394 浪漫之友 12号(同人誌)

2008.01/天狼プロダクション

<電子書籍> 無

【評】 ―



● メス堕ち希望大公アルド・ナリス


 栗本薫個人同人誌第十二号。

『ヴァンパイア・サーガvol.2 扉をあけて』『ヴァンパイア・サーガvol.3 キリエ』『マルガ・サーガ6 湖畔日記 前編』収録。

 手術のため緊急入院することになり、連載は中断し過去作品のお蔵出しとなっている。


『ヴァンパイア・サーガvol.2 扉をあけて』

 田舎の警察にあらわれた本庁の特別捜査官アル・ロックスター。彼とともに黒薔薇館という古い屋敷を訪れる事になったヒラ刑事は、なにか奇妙な予感を感じていた――


 ホモのヒラ刑事が、ホモ(じゃないということになっているけどvol.1でチンコしゃぶられていた明らかなホモ)の特別捜査官と伯爵たちのいるシャトーを訪ねて、招き入れられるだけの話。

 ただこのヒラ刑事が自覚症状のあるホモで、しかもマザコンでショタコンでマゾでしかし噂が一瞬で駆け回るど田舎ではカミングアウトする勇気のない自分は一一生ホモセックスする機会なんて訪れず、母親に見つからないように通販で買ったゲイポルノだけが世界のすべて、とさばけた一人称で自嘲しているのが、意外と良かった。ジルベールもどきを見た瞬間ちんちんが立ってしまうストレートな頭の悪さも嫌いじゃないぜ……?

 でもすごい短い話なのでこれだけ読まされてもな……という気分しかない。この文体で本編が続くならちょっと読みたい気もするけど、ちがうんだろうし、このキャラの一人称で進んでいてもホモセックスがはじまるとなんかキャラが変わってしまうんだろうな……。

 


『ヴァンパイア・サーガvol.3 キリエ』

 なんか伯爵に融合されたらしい女同士が乳繰り合っている会話だけの短い話。

 おつぱいもんだりクリをいじったりしてるだけの話なので、やはりこれだけ読まされても反応に困る。



『マルガ・サーガ6 湖畔日記 前編』

 ヴァレリウスに抱かれた後のナリスは、己のこれまでの心のありようを回想する。それは劣等感と恐怖に苛まれ、擬態に必死だった惨めな生であった――


 ナリス版『仮面の告白』である。

 常に自分の男性性に自信がなく、美しい外見も高貴な血筋も誇りではなく劣等感でしかなく、男として扱われないことに屈辱と恐怖を感じていたというナリスの内心は、もしかしないでも意外と本編理解に重要な部分なのではなかろうか?

 ナリスのホモ化というかお姫様化自体は全然納得いっていないのだが、男である自信がなく、それゆえに犯されて女のように扱われることを、犯されることそれ自体よりも結果として自分がそれに馴染んでしまうことを恐れていた、という積年の思いと、にもかかわらず実際にヴァレリウスに抱かれてみると思ったのと違う変化が自分にも相手にもあらわれた、というのはキャラクターの変遷として無しとは云えない。メス堕ちしたくてたまらない本能にあらがって暗黒微笑キャラをやってたということだ。

 こうした内面吐露をホモセックスの直接描写は抜きで本編でしておけば、ホモ化自体の批判はされど「なんでナリスがホモ化してんだよ」という非難はされなかったのではなかろうか?

執筆は96年のようだが、これまでのマルガ・サーガよりもナリスの内心・内的必然に迫った作品であるため、なんで『凶星』にはホモセックスしてヴァレリウスがうわごといってる話ばかり収録してこれを入れなかったのか、いまいち理解に苦しむ。いや、単に続けて二巻を出すつもりだったのに想像以上にバッシングされたからいじけて隠してたのかもしれないけど……。


 そういうわけで、ナリスの内心吐露の話として前半は悪くないが、後半になってヴァレリウスが出てくると何ページにも渡ったナリスさまおきれいですおきれいですとうわごとを云うのでやっぱりつらいですね……。

 そして仕事の打ち合わせをしますと人払いをして一回戦開始のゴングがなって、まずはヴァレリウスがナリスのをしゃぶって「片足切ってからもうチンコたたなくなっちゃったんだよ~いいから入れて」というところで続く。

 どうでもいいけど、十代の頃からまったくではないけど性的不能に近かったって設定にされていますけど、デビ・フェリシアとやりまくってたじゃん……この作品を書いた時点で過去の設定投げ捨てたにしろ、この数年後に『外伝19 初恋』書いてそこでもフェリシアに性教育されてたし、田舎娘の処女やり捨てしてたじゃん……突然性的不能にしないでよ……勃たない受けのチンコをしゃぶる攻めが書きたかっただけなのかい……?(そうなんだろうなあ……)

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