第6話 どエルフさんと夜のお仕事
ふらりふらりと千鳥足。
エルフ娘が、自分より大きい戦士男を肩に担いで夜の街を歩いている。
「なんでエール一杯飲んだだけでへべれけなのよ!!」
「戦士は薬も酒もよく効くようにできているんだ――うぇっぷ」
「うひゃぁ汚い!!」
げろげろと酒場で食ったものを吐き出す戦士。
そんな彼を肩に担いで、エルフ女は恨めしそうに眉間を寄せた。
「あらあら、大変そうね。手伝おうかしら?」
そう言って、話しかけてきたのは、明らかに夜鷹と思しき女。
深いローブに顔を隠して、リュートを手にした彼女が、のっそりと戦士の顔を覗き込む。
それを、ぎろり、鋭い目つきで咎めるエルフ娘。
「結構です。間に合ってます。ほか当たってください」
「やだもう純粋に親切心から言ってるのに。ふふっ、怖い彼女さんね」
そんなんじゃないですから、と、余計な怒りをぶつけるエルフ。
しかし、そんな彼女に優しく微笑んで、夜鷹はにぎやかな街の光を避けるように、路地裏へと消えていった。
そんな彼女の姿に、もの悲しげな顔をするエルフ娘。
ふと、そんな顔を間近で見ていた戦士が、何かを思い出したような顔をした。
「そういえば、聞いたことがある。エルフの村落では、まれに山で採れる作物が少ないとき、口減らしに何人かの少女エルフを人里に――」
「迷信よ」
そう言って、エルフの娘は、頬を湿らせていたしずくを無言で拭った。
彼女の肩をやさしく叩く戦士の男。
「もう大丈夫だ。すまない、俺が不甲斐ないばっかりに、嫌な想いをさせたな」
「ほんと、しっかりしてよね。貴方は私の大切なパートナーなんだから」
分かっているよ、と、エルフ娘の肩へと手を回す戦士。
いつの間にか、寄りかかる対象が入れ替わっていることに、二人は気づいていた。
気づいていたが、気づかない振りをした。
そういう夜もある。
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