第160話 ど戦士さんと動く裸婦像
【前回のあらすじ】
「女王のスケベパンツを手に入れて、この地に革命の嵐を起こすのだ」
「なんと――パンツ一つで革命を起こすとはこの男、本当の革命家だ!!」
かくして、ブルー・ディスティニー・ヨシヲの導きにより、男戦士はパンツ革命を手伝うことになったのだった。
◇ ◇ ◇ ◇
「電マ!!」
「あひぃいいいっ!!」
「んぎぃいいいっ!!」
「ほぉぉおおおっ!!」
ヨシヲの魔法により次々と倒れていく女兵士たち。そんな彼女たちを、そっと道の脇に寄せたり、はだけた肌を隠したりしながら、進むことしばらく。
ようやく男戦士たちは女王たちが暮らす、城の中の王族の居住区へたどり着いた。
ずらり並んだ扉を前に、男戦士がヨシヲの方を見る。
「女王の部屋はどれか分かっているのか」
「あぁ、大丈夫だ。あらかじめ、その辺りは調べて貰っている」
「ほう」
「国外からこの国の現状を憂いてやってきてくれた仲間がいてな、その彼が教えてくれたのだ。女王の部屋は、右側の向かって二番目――ここだ」
通路を歩き、扉の前に立つとそっとヨシヲはその扉を手前に引いた。
中を見ればどうだろうか、天蓋付きのベッドに、豪奢なテーブルセット、彫像などが並べられている。
ここに本当に、スケベ下着があるのだろうか。
「ヨシヲ」
「ブルー・ディスティニー」
「ブルー・ディスティニー・ヨシヲ。しかし、普通に考えて、女王の衣服というのはメイドなどが管理しているものではないのか。自室にあると考えるのは、少し、早計な気がするのだが」
「ティト。お前は自分の大切なエロ本を、人に託したりするのか」
「――なるほど」
ライトな内容のものは女エルフとシェアしたりはするが、結構キツメのはこっそりと自分で管理している男と戦士。ヨシヲの言わんとすることはすぐに理解した。
しかし、だとして問題はどこに隠しているかだ。
見たところ、そんなものが隠せる場所などベッドの下くらいである。
すぐさま覗き込んだ男戦士だが、そこにはスケベな下着どころか、スケベなグッズすら見当たらなかった。
「――むぅ」
「そんな分かりやすい場所に、一国の女王がスケベパンツを隠すと思うのか」
「では、どこに隠すと言うんだヨシヲ――いや、ブルー・ディスティニー・ヨシヲよ」
「まぁ待て。今、俺の中のパンツレーダーを高めているところだ」
「パンツレーダー!?」
「異世界転生の主人公というのは、女の子のパンツがどこにあるのか、そんなことは当たり前に分かるものなのだ」
当たり前ではないと思うが。
男戦士の顔に戦慄が走った。
電マといい、パンツレーダーといい、この男はなんという奴なのだと、畏敬の混じった視線がブルー・ディスティニー・ヨシヲへと注がれる。
同じ男から注がれる憧憬のまなざしに、ふっとヨシヲがニヒルに笑った。
別に自慢できる能力でもないし、そもそも、異世界転生した主人公がそんな能力を標準で持っているなど聞いたことはない。何を言っているのだろうか。
ともかく。
そんな中、ヨシヲは、壁際に置かれている石造の前へと歩み寄った。
裸婦像。一糸まとわぬその石像は、脇をあけっぴろげにして壺を抱えている。
「ここからパンツの気配――パン気を感じる」
「パン気だと――!?」
ごくり、と、男戦士が生唾を飲み込んだ。
そんな気配を感じられるとは。
「どのような職業でも、その道を究めると、その微弱な気配を感じることができるという。ブルー・ディスティニー・ヨシヲ、お前はもうその域に」
「ふっ、パンツ気くらいで驚いて困る。俺は他にも、ブラ気、モモチラ気、ウナチラ気、ソックスパウワー、ありとあらゆるセクシー気配を感じることができるのだ」
「セクシー気配を!? すごい!! なんというかもう、字面の時点で凄い!!」
「とにかくこの壺の中にブツがあるのは――!?」
けわしい顔をして、ヨシヲが像に向って剣を構える。
そに合わせるように、壺を抱えていた裸婦像が突然その関節を動かした。
台座から降り、壺を手にこちらを威嚇する裸婦像。
【モンスター 動く石像: 基本的にはゴーレムと同じ仕組み。ただし、彫刻部分は芸術家に作らせてあったりして、芸術性の高いものが多い。主に要人警護のために、ひとしれず部屋に置いておかれることが多い。なお、動くシリコン像というものも、東のオリエンタル大陸にはあると言われているが、真偽は定かではない】
「どうやら動く石像らしい」
「しかし裸婦像とはまた悪趣味な。作った奴も、作らせた奴も、相当な好き者だな」
「能書きは後だ。ティトよ、力を貸してくれるな」
「まかせろ!!」
かくして、動く裸婦像と男戦士・ヨシヲの戦闘が始まった。
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