第90話 どエルフさんと増援
【前回のあらすじ】
女エルフ、熱くBLを語る。
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「だいたいね、そういう、男と男がいちゃいちゃしてたら、それでBLでしょっていう、甘っちょろい設定が嫌なのよ。BLにはBLの様式美というのがあって、ちゃんとしたキャラ設定とシチュエーションが大事なの。そんな出会って二秒で即みたいなのでハァハァできるようなもんじゃないのよ。男と女のモノの捉え方は違うの。そこんところちゃんと理解してよね」
「はい、どうも、すみませんでした」
「モーラさんの言う通りでございます」
女エルフの前に正座して、己の浅ましさを嘆く男戦士とドワーフ。
どうしてこんなことになったのだろうか。冷静に、なってそんなことを考えているのは、一歩離れたところで、三人のやり取りを見守っている女修道士だけだった。
「わかった。二度と私の目の前で、中途半端なBLネタやってみなさい。骨まで残さず爆発魔法で粉々にするわよ」
「わかりました」
「はい。じゃぁ、この話は、おしまい。本題に戻るわよ――」
って、なにしてたんだっけ、と、女エルフ。
ふと三人はお互いの顔を見合わせた。
ぼんやりとした視線を向けつつ、記憶を紐解く三人。
そんな中で、ふと男戦士とドワーフが目を合わせた。するとどうだろう、ドワーフの野太い指が、男戦士の剣へと伸びる。
その指先を追って、男戦士が剣を見ると、はっと、何かに気が付いた顔をした。
そうだそうだ、俺、これを抜いてお前に戦いを挑もうとしていたんだった、といわんばかりの、感じで笑って剣を構える男戦士。
おいおい忘れるなよ、と、指をさしながらドワーフ男が笑ってみせた。
そうしてお互い立ち上がると、ゆっくりと距離を取って――。
「さぁあぁ!! 勝負だ、エルフさらいの頭領ドエルフスキー!!」
「ぐぬぬ貴様!! まさかエルフに化けていたとは!! このドエルフスキーとしたことがまったく不覚であったわ!!」
「出てきてからここまで不覚しかないわよ、あんたも、こっちの馬鹿戦士も」
辛辣なセリフを吐いて呆れる女エルフ。
その前で、男戦士とドワーフのにらみ合いが始まった。
「モーラ!! 僕たちも加勢するんだぞ!!」
「戦いましょうモーラさん!!」
すかさず駆け付けた
「おっと、俺たちを忘れてもらったら困るんだにぃ」
「んがぁ!!」
いったい今までどこにいたのか、ドエルフスキーの部下たちが姿を現した。
そして、その背後には、無数の緑色をした小さな鬼たちの姿が――。
「うそ、ゴブリンじゃない、あれ」
「かなりの数ですね」
「だぞ」
【モンスター ゴブリン:雑魚モンスターの代表格。最低限の知性しか持ち合わせていないが、それだけに下手に自分の利益を求めて行動する人間より労働力として使いやすい、いわば上司や経営陣ウケのよいモンスターである。安定した収入と家庭を築き、人間よりも人間的な生活を営んでいるゴブリンも少なからずいるとかいないとか。あぁ、俺もゴブリンみたいに何も考えずに生きたいの略「ゴブリたい」は、異世界流行語大賞にもなった】
「ドエルフスキー組をなめてもらったら困るにぃ!! みんな、やっちまうんだにぃ!!」
「んがぁ!! いくんだなァっ!!」
わぁ、と、一斉に男戦士たちに向かってかけてくる、ダークエルフ、ハーフオーク、そしてゴブリンの群れ。
この数を前にして戦うのは難しい。
万事休すか、そう女エルフが思った時だ。
「オーラソード!!」
「暗黒剣!!」
ダークエルフとハーフオークを、一閃のもとに切り捨てて、2つの影が女エルフたちの前へと姿を現した。
緑色のゴブリンたちが立ちすくむ中で、ふっとニヒルに笑うのは、その闇に今にも溶けこんでいきそうな暗黒の鎧を着た男。
そして、そんな彼に背中を預ける、まだ幼さの残る顔立ちの少年だった。
「ふっ、安心しろ柄による当身だ」
「止めに入るにはちょうどいいタイミングみたいだったな。おっさん、助けにきてやったぜ!!」
「シュラト!! アレックス!!」
ドワーフと対峙しながらも、駆け付けてくれた仲間に男戦士が声を上げる。
さぁ、雑魚は俺たちに任せろ、と、暗黒騎士たちがゴブリンの群れに切りかかる中、男戦士の後ろに女エルフたちが集まったのだった。
「さぁ、覚悟しなさい、この破廉恥エルフさらい!!」
「悪行の報い、天の神に代わって我々が下してさしあげましょう!!」
「無理やりさらったらエルフがかわいそうなんだぞ!!」
「さぁ、ドエルフスキー!! いざ、尋常に勝負だ!!」
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