146 朝日のあたる家 Ⅲ

1991.06/光風社出版

2003.02/角川ルビー文庫


【評】うな(゚◎゚)


●文章の劣化、きわどい季節


 傷ついた良をかくまうように、二人で暮らしはじめる透。次第に癒やされていく良は透に自らの罪を告白するが――



 出版年をみればわかる通り、一巻二巻はすでに書かれていたものを連続刊行したものだったが、二巻から三巻の間には少々長いブランクがある。おそらく思いつきでなにも考えずに書きはじめ、そのまま筆が進むにまかせて、止まったところまでを単行本化したため、いざ続きを書くとなると難航したのだろう。

 その甲斐もあって、というべきか、三巻では良と風間、良と透の関係のあやうさも進み、いよいよなにかが起こるか、というところまで進んでいる。

 あとからきた読者である自分は、この三巻までを一気に読んだので、あまりどこまでが二巻でどこからが三巻かを分けて認識してはいなかった。しかし、改めて読みかえしてみると、二巻までの完璧と云いたいほどの文体は、この三巻の時点ですでにけっこう崩れていた。ぐだぐだとした描写が多く、会話も勝手にひとりでしゃべり倒しているような部分が見られ、二巻までに見られた清明感はすでに失われかけていた。

 とは云え、二巻までで築き上げていたイメージが崩されるほどではなく、やはり自分にとって特別な作品の一つであることは間違いない。しかし、風間からの「おれは良を殺していいか」という電話があった時点で「次巻に続く」という、あからさまな引きで終わり、そして長年放置されたので、ここまで読んでしまうといささか心象がよくないという難点がある。最後までつきあう気がないのなら二巻止めがオススメだ。

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