第308話 どエルフさんと挙動不審

【前回のあらすじ】


 からくり侍との一騎打ちに勝利した男戦士。

 しかし、勝利の余韻に浸っている間もなく、彼はからくり侍に弟子入りを申し込まれるのだった。


 負けた相手に弟子入りするなんてのは少年漫画の王道的展開。

 からくり侍の発想とその展開はあながちおかしなものではない。


 はたして、どうなる、どエルフさん。

 いや、どうするど男戦士さん。


 このままからくり侍を弟子に取ってしまうのか……。


 というか、今週はギャグらしいギャグをやっていないけど、このままで大丈夫なのかどエルフさん。

 とうとうギャグのネタが尽きてしまったのかどエルフさん。

 それともギャグの書き方が分からなくなったのかど作者さん。


 どうしてしまったんだどエルフさん!!

 こんな、シリアスモードばかりで、らしくないぞどエルフさん!!


「いや、FG〇をやりながら、片手間で書いてるからでしょ。ちゃんと気合入れて書きなさいよ」


 幕間と強化クエ解放のために周回するのしんどいです。

 はい、すみません、真面目に書きます。


◇ ◇ ◇ ◇


「弟子にしろって言われましても」


「私たちは冒険者なのよ。街の道場主でもないし、基本、放浪の身の上なの。そこんところ、ちゃんと分かってモノを言ってる?」


「その辺りは拙者も心得ているでござる!! さすれば、旅の仲間に加えていただき、その中でティト殿から御指南いただければ……」


「いただければって」


「簡単に言ってくれるわねぇ」


 女修道士シスターと女エルフ。

 パーティの主力メンバー二人に囲まれ、睨まれる形となったからくり侍。

 刀が折れてしまえばこっちのもの。戦闘能力のないからくり侍に対して、いささか強気に出た女エルフ。そのちょっと押し気味な剣幕に、一度は峰打ちで倒した相手にもかかわらず、からくり侍は少しのまれている感じであった。


 さておき。


 旅の仲間に加えてくれとは、また急な申し出である。

 そして、はいそうですかと即答することはできない。

 なにせ、今彼らは、幸福の神より受けたミッションに携わっている最中なのだ。


「これが普通に冒険者稼業の最中だったら」


「頼りになりそうだし、是非にでもとお願いする所ですけれど」


 からくり侍に背中を向けて、身内だけで話をする女エルフと女修道士シスター。そんな彼女たちを前にして、男戦士は相変わらず気の抜けた顔をしていた。

 またしても、心ここにあらず、で、ある。


 流石にこれには女エルフも痺れを切らしたかのように額に青筋を立てた。


「ちょっと、貴方のことじゃないのよ、真面目に考えなさいよ!!」


「……あ、あぁ、すまない」


「どうするの、弟子にするの? しないの?」


「……そうだなぁ」


 女エルフが一方的に男戦士を睨みつける格好になった。

 それを女修道士シスターがはらはらとした表情で見つめている。


 ただ、にらみつけられた男戦士はといえば、どうにも、煮え切らない感じの表情で、ぼりぼりと頭を掻いている。

 そんな塩梅に、また、女エルフが苛立って口元を一文字に結んだ。


「しっかりしてよ!! このパーティのリーダーは、ティト、貴方でしょう!!」


「……すまない」


「まぁまぁモーラちゃん。こいつもギルドでいろいろあってさ、今、ちょっと心の整理がつかねえのさ。このくらいのことは大目に見てやってくれよ」


 そんな男戦士に救いの手を差し伸べたのは、何を隠そう彼の愛剣――エロスだ。


 唐突に口を挟んできたインテリジェンスソードに、女エルフの視線が男戦士の腰に向かう。鞘の中に納まっている魔剣は、彼女の視線を受けて陽気な声を発した。


「ティト、俺から説明しちまっても問題ないか?」


「……すまない」


「さっきから謝ってばっかりじゃない。というか、なんなの、何があった訳?」


「ティトさん、確かに戻って来てから元気がないと思っていましたけれど。冒険者ギルドの方で何かあったのですか?」


 どこかその無責任な言動と行動をなじるようだった女エルフたち。

 しかし、魔剣の言葉を聞いてから、その表情は心配するそれへと変わっていた。


 かくして、心の整理がつかない男戦士に代わり、魔剣エロスが、彼が今置かれている状況と、抱えている問題――連邦騎士団の団長就任――について、女エルフたちに説明する運びとなった。


 もちろん、男戦士の過去については微妙に伏せて。


◇ ◇ ◇ ◇


「……という訳だ」


「戦士技能レベル8だからって、いくらなんでも無茶ぶりでしょ」


「教会本部もいったい何を考えているのでしょう。新しい騎士団を造れだなんて、そんな漠然として曖昧とした啓示。騎士団へ介入するにしても、もう少し、どういう意味か分かりやすい指示をするべきです」


 ことの次第を魔剣から聞き終えた女エルフと女修道士シスター

 すると、彼女たちはそれまでの態度から百八十度方向転換。憤懣やるかたなしという感じに、鼻息荒く、次々に教会を非難する言葉を口にしたのだった。


 もとより、人間たちが信仰している神について、信じていない――遭遇こそしたが――女エルフである。教会の啓示に対して怒りを口にするのは当たり前の反応だ。


 それよりも、異例なのは、敬虔なる教会の信者にして使徒である女修道士シスターが、露骨に怒ってみせたことだ。教会のすることですから、と、擁護するかと思いきや、彼女は痛烈に連邦騎士団に出された啓示の内容を批判した。


「こちらの教会を通して、一度、本部に申し開きをお願いしてみましょうか。いえ、ここはやはり直接乗り込んで、どういう意図でこのようなことを言ったのか、はっきりとさせるべきかもしれません」


「コーネリア」


 そんなことを、教会に所属している彼女が言って大丈夫なのか。

 口にはしないが女エルフが心配そうに女修道士シスターへと視線を向けた。


 それに対して、まだ怒りが収まらぬという荒々しい調子で、女修道士は首肯する。

 構わない、という意図だろう。


「私は神に仕える者であって、教会という組織に仕えている訳ではありませんから。おかしいと思ったことには、公然とおかしいと声を上げます」


「あんた、そういう熱い性格だったのね」


「たとえ異端と罵られようと、教会の中枢から遠ざけられようと、構いません!! 私は、教義の下に人を救い、教義の下にこの力を行使するだけです!!」


 そう言って振り上げたのは、モンスターに神の愛を注いできたロッドであった。


 うぅむ、と、女エルフが複雑な顔をして唸る。


「そもそも、モンスター相手に神の愛を説くなど不要という、教会本部の主流派の傲慢さを、私は気にくわなかったのです。今回の一件もそうでしょう。なんでも、自分たちの都合のいいように教義と立場を利用して……許せません!!」


「あ、これ、あれだわ、完全に私怨入ってる奴だわ」


「そのくせ、私が神の愛について注入しようとすると怯えて逃げ出すのですから。ほんと、本部の奴らは玉無し野郎ばっかりですよ!! まぁ、玉は玉でも、無いのはしり……」


「はいシコりん、ストップストップ。どうどう。今日はちょっと興奮が過ぎるわよ」


 これが怒らずにいられますか、と、気炎を上げる女修道士シスター


 どんな組織にも、主流派と傍流派、そして異端派というものはいるものである。

 神への信仰というのは、そういう派閥の外にあるものであり――だからこそ性質が悪いのであった。


 なにせ、彼らは全員が全員、自分が最も神の下僕として優れている者だと、往々にして信じているのだから。


「神の愛は尻から注入するのが一番安全安心確実なんです!!」


「いいから!! もういいから、落ち着いて、コーネリア!!」


 ど女修道士シスターさん流石だな、さすがだ。

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