第461話 凶戦士と土曜日の皇帝

【前回のあらすじ】


 狂戦士ガッ〇崎しげる降臨者フォーリーナーは属性優利。

 FG〇プレイヤーなら常識なんだよね。

 あと、ワカ〇ちゃんならぬ、ワカ〇さんを使役するのも当たり前なんだよね。


「……ほんと、やりたい放題」


 パロディ小説の面目躍如。

 オリジナル小説を凌駕する、このネタの宝石箱を、見よ、典膳!!


「あ、けど、BBちゃんって、フォーリナーじゃなくて、月の癌ムーンキャンサーじゃ?」


 クトゥ〇フだって言ってるじゃん!!

 だから、降臨者フォーリナーになるに決まってるじゃん!!

 どっちかっていうと北〇ちゃんじゃん!!

 海産物的にも鉄〇ぬらぬらちゃんじゃん!!


「いや、ビジュアル的に、どう考えても水着BB」


 イアイアイアイアイアイアイ!!

 磯〇一家は大海からの使者、だから、クトゥ〇フの眷属なの!!

 いいね!!


「……無理やりねぇ」


 という所で納得してください。

 はい、それじゃ、週末の真面目パート、はじまりまーす。


「……都合が悪いからって流したわね」


◇ ◇ ◇ ◇


 鬼が咆哮する。

 赤い鬼の太い腕が地を抉り、岩を穿ち、亀裂を大地に走らせて、血風を巻き起こす。死肉を捲いて起きる暴風。しかしながらそれを前に、負けじと一刀にして切り伏せて、凶騎士が白いヘルメットの中から赤い鬼を睨みつけていた。


 今ここに、二つの狂戦士が全力で立ち会う。

 鬼が勝つか、凶騎士が勝つか。


 しばし、暗黒大陸の兵も、連邦騎士団の兵も、彼ら二人の立ち会う姿に、交戦するのも忘れて視線を向けていた。


 力任せ、野生に任せて、拳を振るう赤い鬼。かつて、白百合女王国で見せた暴威を再びこの世界に顕現させて、暴れ狂うその姿はまさしく悪鬼羅刹。

 巻き込まれた暗黒大陸の兵、連邦騎士団の兵が、叫び声を上げる間もなくただの肉塊に変わり果てて絶命する。襲い来る、その圧倒的な死という概念は、まさしく鬼のありようとして正しいものであった。


 岩のように盛り上がった巨大な二の腕。

 逆立った牙。それと同じく天を突く大きな一つの角。

 赤い光を放つ瞳に、獅子のような黄金色の鬣。

 赤い悪鬼が次々に、連邦大陸の地を蹂躙していく。


 しかし――。その剛腕を、たった一太刀、煌めくような袈裟斬りが止める。七分割。腕、脛、腰、肩、手、首と、目にもとまらぬ速さで赤き刃を走らせる凶騎士は、そのうちの一つである、胴を蹴り抜いて鬼の体をすり抜けた。


 圧倒的な剣技。そして、その暴威を前にしてひるまぬ勇気。

 思わず、連邦騎士団第二部隊に歓声が上がった。


 だが。


「囀ってんじゃねえぞ!! このクソガキどもマザーファッカー!! おう、萎えたふりはやめろよ、この粗チン〇野郎!! 淫虫プラナリアのように斬っても斬っても再生するんだろう!! 知ってるんだぜ、下手な駆け引きはなしにしようや!!」


「……グヒャヒャヒャヒャッ!! んだよぉ、知ってやがったのかよ!! 本当に、痺れるくらいに面白い奴じゃねえか!!」


「おうそうだ、勃ち上がりやがれ!! そうでなくっちゃ面白くない!!」


 鬼の体は不死の体。すぐさま、斬り刻まれた七つの肉塊が接合すると、何事もなかったかのように鬼はその場に復活した。振り返り様、剛腕を凶騎士に向かって振りかぶかぶる。しかし、それに対して――凶騎士もまた、受けて立つ。

 兜の中で赤く瞳を光らせて彼は叫んだ。


 そう、それこそは、彼が持つ必殺の斬撃。


「逝くぜ!! 絶唱剣舞――殺界!!」


 振りかぶった剣はついに音速を超えて光速へと至る。それは、支援効果のある補助魔法歌と、鍛え抜かれた剣技、そして、呪いのヘルメット殺骸による狂化により繰り出される、人間の枠から外れた妙技であった。


 赤い光が鬼の体を十重二十重と切り刻む。

 それと同時に――。


「我は地獄からの使者!! 視界の全てを屠るもの!! 親も子供も関係ねぇ!!」


 常軌を逸した歌が楽し気に凶騎士の口から洩れた。

 それこそまさしく、絶唱剣舞殺界の歌。自らを地獄からの使者と、死神と認めることにより、背徳の力をその身に帯びる、禁断の妙技であった。


 歌が進むにつれて、早まっていくその剣速。大きくなる声量。

 たかが人間の繰り出す剣技に、鬼が腕一つとして動かすこともできなくなる。物理的に拘束された赤鬼に向かって、ついに、凶騎士は一気呵成に、もはや捉えることもできなくなった、血煙のような斬撃を放った。


「刻め!! 刻め!! 刻んでやれ!! 絶命!! 絶命!! 絶命せよ!!」


「うぉーっ!! ヨハネ・クレンザーさんの殺界だぁっ!!」


「すごい!! 一秒間に十回の剣閃なんて、どんな鍛え方してたら放てるようになるんだ!!」


「やっぱりすごいぜ、クレンザーさんは!!」


 そう、今更であるが――。


 筆者は若杉公〇先生のDMCの大ファンであった。


 それはともかく、ヨハネ・クレンザー二世こと、凶騎士の剣閃は、粉みじんに、赤い鬼を切り裂いてみせたのだった。ひき肉か、それとも、ミンチか。もはや、それが、人であったことはおろか、鬼であったことかもわからないくらいに。


「血の色に大地を染めてやれ!!」


 絶唱を終えた凶騎士が剣を止める。

 振り返ったそこには、ただただ赤いミンチが転がっていた。

 完勝、圧勝、圧倒、虐殺、どんな言葉が似合うだろうか。鬼の地にまみれて、赤くなった狂気の騎士は、ヘルメットの下で頬を吊り上げた。


 しかし――。


「げきゃきゃきゃ!! なんだよ、お前の必殺は、その程度かぁ!!」


「……なにっ!?」


 肉塊がうごめく。もはや、それは料理の素材と見分けがつかないくらいに、ぐちゃぐちゃになっているというのに、言葉を発し、そして高笑いを上げた。

 そして、次の瞬間にはまた、何事もなかったかのように、鬼の姿に戻っている。


 不死である鬼族の呪いにしてもあり得ぬ高速回復。


「もう少し、楽しませてくれよ、死神!! ヨハネ・クレンザー!!」


「……どうやら、今日は土曜日の皇帝サタニック・エンペラ―のようだな」


【キーワード 土曜日の皇帝サタニック・エンペラ―: 半ドンで休んでいた皇帝様が、銃で撃たれてしまってとほほまいっちゃうよということがあったことから来る故事成語。深い意味はない】


 再び、剣を正眼に構える凶騎士。

 果たして先程の剣を越えることができるのか。そんな不安を顔ににじませる。

 その不安をあざ笑うように、赤い鬼は首を鳴らした。


 地獄はまだ、その蓋を覗かせたばかりであった――。


 さて、そんな狂戦士たちの戦いの横で、戦場を駆ける黒い影があった。


 いや、黒くて、白い、影があった。


 そう、それこそは――暗黒大陸の将の一人。

 狂乱の殺人メイド。


「きゃるーん!! 殺人メイドキサラ!! 抜け駆け不意打ち上等で、ここに優雅に参上ですぅ!!」


 殺傷能力があると思えないはたきで兵を打ちのめすと、彼女は一直線に――首都リィンカーンの壁に迫っていた。

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