第176話 どエルフさんとウホッいい男戦士

【前回のあらすじ】


正常○の反対シックス○インの反対なのだ」


 はたして、赤毛のエルフとは何者なのか。

 まぁ、そんなことはさておき、女エルフたちの夜はふけていくのであった。


「お姉さまぁっ、はぁあぁん、こんなにもお姉さまの体が近くに!!」


「やめい!! 気色の悪い声を出すな!!」


「結局、一緒に寝るんだから、モーラさんもお人よし――いえ、ドスケベですね」


◇ ◇ ◇ ◇


 翌日。

 うー、男戦士、男戦士。女エルフは男戦士を探して、革命軍のアジトがあるジューンヤマへとやってきていた。


「なんかちょっと寒気がしたけど気のせいかしら」


「そうですか、別に何も感じませんでしたけど」


「それよりこれを見て欲しいんだぞ!! 大勢の人の足跡なんだぞ!!」


「あらあらこれは、すごく、おおいですね……」


「いや、感想を言ってどうするのよ」


 もはや旬は過ぎ、知っている人も限られるネタを惜しげもなくぶっこむ、女修道士シスターとワンコ教授。そんなお約束のやり取りを交えつつ、彼女たちは山の中ほどにある、元革命軍のあじとへとたどり着いたのだった。


 門をくぐって中に入れば中央のベンチに腰掛けている男の姿がある。

 凛々しい顔をこちらにむけて、まっすぐに女エルフを見つめる、その逞しい肉体のナイスガイは、おもむろに服――水色のつなぎの前ボタンに手をかけた。


 ところで、女エルフがすかさずその頭をはたく。


「って、何をやっとるんじゃーいっ!!」


「ウホッ、いい男戦士ってやろうと思って」


「やらんでいいわそんなもん!!」


 いつものやり取りに、遅れてやって来た女修道士たちがほっとした表情をする。かくして、女王陛下の陰謀とスケベパンツにより、バラバラとなった男戦士たちは、ついに合流を果たすことができたのだった。


「まったく、俺が前ボタンに手をかけたくらいで何をそんなにあわてて。いったい何を出すと思ったんだい」


「普通、知り合いが公衆の面前でおもむろに服を脱ぎ出したら、あわてるでしょ」


 そこは簡単にはひっかからないわよ、と、女エルフ。

 いつもの流石だなどエルフさん弄りを、久しぶりだというのに着実に回避する当り、彼女がそれをどれだけ嫌がっているかがうかがえた。


 しょんぼりとした顔をして、視線を落とす男戦士。そんな彼に、女エルフは第一王女から預かっていた、彼の装備品が入った二つの袋を手渡した。


「おぉっ!! 没収されていた俺の装備品!!」


「ここまで運ぶの大変だったんだからね」


「助かるよモーラさん」


 それと、と、女エルフが修道士に視線を向ける。すぐにその視線を受けて、彼女は背負っていた男戦士の剣を手にすると、それを彼へと渡したのだった。


「はい、ティトさん」


「剣まで。よし、これで、俺も完全復活だ!!」


「おおげさねぇ、あんたなら、そこら辺に落ちてる、石ころや木の棒でも無双できるじゃないのよ」


「なにを言うんだ。慣れ親しんだ装備の方がいいに決まっているだろう。モーラさんだって、慣れないスティックより、慣れたスティックの方が気持ちいいだろう」


「なんのスティックのことよ!!」


 もちろん魔法のスティックのことである。それ以外のなにものでもない。

 しまったと女エルフが顔をしかめた。これはアレだ、例によって、いつものおきまりのパティーンという奴である。


 流石だなどエルフさん、さすがだ。と、男戦士が、いつもの台詞を言うかと思いきや――。ふと、彼は何を思ったか、その場に押し黙った。

 真剣な顔をして、剣と袋を眺める男戦士。そのまなざしに、何か足りないものでもあったのだろうか、と、不安になった矢先のことだ。


 かれはおもむろに、袋二つを剣の柄に近づけると、驚いたように目を剥いた。


「袋二つに、剣一つ、これはつまり、そういうセクハラかい、モーラさん!!」


「違う、違うわよもうっ!!」


「人がこんな大変な目にあっているというのに、自分はこんなしょうもない下ネタを仕込んでいるなんて。流石だなどエルフさん、さすがだ」


「偶然よぉっ!! というか、そっちに引っかかるんかぁい!!」


 男子三日なんちゃらというが、流石に一日では何も変わらない。案の定というかなんというか、男戦士はやはり男戦士であった。

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