第497話 ど伝説の戦士たち

【前回のあらすじ】


 シリアス展開まったなしかと思わせての――ロリコンブレイク。

 そう、この小説はどエルフさん。どんなにヘビーな展開で、コアなパロディを満載していても、基本は気の抜けたギャグ小説なんだなぁ。


「それにしたって、あずまんが〇王はわかんないでしょ」


 もうそういうのが分かる人たちだけに向けて書いてる感はありますよ。

 というか、分かっていただきたいのはそっちじゃないぜ、ハニバニ。


「……だから、そういう感じのコアな所を狙っていくから、アンタの作品は駄目なのよ」


 よく考えると、最初に書いた作品が、先生の作風を小説で表現できないかっていう、そういうノリの奴でした。というか、今でもラブ〇んは私の青春ですよ。

 えぇ、誰がなんと言おうと青春です。


「……嫌な青春だなぁ」


 そういう多様性があってもいいじゃない。

 でなきゃ、モラやんみたいな、どう考えてもニーズのない、アラスリエルフだって生まれなかった訳なんだし。


「モラやん言うな!!」


 という訳で、今週末もシリアスにシリアスを重ねる、暗黒大陸激闘編。

 伝説の戦士たちが集まって、いよいよ今週から本格的なドンパチが始まる――のか?


「なんか先週はキャラ紹介で水増しして誤魔化した感が」


 はい、それじゃ、行ってみようか!!


◇ ◇ ◇ ◇


 天に吸血鬼。

 地にドワーフ。

 その中間には妖艶なドレスに身を包んだエルフの魔法使い。


 皆既月食の闇の中で、伝説の戦士たちが睨みあう。

 まず最初に手を動かしたのは――やはりエルフの魔法使い。

 暗黒大陸の巫女であった。


「ふっ!! 雁首揃えてかつての英雄たちが勢ぞろい!! 面白いわね、二百年ぶりの再戦というのも!! こうして魂だけを道具に宿らせて、生き延びてみるものだわ!!」


 彼女の弟子にして、次に精神を宿す先――女ダークエルフが得意とする虚構魔法を彼女は行使する。空間断絶。キューブ状に揺れる空間に、宙を漂っていた吸血鬼が巻き込まれそうになる。しかし――。


 余裕の笑顔と共に、彼の体は血の霧へと変貌する。

 そうして、蠢動する空間の切れ目の中をすり抜けた吸血鬼は、再び体を再構成すると同時に――凶悪に膨れ上がった両腕を魔女に向かって振り下ろした。


「行くわよォ、エモァ!! 連携攻撃よォ!!」


「……ったく!! 昔はただのモヤシ野郎だったってのによぉ!! 頼りになるじゃねえか、クリネス!!」


「それはもちろん!! 貴方と同じように、巫女に惑わされた仲間を救うために、私だって人間捨てたのよ!!」


「お前が救いたいのはそっちじゃなくて、あっちだろう!!」


「些細なことは言いっこなし!! 仲間でしょ!!」


 赤い腕に合わせて暗黒大陸の巫女へと下から迫る男ドワーフの大戦斧。攻撃を躱されて完全に放心していた暗黒大陸の巫女が舌打ちと共に身を翻す。

 上から打ち下ろされた赤い拳が大戦斧と激突する。しかしながら、まったくダメージを感じさせずに、吸血鬼の赤い拳は再び血の霧へと還った。


「……なかなか厄介ねぇ」


「おっと、よそ見をしている場合かペペロペ!!」


 大戦斧からエルフソードに持ち替えた男ドワーフが魔女に距離を詰めていた。赤い刃が煌めいて、暗黒大陸の巫女の首元を狙っている。

 歴戦の兵である男ドワーフ。彼は斧だけでなく、当然のように剣も使えた。


 そう、大戦斧。

 目立つそれは、確かに彼の得物であるが、この場においてはブラフ。


 本命はその赤い魔剣――エルフソードによる一撃。


「ありとあらゆる呪いを断ち切る魔剣エルフソード!! ペペロペ!! お前の残留思念は、その衣装ごと切り刻ませてもらうぜ!!」


「……やるじゃぁない!! けど、まだァ!!」


「おっと、させないわよ!!」


 血の鎖が魔女ペペロペの体に纏わりつく。

 赤い鎖がその手を戒め、脚を戒め、胴を戒め、がんじがらめに彼女の体を拘束した。


 吸血鬼。

 この世界の彼らは、ただ、人間の血を吸うだけの化け物ではない。

 血を操り、硬化させ、武器のように、そして自分の手足のように使う。

 彼らが血を啜るのは生存本能からではない、闘争本能からなのだ。より多くの血を持つ者が強く、そして、正義なのである。


 大僧侶としての権能を持ちながら、化け物としての力も持つ彼――クリネス。

 彼は暗い闇の中で、ただ、この時を待ち、生き永らえるために吸血鬼となり果てた訳ではない。確かに彼が男ドワーフに言った通り、かつての仲間を助けるために、吸血鬼になったのだ。


 故に、その技は鍛え上げられていた。

 二百年に渡る闇の中で、ひたすらに、この時の戦いのために鍛えられていた。


「きっ、さまぁっ!!」


「セレヴィの美しい体に傷をつけるのは忍びないわ。今はその鎖で勘弁してあげる。だから、とっとと、斬っちゃってよエモァ!!」


「言われなくてもだぜ!! 往生しろよ暗黒大陸の魔女――アイツにゃ悪いが、ここは俺たちだけで決着を付けさせてもらうぜ!!」


 気合一閃。

 男ドワーフがその隆起した腕を振るって、空中で戒められた暗黒巫女へと剣を振るう。


 もはや逃げ場はない。

 ついに、暗黒大陸の巫女が倒れる。

 彼らの悲願が果たされる。


 そう思ったその時――。


「巫女どの。お戯れはほどほどにしていただきたい。我々は、中央大陸くんだりまで遊びに来た訳ではないのですよ。古き宿縁がどうこうなどと、そんなことは今はどうでもよいではありませんか」


 紅の剣を受け止めて、虚空に立つのは黒衣の騎士。

 黒い甲冑に黒いマント、それに合わせたような濡れ羽烏の黒色の髪。


 暗黒大陸の総大将。

 暗黒騎士シュラトが、男ドワーフの剣を受け止めていた。


「……てめぇは!!」


「久しぶりだなドエルフスキー氏。しかし、まさか貴方が、伝説の戦士とは知らなかった」

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