幕府制度の制定
信長の引退宣言から1年。日ノ本は事もなく平穏であった。信忠は家臣団を再編し、自身直属の旗本を任命、禄は小身であるが、権限をもたせ幕府の運営に携わった。権大きいものは禄少なしである。中央地域は連枝衆と譜代で固め、地方には大身の大名を置いて統轄させる。統轄を担う大名家には将軍家との婚姻を結ばせ、結びつきを強化した。
摂津、山城、近江、美濃、尾張は織田の連枝衆が入る。三河、遠江には徳川信康、駿河には徳川秀康、そして関東公方として徳川家康が武蔵に置かれた。上野には柴田勝長。甲斐に武田信勝。信濃には真田、武藤一族が入る。
東北は羽州探題である最上家がそのまま統括することとなった。と言っても領主が根こそぎ改易された後であり、幕府代官の補助が主な任である。そして北方探題として伊達政宗が置かれている。旧東北の領主も彼の下についているが、その軍事力の大半が支配下にいれたアイヌであった。彼らは狩猟生活が長く、弓の腕に優れる。また鉄砲の技術の吸収も非常に早かった。沿海州にも拠点を持ち、直接女真族とも隣接している。ある意味最前線である。やりがいのある任務を任せてくれたことと、少年時代にみた織田家の殷賑が心に大きく残っており、織田家に取って代わろうという野心はその時根こそぎへし折られていたのである。
越後は上杉景勝。越中に佐々成政。加賀、能登には前田家が入った。佐々成政には一女がいたが、前田利常が養子として入ることが決まった。越前には浅井信政(万寿丸)が入っている。ちなみに長政、お市夫妻は安土に隠居料を与えられ、娘たちと暮らしている。仲睦まじく、屋敷詰めの小姓が血の涙を流しながら走り去る姿が見受けられるとかなんとか。
大和は松永弾正が、伊賀には先日の功績で筒井定次が入った。順慶は病によって隠居している。伊勢は北畠信雄が治める。
丹波は明智光慶が治めており、畿内の軍権を統括する管領職を与えられ改めて幕府の重臣となった。石山の西を守るは播州羽柴家である。秀吉はすでに引退し、次代の長吉が治めている。軍事は黒田官兵衛が統轄し、内政は石田正澄が見る。そして東播磨、三木城に別所長治が入っていた。彼は秀吉の馬廻として転戦し、多くの功を上げ、ついに三木城の主に返り咲いた。摂津北部につながる街道と、大阪湾の交通を見張る重職である。海路は淡路に仙石秀久が入り、石山の海側の出城としての役割を果たしている。
中国中央部は宇喜多家が備前、備中を治めていた。織田六郎信秀の縁戚として中国路に大きな勢力を持つ。直家はすでになく、秀家の時代となっていた。織田家への忠義は厚く、尾張織田家との交流は後世まで続いた。備後、安芸、石見は吉川、小早川の両家が治める。周防と長門は毛利家だが輝元は放逐されているため、急きょ穂井田家を継いだ元清が復姓していた。出雲、美作は尼子勝久に与えられている。
四国は長宗我部信親が管領として任じられた。讃岐には羽柴秀勝、阿波に丹羽長重が封じられている。もともと山が多く、平地が少ない土地柄もあって、海上貿易に活路を見出していた。島津家と協力して琉球、ルソンを中継点に交易船を出している、石山に荷揚げされる南海の産物は幕府を潤した。
九州は肥前に竜造寺、筑前に立花、肥後に明智秀満、筑後に黒田長政、豊前、豊後、日向北部に織田信澄(九州管領)薩摩、大隅、日向南部に島津である。
幕府の役職として、大老に徳川家康、上杉景勝、伊達政宗、島津忠恒、羽柴長吉を任じた。これは政策などを決定し、大まかな方向性を決める役職であり、実務は奉行衆が行う。また各国の大名は石山に交代で詰めることを義務付けた。これは合議にて政治を行うことを宣言し、中央と地方は平等であると位置づけたのである。中央が地方を食いつぶすのであれば再び戦が起きる。そもそも一揆や戦は限られた食料の奪い合いから起きていた。
それゆえに、地方の実情を中央で把握し、上がってくる報告の実態を幕府奉行衆で確認する。そのうえで現地の投資や開発を決める。街道の整備や開墾、港湾の整備など多岐にわたる。ある程度の生活基盤ができたところは、娯楽施設を作り、更なる生活の向上を図った。
武術を奨励し、身分制度もある程度流動的にすることで、才知ある若者が地位を掴むこともできた。また学舎の建設も同時に進め、卒業者は商家や役所へのあっせんも行う。これにより、人材の確保を行う。
織田幕府の政策に寄り、日ノ本は急速に安定し、発展を始めたのであった。
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