217 怒りをこめてふりかえれ

1996.05/講談社

1998.05/講談社ノベルズ

1999.04/講談社文庫


【評】うな


● 私怨に満ちたぼくらシリーズ最終章


『猫目石』事件で恋人を失った後、自暴自棄な生活を送っていた『ぼくら』シリーズの主人公・栗本薫くん。かれがある日ひっかけたのは、しごく陰気な女だった。彼女は初対面にも等しいかれに「結婚して欲しい」と頼む。薫は面白半分でその頼みを承諾するが、それが事件の始まりであった。


 わりと長めの話だけど、全編これ、マスコミへの恨み節。

 ストーリー自体は嫌いじゃないんだよね。激しい愛に傷ついた者たちが、穏やかな愛を見出していくのとかさ、悪くないと思うよ。緩やかに育てていく愛も世の中にはあるさ。でもね、やっぱ恨み節がくどくてさあ。栗本先生、いったい何年不倫騒動のことを根に持っているのだと。そんなにマスコミを人非人みたいに扱うのもそれはそれで読んでて居心地悪いですよ。まあ、笑いながら読んでたけどさ、ぼくは。

 これ、長さが三分の一だったら、なかなかいい話でまとまったと思うんだな。どっちみちミステリーにゃならんけどさ。

 ただ『ぼくら』シリーズの最終章としては、薫クンが所帯を持って落ちついて幸せそうになるし、信は相変わらずだし、『猫目石』でちゅうぶらりんな気持ちになった『ぼくら』ファンは読んだ方がいいかもしれない。しかし、ここまで来ると、伊集院大介は探偵じゃなくて愚痴聞いてくれるだけの変なおっさんだよな。


 しかし内容にはまったくそぐわないのに無駄にいいタイトルだな、と思っていたら、そういうときの基本として古典名作からのいただきである。今作はイギリスの劇作家ジョン・オズボーンの名作より。本歌取りもいいけどもうちょっと内容に則したものにして欲しい。

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