234 町
1997.08/角川ホラー文庫
【評】うな
● いたって普通のホラー
邪魔な恋人を殺してしまおうと深夜、見知らぬ山深くを車を走らせる男。しかし気がつけば彼は見知らぬ町に迷いこんでおり……
恋人を殺すつもりが……という出だしからわかりやすくホラーしていて、ベタで読みやすい。主人公がクズなのも、これから起こる惨劇を予測させるし、出だしはなかなかのうまさだ。
が、その後は延々と見知らぬ町をさまよい、やがてこの町自体が幽霊だったんだ、と気づいていくだけの話で、特にオチとかはない。わざわざ長編にする必要があるのかとか、山場がないので盛り上がりに欠けるとか、欠点はいろいろとあるが、なんとなくホラーが読みたいときの暇つぶしに読む程度のクオリティはある。読みやすいし。
ただ、まったく心に残るようなシーンも内容もないので、別にオススメするようなこともない。町それ自体の幽霊という設定は、うまく書けばなかなかの幻想小説になった気がするので、今作は文体を間違えていたんじゃなかろうか。
しかし角川ホラー文庫は読者は映画版の『リング』や『呪怨』のようなわかりやすい怖さを求めているのに、審査員の趣味なのかホラー大賞からはなぜかやたらとレベルの高い幻想小説が輩出された。筆力は本当に高い作品が揃っているのだが、いかんせん怖くはないため、どうにも読者と編集部の嗜好にすれ違いを感じざるを得ない。
そうした怖がらせたいんだかうっとりさせたいんだがわからない角川ホラー文庫のラインナップのなかでは、とりあえずストレートにホラーではある栗本薫の作品は、悪くはなかったのかもしれない。
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