第2話 どエルフさんとご宿泊

「そろそろ日が暮れるな。今日の移動はここまでか」

「そうね。はぁ、疲れた」


 こきりこきりと肩を鳴らし、首を左右に振るエルフ娘。

 そんな彼女を心配そうに見つめる男戦士。


「今日はちゃんとした宿をとろう。長旅で疲れただろう」

「え? いいわよ、そんな」

「ここ最近、野宿続きでだいぶ疲れてるんじゃないか?」

「そんなことないわ。ほら、エルフってば森ぐらしだからそういうの慣れてるし」


 しかし、と、食い下がる男戦士。


 心配してくれるのはありがたい。

 だが、路銀を考えると贅沢はできない、と、躊躇するエルフ娘。


 そして、一言。


「それに野宿もいいものよ、ほら、開放的だし」

「開放!?」


 戦士の顔がこわばる。

 同時に、エルフ娘の顔も、あ、これ、なんか余計なこと言ったなと、固まった。


「モーラさん、あんた、いったい、何を開放するつもりなんだ」

「いや、開放じゃなくて、開放的――」


「まさか、俺が寝静まった後、産まれたままの姿で野に出て、淫靡なるエルフの野生を開放していたというのか!!」

「してない!! してないから!!」

「本能のまま、月下に踊るその姿は、まさしく森の妖精」

「男エルフだったら大惨事じゃない!!」


「女エルフでも大惨事だよ!! なんだその、私は女エルフだから大丈夫みたいな、口ぶり――。やっぱり、やってるんだなモーラさん!!」


 えぇ、なにその切り返し。

 もはや何を言っても無意味。


 諦めた感じで、エルフ娘はため息を吐いた。


「大自然を肌で感じる野生の一族。流石だなどエルフさん、さすがだ」

「そんなんで感じられるなら苦労しないわよ、もう!!」

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