第193話 ど戦士さんと紫の鬼
【前回のあらすじ】
赤鬼と化した仮面の戦士と死闘を繰り広げる男戦士たち。しかしながら、ふとした油断より、男戦士は赤鬼の拳を受けてしまう。
積みあがったがれきの中へと吹き飛ばされた男戦士。
はたして、彼は死んでしまったのか――。
そして、ちょっといつにないシリアス展開に、作者よ無理してないか大丈夫か。
一話完結のギャグ小説ばっかり書いてるから、このあたりの間合いの取り方が結構ギクシャクしてないか。ただでさえプロット練るの苦手な上に、ひいこら言いながら書いてるというのに――そこに来て夏バテ、公式メールでのピックアプによる気負い、そろそろ職を失うかもしれないという悩みで、脳みそがちょっといっぱいいっぱいじゃないのか。大丈夫か、作者、大丈夫なのか。
すまないが、今回のギャグパートは、作者いじりだけだ!!
いや、今週も、かな。
すみません。
しかしまぁ、こうして自虐できるだけ、まだ、マシなのかもしれません。
というわけで本編をどうぞ。
◇ ◇ ◇ ◇
がれきの山を砕いて飛んだ男戦士。
クリティカルなその光景にドワーフ男、そしてヨシヲも思わず彼の名を叫んだ。
げたりげたりと笑うのは男戦士を弾き飛ばした赤い鬼。
「タワイモネエナァッ!! ガハハッ、コシキンチャクガ、キヲツケロトイウカラ、ドレクライノモノカトオモッタガ、オニノチカラノマエジャ、タダノニンゲンダ!!」
鬼の笑い声が場内にこだまする。
その背中を眺めながら、苦渋に顔を染めたのはドワーフ男であった。
自分がこのような作戦を言い出さなければ、男戦士はきっと命を落とさなかっただろう。なんという軽率な行動をとってしまったのだ――と、その鼻先が震える。
そんな彼の隣に駆けつけて、拳を握りしめたのはヨシヲだ。
「くそっ、ティト」
「なんということだ。ワシはまた、大切な仲間を救うことができなかったのか――」
「ドエルフスキーさん!!」
「くっ、こうなれば、ティトよ!! 俺もお前の死に殉じて――」
その必要はない。
聞きなれた声が城の中に木霊した。
それはついさっきまで、ドワーフ男が聞いていた声。
ヨシヲを叱咤激励し、敵の動きに逐一補足を入れていた声。
落ち着き払い、その絶命の危機にあっても、決して乱れることのなかった、冷静なる歴戦の勇士の声。
そう、男戦士の声であった。
がれきの山をかき分けて、男戦士が姿を現す。その体からは鎧がはげ落ち、手に握りしめるエルフソードのみだったが、どうして傷は一つもなかった。
これはいったいどういうことか。
回復魔法の使い手である
ドワーフ男も、ヨシヲも、なにより、彼を叩きのめした赤鬼も、その目を疑う。
ふと、男戦士が自らの脇腹に手を添えた。
それはかつて、女エルフが紫色の紋章を見た場所に違いなかった。
「赤い鬼に魅入られし者よ。鬼の力は、そのように激情に任せた暴虐のために使われるものではない」
「ナンダトォッ!?」
「この呪いは、身を焦がすほどの強い怨念は、封じ込め、鎮めねばならぬもの。鬼もまた無念であったのだ。それを理解し、その鎮魂のために呪われし我らの生はある」
「――テメェ、マサカ!!」
不自然なほどの回復能力。
そう、絶命する毒の矢で射られた時もそうであった。男戦士は、女エルフの応急処置により命を取り留めたのではない――彼はその身に宿っている、呪いの力によってその命を繋ぎ止めたのだ。
オークの傭兵団の団長と同じ。
そして目の前にいる、赤い鬼と同じ。
鬼の呪いの力によって。
ティトがかざしていたわき腹に、うっすらと紫色の紋章が浮かび上がる。それは紫の一角の鬼を模した紋様。
「――だが、この国を滅ぼすというのなら、その力を騒乱のために使う者が眼の前にいるのであれば。俺もまた、それを止めるために、この力を使おう!!」
「なんだと!?」
「するとティト、お前は――」
その場にエルフソードを突き刺すや、男戦士の体の周りに白い帯が伸び始める。
それがなんなのかはよくわからないが、彼の体に巻き付いたその白いケーブルは、あっという間にその姿を覆い隠してしまった。
そして次に響くのは、男戦士のいつもの落ち着き払った声。
「我が身に宿った鬼の名はアンガユイヌ!! 猛り狂う紫の巨鬼!! 今、鎮魂のための封印を解かん――!!」
ドエルフスキー、ヨシヲ、と、続けて男戦士が叫ぶ。
「もし、俺が暴走したときは、その時は、頼むぞ!!」
暴走した時には頼む、とは。
すなわち、自分を殺してでも止めてくれと、いう意味だろう。
その覚悟にヨシヲが震えた。
この男戦士は――どこか間の抜けたお調子者のように瞳に映っていた男はそうして、道化のように振る舞う一方で大変なものをその身に封じ込めていたのだ。
そんな男の頼みを断れる訳がない。任せてくれ、と、ヨシヲとドワーフがうなづく。
白い管に巻き付かれる中から、それを確認する男戦士。
眼だけが優しく笑ったように見えたが、それもまた、すぐに白い帯の中に消えていったのだった。
はたして、最後の男戦士の聞きなれた声が響く。
「
白い帯を引きちぎって咆哮と共に現れたのは細身の一角の鬼。頬を裂いたような大きな口を持ち、紅色に輝く炎をその目に揺らしている、紫の鬼であった。
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