シン・フロ

ポージィ

全国高校シンフロナイスデース競技大会

「さぁやってまいりました、全国高校シンフロナイスデース競技大会、いよいよ最終日です。昨日行われました団体戦、今年も素晴らしい競技が繰り広げられました。今日の個人戦、果たして誰が優勝を勝ち取るのか―――解説の七里田さん、今日の個人戦ですが、昨日までの競技を振り返って気になる選手はいましたか?」


「そうですねぇ・・・やはりOOITA鉄輪高校の、地獄原くんは凄いですよね。あんな熱い演技、私には絶対にできませんよ。彼はいいところまで行くんじゃないでしょうか?」


「なるほど、熱い演技ですか・・・やはりシンフロといえば熱い演技が王道ですからね。各高校ともに非常に力を入れている所です。七里田さん、他にも熱い演技に定評がある高校といいますと―――」


「関東勢だとやはりGUNMA草津高校が本命でしょう。伝統の秘技YUMOMIで高得点を叩き出しますからね。しかし演技の熱さだけなら、東北や東海地区も負けてはいませんよ!」


「さぁ選手一同に揃いまして、いよいよ競技二日目―――個人戦の開始です。」


*  *  *


中 略


*  *  *


「さぁ競技は終盤、各高校の選手とも素晴らしい演技を展開しております。ここまでどうですか?解説の七里田さん。」


「驚きましたねぇ、今年もOOITA一強になるかと思ってたんですが、意外な展開でした。」


「そうですねー、団体での数で魅せる演技が得意な高校でも、個人レベルでの演技となると、個々の表現力の差が出ますからね。―――さて、次の競技が始まります。」


「えっと―――HOKKAIDO国立函館高校の北美原くんですね。」


「七里田さん―――国立函館と言いますと、主将の湯川くんが直ぐにイメージされるわけですが、北美原くんの演技はあまり注目されて無かったですかね?」


「そうですねぇ・・・国立函館は団体だと、各選手とも足並みがイマイチ揃って無かったんですよねぇ・・・。」


「さぁ、競技が始まります。」


*  *  *


ガチャコン


「まず風呂桶ですね、シャンプー、リンス、垢すり、王道のお風呂グッズを持っての入館です。」


「小銭を払って、番台のお婆さんにさりげなく挨拶しましたね。これは評価ポイントです。―――さぁ今、脱衣を終えて、入湯します。」


ガラガラガラ―――ざばー!ざばー!

ヒタッヒタッ―――


「控えめにかけ湯をしましたねぇ、その後すぐに洗い場に座りました。これはどういった意図なんでしょうか?」


「多分、直ぐに身体を洗うからだと思います。かけ湯は念入りにしなくても、浴場の熱気と洗い場のシャワーで身体を慣らしていく作戦ですね。無駄のない戦法ですよ。」


ジャー―――ゴシゴシゴシ


「ホントですね、身体を洗い始めました。」


「非常に生活感のある演技です。強豪校の様な派手さはないですが、堅実な日常表現は意外に難易度が高いですからね。高評価です。」


ジャバジャバジャバ、バサー!


「おっと、頭まで先に洗ってしまいました。これはどうなんですか?」


「―――最近は公衆衛生面での評価も得点が入るようになってますから、洗髪自体は悪くはないと思います。」


ガララッ


「おっと、いきなり露天に出ましたね。身体から湯気が出ています。」


「本当は先に内湯で温まるのがスジなんですが、彼は先に洗い場で充分シャワーを浴びてますからね、気温差への対処は出来ています。」


チャポチャポ・・・


「おっと、ここで慎重に浴槽の湯でかけ湯です。えっと、ここの露天は―――44℃!?44℃だそうです。いやはや、高めに設定してきました、北美原選手。」


「さぁ、ここから熱い演技が出ますよ。」


ザバァー!!


「入った――――!」


「うわーこれは凄い!首から下が真っ赤ですね、七里田さん!」


「表情見てください、凄いですよ!恍惚というか、苦悶というか―――芸術点高いですよ、これは!」


「見る見るうちに身体が赤くなっていきますね。」


ザバー!


「ここで一旦湯船から出ます。外はHOKKAIDOらしく、雪がちらついています。さて次は―――おっとぉ、これは。」


「雪が降る中の水風呂です。いやはや驚いた、攻めますねぇ彼は。」


ザブンッ!


「躊躇なく行きましたねぇ、これはどう評価されますか?」


「これは普段から入り慣れてますね。この外気温での水風呂は場数を踏んだプロでも多少は躊躇しますからねぇ。相当練習してますよ、これは。」


ザバッ


「おっと、流石に寒かったのか、出るのも早かったですね。」


「いや、これはサウナの客に配慮したんでしょう。占領は減点対象ですから。」


「なるほど―――」


*  *  *


中略


*  *  *


「結局あれから1回もサウナに入らず、熱い浴槽と水風呂を三往復くらいしてましたね。」


「彼は本当に高校生ですか?あれだけ内湯からの連続水風呂キメれるのはプロでもそうはいませんよ?」


「そして脱衣所に戻りましたが―――」


ペチッペチッ


「おっとぉ!ここでタオルヌンチャクです!タオルで全身をくまなくペチペチしていきます。」


「タオルヌンチャクはシンフロの中でも特に高難易度の妙技ですからね。最近ではベテランでもできる方少ないですよ?いやはや、私も久々に見ました。」


フキフキ、ガサガサ―――チャリン、ガチャコン。


「着衣が終わり、演技終了の間際で今度は牛乳をブッ込んできました北美原選手!」


「ここは様式美に倣ってますね。」


「おっと?しかもこれは開ける前に念入りに振ってますね。」


「余すことなく乳脂肪分を飲み干す小技ですね。ほら見てください!」


キュポンッ―――ペロリ。


「出ましたねぇ!フタの裏ナメ!乳脂肪分を微塵も残さぬという執念が感じられる演技です!そして―――」


ゴキュッ!ゴキュッ!ゴキュッ!


「あぁー!やっぱり出た―――!腰に手!」


*  *  *


「さぁ全ての競技を終えて、いよいよ最優秀選手の発表です。」


―――第26回・全国高校シンフロナイスデース競技大会、最優秀選手は―――



♨ HERE COMES A NEW CHALLENGER !!♨

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

シン・フロ ポージィ @sticknumber31

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ