第1話「風の電話」 ※これはエッセイ
ゆうべ番組を見て以来「風の電話」が、なぜ、あんなにうまく機能しているのか、ずっと引っ掛かっていたのだが、
さっき、ようやく腑に落ちた。
「風の電話」を利用していた人たちは 隣人や周囲を気遣って、口には出せない苦しい想いをかかえている。けれど、かかえ続けるのも苦しくて、想いを吐き出してしまいたい。
それなら、紙にしたためてもいいのだが、「声」に出して「物理的に」吐き出してしまいたいのだと思う。
だが、手近な「物」に語りかければ、ひとり相撲の虚しさに陥る。つまり、想いを「物」に拒絶されてしまう。
そうかといって、他人との「対面」で、全てをさらけ出すのは難しい。
そこで、電話という手段。
だが、通常の電話では、電話番号を押すことができない。
機械的な待機音に「どこへかけるの?」と急かされる。
現実の壁に阻まれて、とった受話器を戻さざるを得ない。
電源の切れた携帯は「使えない」状態で、これに話しかけることは「本来の使い方に反する」それは誰でも知っている。つまり、これも「物」を相手にするのと同じ。
けれど「風の電話」なら。
線は確かにつながっていない。それについては「電源を切った携帯」と同じ。
だが、それとは決定的に違うのは、「風の電話」が「物」ではないのは、初めから、それで万全の状態であり「そうした用途で設置された」電話ボックスだということだ。ゆえに、その状態で使用するのは完全に正しい。
ならば、本来の使い方に則り、なんの障害もなく「話し出す」ことができる。
これを考えた人がすごいのは、ここだ。
取り除いたものは「拒絶」の壁だ。
そして、つながらないのが「わかっているから」さらけ出せる本音もある。
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■「風の電話」とは……以下NHKのサイトより転載
http://www.nhk.or.jp/docudocu/program/46/2586774/
岩手県大槌町の海を見下ろす丘に置かれた「風の電話」
震災で会えなくなった家族や友人ともう一度言葉を交わしたいと願う人々がここを訪ね、線のつながっていない受話器を通じて「会話」をする。
東日本大震災から5年。復興は進んでも、大切な人を失ったことで前に進めずにいる人はまだ多くいる。
口に出せない思いを抱えた人たちにとって風の電話は大切な支えになっている。
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