第149話 どエルフさんとエルフ喫茶
【前回のあらすじ】
店主は男気で、奴隷として売られそうになっていた少女エルフを助けた。
身寄りのない彼女たちをどうするのかと気を揉む男戦士たち。そんな彼らに、店主はとある話を切り出したのだった。
「俺、エルフ喫茶をはじめようと思うんだ」
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「――エルフ喫茶ってあんた」
「――だぞ」
「――また、なんとも珍妙な喫茶店ですね」
「マーベラス!! ブラボー!! ファンスティック!! さすが店主だ、目の付け所が違う!! 眼のつけ処がエルフでしょ、そうでしょって感じだ!!」
困惑するパーティの女性陣をよそに、男戦士が一人拍手を男店主へと向ける。
いやぁ、それほどでも、と、照れているが――四人中三人はドン引きしている状況である。どうしてそんな反応ができるのか。心臓に毛でも生えているんじゃないだろうかと、女エルフたちは一様に顔をしかめた。
そんな彼女たちのことなどまるで視界に入っていないような感じに、男戦士と店主は話を進める。
「コンセプトは、週末に気軽に会えるエルフ、だ。森に探しに行かなくっても、冒険者ギルドに顔を出さなくっても、可愛いエルフちゃんたちと、気軽にお話ができてその姿を堪能できる。これでいこうと思う」
「最高だな。常々、俺も考えていたんだ。そういう風に気軽にエルフと触れ合えるような場所が世の中にはないものだろうかと」
「ないならば作ってしまえばいいだけのことだったんだよ、ティト」
「あぁ、目から鱗だ」
そんなもので剥がれ落ちるような鱗なら、ない方がマシではなかろうか。
まるでドブを流れる汚物でも見るような目をパーティーリーダーと、馴染みの店の親父に浴びせかけて、女エルフは押し黙った。
そんな心境を察して、
「まぁ、コンセプトはともかくとして、あの娘たちに働ける場が提供されるというのは、悪い話ではありませんね」
「客商売だと、対人関係のスキルも身に付けられるから、お店をやめてもきっと上手く生きていけるんだぞ」
「で、それで私たちに頼みっていうのはなんなのよ。まさか、そこで働けって言うんじゃないでしょうね。冗談じゃないわよ、そんなのお断りなんだから」
はて、と、男戦士と店主が同じように首を傾げる。
その仕草に女エルフが苛立ったのは言うまでもなかろう。
「なにを言ってるんだ、この
「モーラさんはもう少女って年頃じゃないでしょ。
「悪かったな
「ほらまた、そうやって、気に入らないことがあるとすぐ怒鳴るんだから」
「いやぁね、もう更年期障害始まってるんじゃないの」
「どエルフさん困りますぅ」
「どエルフさん困りますぅ。いくら外見上見分けがつかないからって、少女って名乗っていいのは二百歳前半までだよね」
「だよねぇ」
きゃっきゃ、きゃっきゃとはしゃぐ男戦士と店主。
エルフというと、成長してから死ぬるまで、若々しく美しい姿を保つということで知られた種族だ。一般の人間の目には、彼らが本当は何歳かなんてことは、まったく分からないものである。
行きつけの
しかし、この目の肥えたエルフ好き二人には分かるのだ。
そのエルフの姿を見ただけで、どれだけお歳を召しているのか、彼らには手に取るように判別できてしまうのだ。
長年、エルフを見てきたからこそ分かる感覚というものであである。
流石のエルフスキーという他ない。
「――お前らくらいしか分かるような、奴はおらんだろうが、そんなもん」
背中に黒いオーラを女エルフが背負う。
急いで浄化の魔法をかける女修道士であったが、それよりも早く、女エルフは男戦士と店主に向って、攻撃魔法を繰り出したのだった。
「あーっ、困ります、どエルフさま困ります、困ります、うわぁーっ!!」
「ダメだモーラさん!! どエルフ専門店じゃないんだから、そんな激しいプレイしたら――風営法にひっかかって、オウフッ!!」
「エルフの社会的地位を脅かしてる分際で、何が風営法じゃ!! 今日という今日は許さん、尻の穴から直接火炎魔法ぶち込んでやる!!」
そんなことを言うから働いてはいけないのでは。
女修道士とワンコ教授の疑問の視線を受けながら、それでも、女エルフは男戦士と店主を追いかけるのだった。
「待てコラ!!
「え、気にしてたのか、モーラさん!? 俺はてっきり、もうそういうのはあきらめたのかと!?」
「しばき倒すぞ、このボケティト、コラぁッ!! 誰のせいでこんなことになってると思って――あぁもうっ!!」
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