第26話 どエルフさんとオアシス

「あ、見てみて!! ティト!! あんなところにオアシスが!!」

「おぉ、本当だ」

「木陰もありますし、一休みできそうですね」


 エメラルドの水をたたえて輝く小さな湖。

 青く茂ったブッシュに、高く伸びたヤシの木。


 まさしく絵にかいたようなオアシスの登場。

 荷物を背中に砂漠を進んでいた男戦士ご一行は、その光景ににわかに色めき立った。


 いの一番に湖へと駆け込んだのはエルフ娘。

 彼女は背中の荷物と木の枝で編まれた靴を脱ぎ捨てて放り出すと、その湖へと飛び込んだ。


 ざぶり、と、涼し気な音。

 エメラルドの湖から跳ねた飛沫が宝石のように輝く。


 そんな中、ぷはぁ、と、湖の中から出てきたエルフ娘は、うれしそうに麦のようなやさしい色合いをした金髪を、やさしく撫でたのだった。


「ほこりっぽくて参ってたのよね。はぁ、生き返るわ」

「モーラさん、随分とまた大胆なことをされますね」

「なによ今更。さんざんこれまで、どエルフどエルフ言われておいて、濡れてスケスケになったくらいで」


 どうってことないわ、と、声の方を振り返ったエルフ。

 しかし、その視界には、男戦士と女修道士シスターに加えて、見知らぬおっさんたちの顔がいくつか加わっていた。


 若い娘の濡れてスケスケな姿に、おぉ、と、顔をほころばせるおっさんたち。


「オアシスはキャラバンの休憩地。砂漠を行く人たちでにぎわう場所だというのに、なんという大胆不敵!! 流石だなどエルフさん、さすがだ!!」

「さすがです」


「えっ、あっ、や――」


 顔を真っ赤にしてエルフ娘が湖から飛び出したのは、言うまでもなかった。

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