第362話 どエルフさんと再会
【前回のあらすじ】
報酬はスイス銀行に。
彼女の名はエルフ
第一次世界大戦どころか、アメリカ独立戦争の頃から、戦場にその名を轟かせるスナイパー。ライフル銃がなんだというのか、弓と矢があれば人は死ぬのだ。
彼女は山の奥深くから、
「戦争はまだ終わっていないんだ――って、なんかいろいろ混ざってない!?」
ラン〇ーって一度も見たことないんですが、面白いんですかねぇ。
まぁ、それはさておき。
突然男戦士たちの前に姿を現した魔女ペペロペと謎のゴブリン。
果たして彼らの目的はなんなのか。
その圧倒的な魔力とオギャミティに男戦士が陥落しそうになったその時――現れたのはそう、因縁のあの女。
硝煙と戦場がよく似合う、元祖熟女エルフ――エルフ
「だから!! 違うというとろーが!! 誰が元祖熟女エルフじゃーい!!」
もう最近、あらすじくらいしかモーラさん弄るところないんでね。
という訳で今週もシリアスぶっ通しかな。どエルフさん始まります。
「言うほど先週もシリアスじゃなかったでしょーが!!」
◇ ◇ ◇ ◇
「どエルフさん
「だからモーラやっちゅうねん!! しばくぞ、このアホティト!!」
眉間に青筋を立てながらもその顔は男戦士の方を向いていない。背ければ、相対している魔女からすかさず攻撃を仕掛けられると彼女は知っているからだ。
あらあらと微笑む魔女の視線に苛立たし気に舌打ちをする。
そんな風にギャグでもないのに感情を露わにする女エルフを、男戦士は久しぶりに見た気がした。
仕方のないことである。
彼女の目の前にいるのは――そもそも彼女が旅立つ発端となった相手なのだ。
「久しぶりねモーラちゃん。すっかり大きくなっちゃって」
「……その顔で!! その口で!! その声で!! 囀るな魔女ペペロペ!!」
「んふふふっ、よく調べたじゃないの。なぁに、あの後、必死に
「えぇ、ほんと……
「うふふふっ」
「あははっ」
刹那、二人の間に極彩色の花火が散った。
単純な魔力。そのぶつかり合いである。炎にも、風にも変換されなかった、エルフ本来が持つ莫大な魔力の塊は、ぶつかり合って激しい熱エネルギーに変換され、男戦士たちの前で光を伴って弾けた。
おぉ。
連邦騎士団の団長たちが一斉に円卓から立ち上がり身構える。
大魔女と女エルフ。二人の熟練の魔法使い――その対峙を前にして、連邦騎士団の団長たちはいささか力不足であった。
そんな中で。
「おっさんたち。ここは今から激しい戦場になる。さっさと脱出するぞ」
「カロッヂ!! 連邦騎士団の皆さんを安全な所へ退避!! バトフィルドは魔術防壁を展開しつつ、【魔脳】をペペロペの行動予測に使って!!」
「久しぶりに会ったと思ったらいきなり無茶ぶりね、カツラギ。まぁ、いいけれど」
素早く動いたのはリーナス騎士団。
男戦士が指導した三人の教え子たちだ。
彼らは的確に、この場が局地的な戦場になると判断した。そして、今後の本格的な暗黒大陸との激突を前に、欠かすことのできない戦力を温存する決断をした。
魔法道具により壁に穴をあける逃がし屋。
男戦士たちより後ろに、三層の魔法結界を展開する魔脳使い。
腕を組み、男戦士たちを信頼した瞳で見つめる女軍師。
頼もしい三人の姿に、男戦士は自分でも気づかないうちに微笑んでいた。
流石はリーナス自由騎士団。
流石は自分が手塩にかけて育てた者たちだとばかりに。
「ティト
「……カツラギ!!」
「悔しいですが役者が違います!! ゼクスタント団長ならまだしも、魔女ペペロペを相手に、直接戦闘できるだけの力は我々にはありません!!」
「
「その代わり、お二人がどれだけ暴れても、被害が最小限になるように全力でサポートさせていただくわ」
「お願いしますティト
「……お願いされちまったら仕方ねえな、ティト!!」
「……あぁ!!」
男戦士が魔剣エロスを抜き放つ。その刃を煌かせて、彼は女エルフの背後から飛び出すと、魔力の奔流渦巻くエルフたちの戦闘に割り込んだ。
バイスラッシュ。
ただの斬撃が――溢れかえる魔力の塊を叩き斬る。
魔剣エロスがなせる業か。
それとも男戦士の戦士技能のなせる業か。
魔女ペペロペが一瞬、そのあり得ぬ光景に表情を強張らせる。反対に、女エルフがほっとしたように表情を緩める。
「モーラさん!! 助太刀する!!」
「ティト!! 頼りになるわ――少しだけ、時間を稼いでくれる!!」
そう言うや、女エルフは魔法の詠唱を始めた。
それはかつて白百合女王国で使ったもの。同じように魔女ペペロペの呪いに意識を乗っ取られた女傑を、正気に戻すために使われた女エルフの必殺の魔法――。
魔女ペペロペの表情が曇る。
「まさか、忌々しいあの魔法を――させない!!」
「おっと、お前の相手は俺がさせて貰おう!! 暗黒大陸の巫女ペペロペ!!」
「好き勝手はそこまでだぜ、この性悪のど腐れ魔女が!! しょうこりもなくまた蘇りやがって、魔剣と化した俺様が成敗してやるぜ!! やったるぞティト!!」
魔女ペペロペの呪いを浄化する白濁光線。
これを浴びればたちまち、魔女ペペロペの遺志により操られている者――女エルフの母である大魔法使いは解放されるだろう。
故に、その魔法だけは行使させてはいけない。
あわてて女エルフに攻撃を仕掛けようとし魔女ペペロペが手をかざした。
しかし、彼女が放った魔力の弾丸は、魔剣エロスと男戦士が、鋭い斬撃により切り落とした。
「言っただろう!! お前の相手は俺だと!!」
「……ちぃっ!! たかだか三十年しか生きていない人間の分際で!!」
「はっはーん、その言葉、前にやられた時にも聞いたぜペペロペ!! 慢心駄魔女が馬脚を現したな!! そいつがてめえの命とりよ!!」
女エルフに手出しはさせぬ。
男戦士が裂帛の気合と共に、魔女ペペロペに切りつける。
伝説の魔女と言っても、戦士技能レベル8の男戦士に激しく攻められれば、一時とはいえ思うようには動けない。
そうするうちに――。
「準備できたわ!! どいて、ティト!!」
女エルフは杖の前に、白い水球――のように見える光の玉――を作っていた。
「くらいなさい!! 【
白い飛沫が魔女ペペロペ――女エルフの母の身体に浴びせかけられた。
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