167 終わりのないラブソング 5

1993.06/角川ルビー文庫


【評】うな


● はじまる迷走


 五巻、突然にいい奴になった昔の男との愁嘆場をぐだぐだやって追い返したあと、院を脱走した竜一が助けに来てくれたので、デートしてハメハメしまくりました、という甘ったるいくだり。


 とりあえず読者をひきつけるために最初の目標を設定し、見事に人気を得て続くことになったものの、次の目標なんか作者は考えてなかったので展開に困る、とかいうのは少年漫画とかだわりとよくあることだ。典型的なのだとシンを倒したあとの『北斗の拳』とか。

 連載というのは、こういう状況になっても止めることは出来ないため、主人公が意味もなくふらふらする場当たり的な展開になりがちだ。しかし『北斗の拳』はじきにラオウという最強の敵をつくることに成功し、見事な名作となった。

 対して、少年院で竜一と恋仲になるも引き離される、という初期目的を達成してしまったおわラブは、退院してみたものの特に目的がないのでどうすればいいのかわからない樹海にはいり、そのまま出てこられなかった感がある。

 もちろん、二葉の社会復帰というのが大きな目的となりえるわけで、家出して友達作ってバイトして、とそういう意図は汲むことはできた。バイトシーンの甘ったれ方みてると「こいつと仕事したくねえな……」という気分になるのは事実だけど、まあがんばってはいた。四巻くらいまでは。


 ところが五巻になって、都合のいい場面で竜一が登場してしまってからもうぐだぐだの極み。せっかく社会復帰しつつあってー、昔の男ともしっかりケジメつけてー、といい流れができていたのに、ホントもう竜一が出てきてぐだぐだ。

 昔の男である武司との決別のシーンはね、けっこういいんだ。強引にオンナにされたとはいえ、武司が本当に自分を好きだということ、そんな武司の庇護下でいい気になっていないでもなかったこと、それでも竜一と出会ったしまった以上、もう武司とは一緒にいられないこと、そういうのをちゃんと認めて弱々しくも立ち向かっている。

 強引な武司に包丁をもって挑み、それを見た武司がようやく自分が嫌われていると理解してものすごい嘆いて帰っていくシーンなど、大男の悲哀が感じられて悪くない。まあ武司と竜一のちがいって、ツラだけだしな……

 しかしその直後に都合のいいピンチになった二葉を都合よく竜一が助けに来てくれて、そこからもうぐだぐだ。まず探していた竜一が向こうから勝手にきてくれた棚ボタ展開もガッカリだし、そんな竜一と再会して完全にただの色ボケになってる二葉くんにもガッカリ。再会してからもうずーーーっとうわごとみたいなことばっか云いつづけて、正気に帰ったと思ったら即Hばっかり。

 ただでさえ家出してからこっち、弱々しさがわざとらしくてオカマめいていたのに、再会してからはもう完全にオカマそのもの。社会復帰なんてしったこっちゃねーとばかりに「ぼくには竜一がいればいい」と退化して、キモいわガッカリだわでもうどうしようもない。

 しかしまあ、再会しちゃったんだからしばらくは発情して盛り上がるのも仕方ないと思ってギリギリ許すさ。このタイミングでわざわざ再会させたんだから、なにか次の展開を考えてるんだろうしさ。

 ……と思っていた時期が、俺にもありました。

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