299 夢幻戦記10 総司星雲変(下)

2001.08/ハルキ・ノベルス

<電子書籍> 無

【評】うな


● し、新撰組ものっぽい……(感動)


 松平容保の支援をとりつけ京都に残留することとなった壬生浪士組は、芹沢・近藤を頭とした組織としし完成していく。だが任務により訪れた大阪で、芹沢たちは力士たちとのあいだに大騒動を巻き起こす――


 お、おお……新撰組ものっぽい……!

 傲慢で豪快に見えて老獪に主権をとっていく芹沢の政治的手腕。豪商からカツアゲ同然に金を巻き上げてく芹沢のやり口の問題と、しかしそれに頼らざるを得ない情けない内実。芹沢派を牽制しつつ試衛館派閥を広げようと画策する土方。不器用なりに大将としての器を見せつつある近藤。いいように使われる無能インテリの山南。相変わらず空気の原田。新撰組成立直前の、人間関係や金銭関係の怪しげな動きをちゃんと描いており、歴史物っぽい。特に芹沢を気持ち悪い醜男でありつつ有能として書いているのが良い。

 有名な力士との乱闘も、巻の目玉となる荒事のシーンとしてちゃんと機能しており、力士たちの正体が何者かに操られた象頭のガネーシャであることや、その後の力士たちとの手打ちも、政治的な怪しさや剣呑さを描いている。山崎烝や美男五人衆が入隊してきて美少年パラダイスになりつつ、楠小十郎が夢幻公子のことを知っており心話を使う魔少年として登場して引いているところも、ただの新撰組ものではなくB級伝奇として面白くなりそうな予感を出している。

 一般的な小説と比べるとこれでもかなり展開が遅いものの、ようやく物語として成立する速度になった。やはりさっさと史実にある事件と絡ませるべきだったんだ。間の八巻くらいいらなかったんや!

 それでもまあそもそもストーリーや設定が古臭いので面白いかと云われると微妙なんだが、これくらいの速度と密度で展開してくれるならぼくはギリギリ許せますよ……!


 しかし『白銀の神話』の一巻目でもモブ敵としてガネーシャが出てきたけど、なんで薫はガネーシャを雑魚にするんですかね……ガネーシャってシヴァの長男で現地でも大人気のかなり格の高い神様ですよね……?いやまあ、垢太郎のような感じで生まれたり、父親であるシヴァとの初対面で「あ、母ちゃんいま風呂入ってるから入っちゃダメ」と云ったらブチ切れられて首切られて宇宙の彼方にポーイされたりと、ネタキャラ臭するけどさ、ガネーシャ……。

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