第463話 どエルフさんといい出汁かいたわ

【前回のあらすじ】


 魔界天使で義理の妹とか属性盛りすぎじゃありません!?


「いきなり何の話だ!!」


 懐かしいゼロ年代美少女ゲーの話ですよ。

 まぁ、僕はやったことないんですけどね。


「やったことないのにネタにするなよ!! お前、ほんと、そういうとこだぞ!!」


 なんにしても、悪堕ちした前作ヒロインが敵として出てくる。こういうのって、今はもう普通になっちゃいましたが、この作品がなんというかベースを造った気がするんですよ。

 そういう作品へのリスペクトって大切だなって、僕、思うんです。


「だったらやれよ!! 魔界天使ジブ〇ール!!」


 だって、おら、超〇天使派だから……。


「そっちも!! まともに!! やって!! ないだろ!!」


☆〇月さん、フロントウィ〇グさん、アリ〇ソフトさんごめんなさい!!


※ なお、悪堕ちはどうやらアニメ版だけの模様です。(詳細求む)


「買って!! やれ!! 文化への敬意!!」


◇ ◇ ◇ ◇


「――っツゥ!!」


 ついに致命の一撃ならぬ、一手が異世界漂流者ドリフターの少女の腕に伸びた。

 数あるワカメの中でもとびぬけて太いそれは、まるで鎖のように彼女の体を青いリングに拘束する。それがきっかけとなり、すぐさま、四方八方から伸びるワカメに羽交い絞めにされた彼女は――ついに体の自由を失った。


 こんな、バカな、と、呻く彼女に、女エルフが怪しい笑みを向ける。


「あらあら、まぁまぁ、ついに捕まっちゃいましたか!! 哀れな子豚ちゃん!! もうちょっと遊んであげたい所だけれど、私もそろそろこの遊びに飽きてきちゃった!!」


「……なん、ですっ、て!!」


「という訳で、フィニッシュホールド行くわよぉ!! 出でよ、海母神の祠!! その絢爛たる威容を人に知らしめる時が来たわぁ!!」


 ずもずももと海鳴りが響く。

 また大きく潮が引いたかと思うと、そこから何かが姿を現す。


 生物ではない。

 サザエでもない。


 それは、海母神マーチを祭る祠にして、古代の神殿。

 ピンク色をした煙突のある愉快なお家。


「必殺!! 世田谷区平屋建サザエニア・ファミリー!!」


【必殺技 世田谷区平屋建サザエ・ファミリー: 海の中から現れるピンクでモダンなデザインをしたお家。そのお家の中に連れ込んで、どったんばったん大騒ぎが日曜日の夕方の定番なのである。まさかこのネタ知らない日本人はおるめぇ。ちなみに、昔は火曜日にもやっとったんやでと言うと、筆者の世代がバレる危険な技である。あと、後番組が普通に、三分の一も伝わらないそばかすな純情だったりするから、いやほんといい時代でしたよね(意味不明のキワミ、アーッ!!)】


 リングアウト。

 マットを破ってワカメに連れられ、海から現れた世田谷区平屋建サザエニア・ファミリーへと連れ込まれる異世界漂流者ドリフターの少女。いや、いや、やめてぇー、という声と共に、その家の扉が閉まる。


 これは本格的にネチョい奴ではないのか。

 レーティング設定しているけれども、やっちゃっていい奴なのか。

 ついに、どエルフで、本当の本当にエロいネタやっちゃうのか。


 そんな空気が辺りに満ちたその時。


「いや、いや、やめて!! いひぃーっ!! 全自動卵割マシーン!! アナ、アナゴのフルコース!! なんで、はい、ちゃん、ばぶーだけで意思疎通できるのぉっ!!」


 あ、これ、健全な奴や。

 叫び声で男戦士たちは、祠の中で繰り広げられる抱腹絶倒の光景を察した。

 やっぱり健全。PTAに怒られそうで、微妙に怒られない、けどやっぱり怒られるところを攻めていく、そういうスタンスのどエルフさんである。


「ほっほっほ!! 日曜夜のお約束的で、あるある的で、安定感のあるギャグをあますところなく味わいなさいな!! これが世田谷区平屋建サザエニア・ファミリーの真骨頂!! 安定感があるけれど、時々、神がかったような回があるギャグよ!!」


 ギャグというと、毎回毎回、読者の度肝を抜く様な展開や話、もちろん、キャラクターの動きが必要とされるのが昨今である。しかし、彼の作品は、もはや日常として人々の心に根付きすぎていて、そこまで逸脱しなくても笑いが取れるのだ。


 しかし!!

 しかし、そんな作品が!!

 なりふりを構わず笑いを取りに来た時の破壊力!!


 そして、日常として認識されているからこそ、共通知的に多くの人に認識されているからこそ、抜群の破壊力が発揮される――ネタ回。


 そう、時に、日常あるあるギャグは――人を殺すことができるのだ。


「やめ、やめてぇっ!! そんな、声色を変えて、フグ〇くん、フグ〇くん言わないで!! そんな、やましい所がある時の、フグ〇くんの呼び方とか、そういう細かいところを引っ張ってきて笑いを取りに来ないでぇっ!!」


「ほほほほ無様ねぇ!!」


「やめてぇっ!! 本当にやめてぇっ!! その安定感のある声で、絶対に言わなさそうな嘘次回予告とかするのやめてぇっ!! ちょっと本当にもう、なんていうか、それは反則でしょ!! ネタ的にも、言ってること的にも!! フジテレ〇攻めすぎよぉ!!」


「ご長寿番組にはそういう使い方もあるのよ!!」


 響く狂気の笑い声。

 かくして――。


「いやぁあああああっ!! ノリス〇がまた家に遊びに来てるぅ!! 仕事しろよ編集者ぁあああああああっ!!」


 そんな叫び声を最後に、異世界転移者の少女の声は聞こえなくなったのだった。


 完全、決着、であった。

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