第464話 どエルフさんと完全決着

【前回のあらすじ】


 仕事しろ!! 編集者ノリス〇!! バッカモーン!!


「うぉい!! なんでいきなり編集者ディスリに行った!! なんぞ恨みでもあるんか!!」


 ありません、言ってみたかっただけです。

 ちなみに俺は編集者ノリス〇みたいな担当なら、割とくだけた話ができそうでいいなとか思っているワナビです。これを見て、おっ、こいつは面白い物書きだと思ったら、大至急連絡をください。katternはいつでもオファーをお待ちしております。


「コンテストや公募で結果出せてないのにそんなこと言っても説得力ないわよォ」


 ですよねぇー。

 しかし、売り込む。


 kattern仕事選ばない。

 いくらでも原稿書きますとも。えぇ、そりゃもう。


「というか、そういう成長性のない働き方をしているから、あんた何やってもダメなのよ」


 そういう悲しくなること、言うなよ。

 こうしていないと生きられない、そうい奴もいるんだからさ。


「……ハードボイルド装ってるけど、ただの怠惰なクズだからね、それ」


 ごめんちゃーい、てへぺろー☆


◇ ◇ ◇ ◇


 完全決着。

 そう、完全決着である。


 世田谷区一戸建サザエニア・ファミリーからコミカルに放り出された異世界漂流者ドリフターの少女は、白目を剥いてリングに舞い戻った。そして、そのまま立ち上がることもなく、無情にもテンカウント――試合終了を告げるゴングが、魔法少女勝負のリングに鳴り響いたのだった。


「勝者ァ!! やっぱり姐さん!! どんなにウワキツでも頼りになるゥ!! そこに痺れるあこがれる!! モーラァっ!!」


「しゃぁっ!! どーんなもんよ!! アラスリエルフを舐めんじゃないわ!! この小娘風情が!!」


 異世界漂流者ドリフターの少女の放出と時を同じくして、海母神から力の供給が断たれたらしい。いつの間にか起立するサザ〇も、インスマス〇も、イク〇も居なくなった浜辺で、女エルフは拳を天に突きあげた。


 その起伏のない、限りなく無に近いフラットな白スク水の胸板が反りあがる。

 文句のつけようのない、完全勝利であった。


 すぐに男戦士たちが駆け寄る。


「モーラさん、ウワキツ!!」


「さすがです、モーラさん、ウワキツ!!」


「ウワキツ、イアイア!! なんだぞ!!」


「お姉さま、途中ちょっと暴走モード入ってましたけれど、はい、エリィは大丈夫です。そして、モーラお姉さまはウワキツです!!」


「やめいっ!!」


 彼女の完全勝利をウワキツと、まるで神を讃えるように言祝いだのだった。

 やれやれと残された店主、隊長、ヨシヲが肩を振る。流石だぜ姐さんと、この魔法少女勝負の一切を取り仕切っていた魔法少女が頷く。


 そんな中、ようやく人心地ついた女エルフはその場にへたりと膝をついた。

 魔法少女勝負の終了と共に、衣服が修復され、姿がいつものアラスリモードへと戻っていく。ただの女エルフへと戻った彼女の肩に、そっと男戦士が手を置いた。


 まるで彼女の健闘を労うように。


「頑張ったな、モーラさん」


「……ティト」


「後衛職の君が、前衛に立って闘う姿は胸に響いた。君のその頑張りを、俺は終生忘れることはないだろう」


「……いや、可及的速やかに忘れて欲しいんだけれど」


「いい齢したエルフが魔界天使白スク水着ているとか、そんなウワキツな光景忘れられる訳ないだろう。しかも、やけっぱちでその状況を楽しんでいるとか……最高じゃないか!!」


「ほんと!! アンタのそういう性的嗜好!! なんとかしてよね!!」


 忘れろぉと男戦士に殴り掛かる女エルフ。

 あははと笑ってそれに応じる男戦士。

 流石だなどエルフさん、さすがだと、言ってしまえば落ちてしまいそうな、そんななごやかな空気が浜辺に流れた。


 しかし――。


「おっと、大団円にはまだちょっと早い、みたいだよ」


 土の精霊王のミッチーがまた女エルフの隣に姿を現す。

 本当に、他の精霊王たちと違って、契約者のことを気にかけている彼女の言葉に、女エルフは素直に従った。


 視線を精霊王の黒目がちな目と同じ方へと流せば――。

 

 ざざんと波が引く音がする。

 先程、海母神の眷属が現れた浜辺に、頭に九つの団子を持つ女が立っていた。

 着込んだ服はきらびやか。羅紗か、キルトか、よく分からぬが、宝玉を砕いて練りこんだ煌めく糸で編まれたそれは、闇夜の中に妖艶に輝いていた。


「あれはまさか」


「だぞ、海からきて、神の言葉を告げる者」


「――ティトさま、そして、モーラさま、そしてお仲間の方々はじめまして。私、海母神さまからのメッセンジャー。名を」


 サザ〇でございまーす。


 また、あの、なんか流しちゃいけない感じの声がする。

 それと同時に、男戦士たちはずるりと足を滑らせたのだった。


 どうやら、モーラさんの足の下で蠢いていた巨大な貝の精霊。あれが、人の姿に化けたもののようだ。


 しかし――。


「その、自己紹介の仕方はどうなのよ!!」


「うぅん、ウワキツのモーラさんに勝るとも劣らないギリギリ感。流石だなサザ〇さん、さすがだ」


「さすがじゃないわよ。勘弁してよ、〇日新聞まで巻き込むの」

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