413 浪漫之友 17号(同人誌)

2009.04/天狼プロダクション

<電子書籍> 無

【評】 ―


● 先住者はみんなSM好きなのか……


 栗本薫個人同人誌第十七号。

『ヴァンパイア・サーガvol.7 儀式の部屋』収録。


 アルカード伯爵はサミュエル・ヘルシングを呼び出し、従者Xと青姦した罪に対して仕置をせねばならぬと告げる。

「セックスするほど良いって教義のセックス教団なのに教祖のお気に入りとはしちゃいかんのかい」と思いながらもおとなしく仕置を受けてれるサミュエル。彼への仕置は従者Xによる鞭打ちと焼きごてプレイだった。だが、彼への仕置は従者Xへの仕置の前フリでしかなかった――


 この時期の薫は寝取られて興奮する展開にハマりすぎかな!?

 とりあえずタイトルの数字とストーリーの順番がぐちゃぐちゃ過ぎて混乱しますね……。『庭園』→『ヴァンパイア・ワルツ』→今作→『再び庭園にて』の順番なのかな? まあストーリーっていっても、ネトリネトラレに興奮するカップルがよそのホモつれこんでるだけの話なので、多少混乱しても問題ないと云えばないんですけどね……。

 

 さておき、基本的にはずっとSMしてるだけの話なので感想に困る。メインキャラの伯爵やサミュエルは巨根なのに、お仕置きとして一番嫌がる相手にやらせるといって連れてきた田舎のホモ警官は粗チンなのが、チンコカースト制度が制定されている栗本薫ワールドらしいと思うくらいで、本当にいつものうわごとSMをやっているとしか……。性癖だからね……同人誌だし、特殊性癖を攻めてもしょうがないよね……。でもNTR属性持ちとしてはこういうNTRためだけのプレイみたいなのは興奮しないわね……やっぱり状況的に仕方のないNTRの方がずっといいと思うんですよ……ただの見せつけプレイ好きには用がないんですよ……!


 出だしでいきなり「ダルカード」と誤字られているこのアルカード伯爵、正確には吸血鬼ではなく、他者と精神を融合したり分け与えたりすることのできる精神生命体となっており、人類に火の使い方を教えたりしたことのある自称「神」である。この設定は、そう、『魔界水滸伝』の先住者だ。

 それが長い生のなかではじめて一人の人間に執着をおぼえ、そのことで神としての精神の均衡をうしないつつあるというのが、どうやらこのシリーズのメインストーリーらしい。ずっとしゃぶったりSMしてるばっかりだったけどようやくなにがしたいのかわかったよ……。あれでしょ……このあとこのジルベール二号みたいな従者Xが死んだと思ったら首なし死体になってその辺うろついてたと思ったら正体は生命の根源である暗黒惑星ユゴスなんでしょ……知ってる知ってる……九十年代半ばから多一郎×涼に興味なくしたと思ったら、ほぼおんなじことこっちでやってたからなんだね……(このシリーズは96年執筆)。そりゃ天草四郎編も自然消滅しますよね……。

 ちなみにこのアルカード伯爵、『六道ヶ辻』シリーズに強引に登場するというか、別のシリーズの名前を借りて実質この『ヴァンパイア・サーガ』シリーズを商業出版するという鬼畜行為をしたことはすでに触れたが、どうやらグイン・サーガの108巻あたりに出てきたコングラス伯爵も同一人物のようだ。晩年の薫、めっちゃこのシリーズ商業出版したかったんだね……ナマモノ同人だから本人に云わないでねとか云いながら、チラチラしすぎでしょ……。


 正直、多一郎の涼おっかけ行為はストーリー的にはいかがなものかと思うし「涼が女のほうが展開全部自然じゃねえかよ」とは思ったものの、蛇の性として説明もされていたためか多一郎の恋情自体をあまり気持ち悪いとは思わなかったんだが、この伯爵はどう見ても非モテストーカーなんだよなあ……。まあ、栗本薫の文章はただでさえ中学生の言い訳感が一般的な作家より強かったのが、96年辺りから急速に悪化して、その言い訳感にハマっていた自分ですらついていけなくなりつつあったから、そのせいなんだろうけど……。時期的に絶対に『グイン・サーガ 炎の群像』で大借金を背負ったせいだよなあ……。


 まあ、そんなわけで、先住者がセックス教団作ってSM寝取られプレイを長々と楽しむだけの話ですから、そういう人が楽しむ分には良いんじゃないですかね……。ちょっとこの辺のロマトモはエロ同人らしくストーリーがなにもなくひたすらSMプレイしているだけのが多くてレビューのしようがないですね……別にSMとしても目新しいプレイ内容じゃないしね……。

 ともあれ、グダグダとストーリーらしいものがないままずっと続いていたこの『ヴァンパイア・サーガ』、次の800枚くらいある長編で作者的に書きたいことはやりきったそうなので、今度こそSM以外のストーリーがあることを期待しながら読んでみますね……(多分ない)

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