第565話 ど男騎士さんと出雲虎

【前回のあらすじ】


 偽男騎士のとりなしでレジスタンス組織梁山パークに入り込むことに成功した男騎士たち。入ってすぐ女王カミーラを救うべく第二王女と男騎士は別行動をとることにした。


 梁山パークに巧く溶け込む第二王女。

 対して、男騎士は予想もしなかった連中と出くわすことになる。


 それは顔を虎のマスクで覆ったむくつけき男たち。


 しかし――。


「すごーい!!」


「しゃべったぁあああああ!!」


 なんだか全肯定感が半端ない喋り方を彼らはしてくるのだった。


 そう、何を隠そう彼らこそ、梁山パークの特選部隊。


「彼らは首領ジョージさまが自ら力をお与えになった親衛隊。その名を――Ⅵ号軍団ティーガーちゃんだ!!」


 なのだった。


「……猫でしょ!! サーバル猫でしょ!! そこは!!」


 ティーガーなのです。

 そして、その謎はこの後現れる男、聖ジョージに関係があったりなかったり。


 いやはやほんと。

 パロディと下ネタの重ね掛けばっかりで、毎度毎度すみません。


☆許してカドカワさん!! そして、消すなら消す前に一声かけてねカドカワさん!!


「そんなこと言うくらいなら最初からやるなよ!! ほんと、もうっ!!」


 気づいたらやってるんだから仕方ないでしょ。

 大御所、吉崎〇音先生も、昔はコング爺とか勇者マリオやってたんだから許されるはず。出版社はちがうけれどもさ――。


「大御所と同列に物事を語るな!! アホ!!」


 はい、このネタがピンポイントで分かった人は感想欄まで!!

 実は3、4巻が手に入らなくて、やきもきしてたりしています!!

 それはそれとしていいよねあの作品。僕は好きです。DQMより僕は好きです。(0年代ガンガ〇小僧的感想)


◇ ◇ ◇ ◇


「ついたぞ、ここが首領聖ジョージさまの館だ」


「……ほう」


 男騎士が連れられて来た場所。

 そこは男騎士の盟友であるヨシヲがかつて使っていた館であった。

 しかし、彼が身を寄せていた当時とはあきらかに外観から違う。


 より勇壮に、そして要塞として機能的に手が加えられている。

 金はそこまでかけていない。だが、最低限、周囲の人間に威厳を知らしめるための造作を施している。

 その様子から、男騎士は首領聖ジョージなる人物の計算高さを感じ取った。


 ただの烏合の衆の長ではないらしい。

 さっきのⅥ号軍団ティーガーちゃんといい、何やら謎めいた行動が目を見張る。

 首領、聖ジョージ。

 果たして彼はどういう男なのか。


 疑問に男騎士の胸が高鳴る。


「……ティトよ、ちょっと気をつけた方がいいぜ。こいつは一筋縄でどうこうなる相手じゃないかもしれない。心してかかれよ」


「……あぁ、分かっている」


 気を引き締めねば。

 ぐっと拳を握り締める男騎士。

 その前で、偽男騎士が首領の館の扉をあけ放った。


 ジューン山に降り注ぐ陽光がその扉から仄暗い部屋へと差し込む。

 正面、部屋の中央には、赤いビロード張りの椅子に座っている人物。


 縮れた毛。

 頭には帽子。

 背中には鞄。


 そして――青々しいつなぎ。


 そう!!

 そして!!

 つぶらな瞳!!


「彼が梁山パークの首領!! 出雲虎しゅつうんこの聖ジョージさまだ!! ひれ伏せ!!」


「どうも、僕、ツナギちゃんって言います。えへへ、よろしく」


「……どっち!!」


「……なんだ!!」


 かきならされる会話の不協和音。

 一方は、聖ジョージといい、もう一方はツナギちゃんという。


 どっち。

 いったい、どっちが正しい名前なのか。

 そもそも正しい名前とかどうこうのの問題なのだろうか。


 いろいろなものが混ざり合っている。

 混ざり合ったうえで、訳が分からなくなっている。


 元ネタが限りなく混在している。

 どれがいったい元ネタなのか、分からないくらいにわちゃわちゃになっている。


 混乱。

 混乱ステータス。

 男騎士は途端に次の言葉が出て来なくなった。


 冒険者レベルで補っている知能判定がついに判定失敗した。

 いや、知能が高くても失敗するような衝撃だった。

 目の前の光景を処理しきることなどできなかった。


 そんな中、うふふと出雲虎こと聖ジョージにしてツナギちゃんは笑う。


「なんだか驚いているみたい。ごめんね、わちゃわちゃさせて」


「聖ジョージさま。こいつみたいな凡百冒険者に気を遣う必要なんてありませんよ。貴方は偉大な梁山パークの指導者なんですから」


「まぁそんなこといわずに」


「……ははっ!!」


 あの我の強い偽男騎士があっさりと引き下がる。

 まるで借りてきた猫のようにおとなしい偽男騎士。その態度にまた男騎士は底知れないショックを受けた。


 ここに来て知力判定の失敗続き。

 まずい、これはまずいと身構えたその時――。


「ところで、貴方、いい身体をしていますね。なかなか親衛隊向きの体つきだ」


「な、なにを!?」


「ふふっ。知っていますよ。貴方は僕たちを止めに来た、女王国側の刺客なのでしょう。ねぇ、ティトくん」


 こいつ。

 何故それを知っているのか。


 偽物の大英雄が、自分のことと勘違いしてふふんと鼻を鳴らす。

 えぇもちろんですそのためにこうしてお連れしましたと、先ほどまでの一連の流れをまるっきり無視してどや顔をする。そんな後ろで、聖ジョージことツナギちゃんは、ゆっくりと剣を抜いた。


 魔法剣士。

 Ⅵ号軍団ティーガーちゃん。

 出雲虎。

 という名前――。


 抜き放たれたその剣には、虎が巻き付く意匠が施されていた。


「求めていたんです。君のような逸材フレンズを。という訳で、皆さんご唱和ください――」


 アーッスカロン!!

 男騎士に向かって虎の紋章が刻まれる。


 うがっ、と、慌ててそれを避けようとした男騎士だが、連続しての知能判定失敗は、ここに来て更に失敗するのだった。


「お、おい、ティト!! 大丈夫か!! しっかりしろ!! ティト!!」


「……虎だ……虎だ……俺は虎になるのだ」


「はい、君は虎のフレンズなんですよ、ティトくん」


 どさりとその場に倒れる男騎士。

 そんな彼に近づく梁山パークの首領。


 彼は背中に背負った鞄の中から虎のマスクを取り出すと、そっとそれを男騎士に被せた――。

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