第41話 どエルフさんとスキル
「やったじゃない、ティト!!」
「見事な戦いぶりだったんだぞ!! 流石なんだぞ!!」
ミノタウロスの額から剣を引き抜いて、息を整えている男戦士に仲間たちが駆け寄る。
頬に飛んだ返り血を胸に入れていた手拭いでふき取り、剣を濡らした魔物の血を払って飛ばすと、彼はそれを元の鞘へと納めた。
ふぅ、と、息を吐いた彼に、女エルフが駆け寄る。
「流石ねティト。なんといっても歴戦の冒険者」
「いや、皆のアシストがあったからこそ勝てたのだ。みんな、よくやってくれた、ナイスサポートだ」
「謙遜するなよ。さっきの戦いは、君の奮戦あってのことだ」
「そうよ、それを言ったら、ティトが前に出て戦ってくれるからこそ、私たちも動けたのよ」
やいのやいのと、お互いを褒めちぎる男戦士のパーティ。
褒めた内容はともかく、彼らが正しく連携できたからの勝利ということには揺るぎはない。
男戦士の肩をたたく女エルフ。
ふと、その時、男戦士が何かに気が付いた。
「そういえば、コーネリアさんの姿が見当たらないが」
「言われてみればそうね。どうしたのかしら」
「さっきの戦いは、彼女の作戦――あの目くらましがあってこそ上首尾に終わった。まずは例を言いたいのだが」
「というか、あれ、どうやったのかしらね。魔法かしら」
「あれは、知らない方が、いいんだぞ」
そういったのはワンコ教授。
どうしたことか、さきほどまで勝利に喜んでいたその顔は、いつの間にか暗くよどんでいるではないか。
どうしたんだろうか、と、男戦士と女エルフが顔を合わせた。
と、ちょうどそんなところに、女修道士が合流する。
「やりましたねティトさん。見事な剣さばきでした」
「あぁ、コーネリアさん」
「コーネリア。ちょうどいいところに。さっきの光について話していたところなのよ。私たち、よく見ていなくって」
「それは私からちゃんと説明いたしましょう」
まずはその前に、と、女修道士はミノタウロスとモグラヤモリの死骸に魂の浄化を祈った。
そしてそれから仲間たちの方を向くと、言いにくいのですが、と、彼女にしては珍しく歯切れの悪い言葉を発した。
「さっきのはその、あまりうまく説明できるものではないのです」
「説明できるものではない? 魔法か何かじゃないの?」
「いえ、どちらかというとスキル、もしくは呪い、あるいは特徴と言ってしまうべきなのかもしれません」
「要領を得ないな」
実際に見てもらった方が早いかもしれません。
そう言って、なぜだか女修道士は自らのたわわに実ったものがついている胸元に手をかけた。
何をするんだ、と、男戦士が問うよりも早く、彼女はそれを引きずり下ろす。
なんということだろうか、うら若き乙女の乳房がこんなところで露わに――そう思った時だ。
「うわぁっ!?」
「まっ、まぶしい!?」
まるで彼女の体を隠すように、どこからともなく差し込んでくる怪光線。
それにより、まったく彼女の乳房は、すっかりと光の中へとつつみこまれてしまって、見えなくなってしまった。
いよいよ輝きを増すその光に、思わず男戦士と女戦士が顔をそらす。
わかっていただけたでしょうか、そう告げて、女修道士ははだけていた胸元をもとにもどしたのだった。
「昔からこうなんですよ。どうしてか、胸をはだけたり、お尻を出したり、お股を開いたりすると、どこからともなくそれを隠す現象が発生するんです」
「なんと――」
「ありがたいんだか迷惑なんだか分からないスキル」
「私はこのスキルをさして【ぎりぎりのところで救ってくれるモザイク】略して【ギリモザ】と呼んでいます」
「なんか、その響きは、どうしてだろう、そこはかとなくエロい感じが」
「なんて際どくエキゾチックに男心をくすぐられるスキルだろう!! 素晴らしい!!」
【スキル『ギリモザ』:コーネリアがお子様は見ちゃいけない格好をしたときに、天から差し伸べられるご加護のことだよ。ありがたいことだね!!】
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