どエルフさん ~仲間殺しの罪を背負って騎士団を辞めた元騎士、奴隷狩りに襲われていたエロい女エルフを助ける。エッチなエルフたちとはじめるきままなハーレム冒険者生活。~
第583話 ど女エルフさんと甘いぞモーラ
第583話 ど女エルフさんと甘いぞモーラ
【前回のあらすじ】
女エルフのピンチに瀕して、颯爽と現れたマントの虎男。
その姿、まるで拳法の達人のよう。
流れるような体捌きで、襲い来るⅥ号戦隊ティーガーちゃんたちをいなすと、彼は戦略的撤退を女エルフたちに告げた。
腰に結わえた剣。
背格好。
なにより声。
あきらかに見た目は男騎士に間違いない。
しかしながら、身体的な特徴の一致が、性格的な不一致により相殺される。
知性的なモノの言い方に思わずたじろぐ。
いったい彼は何者なのか。
もし男騎士だとして、その性格の変化はいったいなんなのか。知能指数の上昇はいったい何が原因なのか。
分からない、意味が分からない。
そんな混乱で固まる女騎士を抱えて、虎面の男は梁山パークの本拠地からさっそうと姿を消すのだった。
◇ ◇ ◇ ◇
「あらためて。俺の名は謎の正義の味方。頼りになるタイガー男。その名を、ティーガー・ジョーだ」
「……ドイツ語なのか、英語なのか」
「だぞ。何を言っているんだぞティト。そんなアホなことを言ってもバレバレなんだぞ」
「そうよ。バレバレなのよ。貴方ティトでしょ? ティトなんでしょ?」
「そうかもしれないし、そうじゃないかもしれない。とりあえず、ティーガー・ジョーということにしておいてくれないか」
「する意味が分からない!! なに言ってるの!!」
「これは男のロマンの問題なんだ、モーラさん!!」
ジューン山。
その頂上にある森の中。
広葉樹林が生い茂り、視界の悪いその一角。
そこで車座になって男騎士たちは作戦会議を開いていた。
そう、あくまでティーガー・ジョーという体で。謎のお助けヒーローという体で、作戦会議を立てていた。
何故ならば。
死んだはずの仲間キャラが、バレバレの仮面をかぶって登場するのは――。
男のロマンだからだ!!
何度でも言おう。
男のロマンだからだ!!
それは古今東西未来永劫変わることのない、男たちの憧れなのだ。
そして、この手の物語で切っても切れない設定なのだ。
「いや、気持ちはよく分かるが、ふざけている場合じゃないぜティト。もう正体はバレてんだから観念しようや」
「エロス!! しかし、やはり男のロマンというものが!!」
「やっぱティトやないかーい!! なんやねんほんまもう!! インテリ系強キャラになったり、マスク被ってきたり!! 何がしたいんじゃお前は!!」
しかし、そんな男のロマンは、同じく男のロマンの塊と言っていい喋る魔剣によって粉砕された。
あっさりと、仮面の下の正体を暴露されたティーガー・ジョー。
あらため男騎士は、しょんぼりとした感じでその場に正座した。
やはり虎男の正体は男騎士に間違いはなかった。
しかしどうしてと女エルフたちの間に動揺が走る――。
「なんでそんなに頭がよくなった感じになっているのよ」
「だぞ!! 顔は間抜けな感じになっているのに!!」
「何かおかしな薬でも使ったんですか!! いけませんよ、薬物の乱用は教会でも厳しく取り締まっています!! ノーモア違法薬物!! 安価な民間の回復薬ではなく、ちゃんとした医療機関が認定した薬を使いましょう!!」
男騎士の性格の変わりようは受容しがたいものがあった。
みんなの愛されおまぬけ騎士――ティトである。
何かあれば聞き間違いを起こして騒動の発端となり、また、とんちきな返しをして周りを困らせる。リーダーなのにトラブルメーカー。
けれどもそんな所が、妙に人間っぽくて憎めない。
人間として少し欠落している。
だからこそ、そこを補ってあげたいと周りに人がよってくる。
男騎士の知能1は決して欠点ではない。むしろ、彼を彼たらしめる、プラス要素だった。
なのに――。
「今は俺の知能のことについて論じている場合ではないだろう。梁山パークの連中は、いよいよ白百合女王国奪取に向けて本格的に動き出した。しかも、彼らの手中にはローラ王女がある。このままでは本当に国を乗っ取られるぞ」
「なんでアンタがそんなことを知っているのよ!!」
「だぞ!! 途中から出て来たのに、なんでこっちの事情まで把握しているんだぞ!!」
「それはもちろん、知能が上がっているからに決まっているだろう!! もっと前向きな、未来を見据えた話をしようじゃないか!! 俺の今の状態なんて、そんなこと別に些末なことだろう!!」
「「些末じゃないわよ!!」だぞ!!」
という具合である。
まるで、物語の全貌を把握しているトリックスター。
知恵者のごとく、今自分たちが置かれている状況を落ち着いて捉えている。
とても男騎士ではない。
いや、戦闘ならばこれくらい冷静に物事を判断する彼だが、基本シティアドベンチャーでは、女エルフやワンコ教授の知恵を借りる側である。
なのに、今は率先して物事を自分主導で動かそうとしている。
その変化が受け入れられない。
いや、受け入れられないというよりも、なぜそうなったのかが分からない。
分からない上に気になる。
女エルフが悶絶する。
すぐにその視線は、その答えを知っている男戦士の愛剣へと向かった。
そう、エロスである。
「エロス。これはいったいどういうことなの? いったいティトの身に何があったっていうの?」
「いやーまー、なんと言いますか。俺様もまさかこんなことになるとは思っていなかったというか。やむを得ずといいますか」
「だぞ!! その口ぶり!! エロスが何かやったんだぞ!!」
「何をしたんですか、これは、ともすると世界的な損失ですよ!!」
「ティトを、ティトを返してよ!! 私たちの愛した、ちょっと間抜けでスケベでとんちきなおとぼけ男戦士を返してよ!! こんな、虎の仮面を被った謎の覆面お助けキャラみたいなのティトじゃないわ!!」
「甘いぞモーラよ!! 現実をうけと――へぶぁっ!!」
みぞおちに女エルフの渾身のパンチが炸裂する。
一時的に
いや、彼の腰に結わえられている剣を見て言った。
うぅむと魔剣が言い辛そうにどもる。
「いやはや本当にね、博打みたいなもんだったんだけれどね」
「博打?」
「だぞ?」
「なにをしたって言うんです」
「――いや。どうせ知性がなくなるなら、いっそ、蒸発させちまえばいいんじゃないかと。そういう軽いノリで飲ませた訳ですよ」
抜き差しならない女性陣に対して、魔剣はことの真相を話し始めた。
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