け、導くことこそその存在目的としている」
「名を変え、来歴を変えか。よくやるねぇ、本当に、びっくりだよ」
水着の刺客はともかく、店主についてはおおよそ想像ができていただろう。
このとぼけたエルフ好き。中央連邦大陸の真中にある冒険者の街で、しがない道具屋の店主をしている男こそ、ミッテルが選んだ九英傑の一人である。
第三席、変態店主『ロー・シュンギー』だ。
そして、彼の付き人として振舞い、暗器の扱いに長けた伝説の忍者。
大九席、影〇忍者『コウガァ』こそ、水着刺客の正体であった。
彼らはそのミッテルから背負わされた役目に従って、かつて東の島国の騒乱へとそれとなく介入した。
各々名前を変えて――。
店主は坂本良馬。
水着の刺客は岡田射蔵。
旧政府を打倒して、新たな秩序を東の島国にもたらさんとする者たちの間にまぎれた彼らは、一人は恐ろしい人脈を持つ新進気鋭の商人として。そして、もう一人は、暗殺の技で要人を仕留める、伝説の人斬りとして戦乱を駆け抜けたのだ。
そしてその役目に忠実に果たし、二人は人知れずその姿を消した。
「良馬は
「影武者というより、そういう魔法さね。俺たちは、そういう風に時代の表舞台から退場する魔法を習得している」
「そういうことじゃきぃ。まぁ、いささか今回は良馬がちと先走った感はあったきのう。どうしたもんかと焦ったとじゃ。逝田屋の事件ちは、あぁでもせんと穏便に身を引くことができかんったじゃ」
「そして、その強引な幕引きが、今の東の島国の目も当てられない惨状ってのは、なんとも皮肉なこったねぇ」
多くの英雄たちが、東の島国の政変のために立った。
大性郷はもちろん、高杉珍作や、鬼藤象二郎などなど、時代の寵児たちがあの頃は巷に溢れていた。
彼らをたきつけ、導き、大きな戦へと仕向けたのは、間違いなくこの二人だった。けれどもそれは、結果として彼らを早世させる結果となった。
最後に残った大性郷、彼さえもまた性難戦争に倒れた時、再び『コウガァ』はその姿を現し、旧時代の英雄である勝にコンタクトをとった。
そして『ロー・シュンギ―』こと店主は、中央大陸に逃れた先でそれを知り、そして、彼が次に支えるべき英雄が、かの地に向かうと知ってその運命に震えた。
再び、東の島国に舞い戻ったのはそれが理由。
そして、ここまで顔を隠してきたのも。
「東の島国の動乱はまだ終わっちゃいねえ。これをしっかり終わらせるために、もう一度、俺は英雄の介添え人として、表舞台に上がらなくちゃならねえ」
「そういうことじゃぁ」
「協力してくれるか勝さん。アンタは、確かに俺が一度は英雄と見込んだけの人だ。この政変の決着に、欠いてはならない人だと俺も思っている」
そう言って真剣な視線を向ける店主。
彼に、またはぐらかすようなため息を勝はかける。
参ったねこりゃと後ろ襟を掻いて、かつて、英雄として見出された老兵は、なんとも言えない苦笑いを零した。
英雄と見込まれて、そして、捨てられた。
彼が組織した海援隊に、かつて店主はその身を置き、そしてその行いを助けた。しかしながら、時代の流れを読んだ店主は、新たな神輿として現行政府を選んだ。
もし彼が最後まで自分たちと運命を共にしてくれていたならば。
自分たち旧政府が瓦解くすることはなかっただろう。少なくとも、かつての仲間たちの世話をするなどという、煩わしい事態にはならなかったはずだ。
裏切っておいて今さら手をかせなどとおこがましい。
余人ならば憤る所だが、そこは大性郷も胆を飲み込む大人物。
勝はまた、酒と一緒にその言葉を飲み込むと、はぁと熱い吐息を吐いた。
その目。
少しもまどろんではいない。
老人の皺深い瞼はきりりと見開かれて、稲光のように光る双眸が、目の前の神の使途を見つめていた。
「……海援隊再結成と行こうか。ここが最後の御奉公って奴よ」
「勝さん」
「そうこなくっちゃのう!! 流石の先生ぜよ!!」
「やるのか勝の兄貴!!」
あぁと頷く勝海舟。
彼は恩讐を今はいったん忘れ、この国のために再び奉公するべく、その老骨に鞭を打つ覚悟を決めた。
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