082 昭和遣唐使3000人の旅
1985.08/講談社
<電子書籍> 有
【評】うな
● 中国でぶいぶい云わせる梓
エッセイ。旅行記。
1984年、中国が日中友好として三千人の日本人を招待して、その中の一人に中島梓もいましたよ、というエッセイ。
内容は単に中国のあの場所にいった、あそこでアレを食った、みやげにはなにを買った、誰と仲良くなった、というものばかりで、要するに、普通の旅行記だ。ところどころに「私は常の人ではなく作家だから」「作家の中でもグインを書いてる特別な作家だから」といういらん自惚れが入ってきてメガうぜぇと思う瞬間もあったが、おおむね普通の旅行記で、おおむねいつもの中島梓だった。
それにしても梓は日記にいつも献立を書いているっぽいから、こういうエッセイではとにかくやたらと食事している印象ばかりがつく。あれがまずかった、これがうまかった、あれは食べきれなかった、とそればっかり。しかも中国の料理は合わなかったのか、あんまりおいしそうでないのがいちいち失礼。お肉を食べるとおえっとしてしまう設定のくせに餃子食べて「肉にしっかり味があるからなにもつけない方がおいしい」とか肉好きとしか思えない発言をかましているのもいつも通り。
漫画家の杉浦日向子と同室で仲良くなって、ずっと一緒にきゃわきゃわやってた、ということをやたら書いていて、それはそれで微笑ましいのだが、梓の言では「女学生の気持ちに戻ってしまったようで」なのだが、杉浦先生は梓のことを「おっかさん」と呼んでたようなので、なにか二人の間にあるビジョンが著しく異なっているような気がしてならないのが残念である。
なにより残念なことは、これだけ杉浦先生と仲良くなったことを主張して、やれ友達だ親友だと主張されても、現在の梓の口から全然杉浦先生の名前は出てこないわけで「いったいどんな不義理をしでかしたんだ梓!」という気分にしかなれない。
文章自体は1985年であるから往年の梓のままで、ちと冗長ではあるが読ませるものの、しかしなにせ題材が中国旅行なので「中国(笑)」という気持ちが少なからず存在する失礼な自分にとっては、根本的に魅力を感じるテーマではなかった。前半の目玉である軍事式典とか、何百人が置物に扮装して微動だにせず待ってたとか、そういうシーンも「全体主義こわっ!社会主義堪忍っ!」と思うだけであった。
そもそも梓は最初に「全体主義は云々」と云っておきながらに平然とこの扱いを受けているわけで、つうか梓の全体主義が嫌だとか云々は「その他大勢でおわる女じゃない!絶対ない!」というひな壇アイドル的なスターになりたい願望であって、なにも全体主義が嫌いじゃないだろう、梓は。統率された全体主義の恩恵を受ける側に立つこと自体は、ぜんっぜん嫌じゃないんだから、そういう人間が全体主義に嫌悪を示すのは、これ失礼ってもんだろう。自分がお姫様でないといやなだけじゃないか。
終盤「昔、私は気難しかったが今ではずいぶん丸くなった」みたいなことを書いているが、単にそれはなにものでもなかった小娘だから、その辺のその他大勢で扱われていたけど、注目の若手作家になって、扱いがお姫様になったからだろうて。そもそもその扱いは「小説が面白い」「小説が売れてる」からの扱いであって、中島梓から小説というものを抜き取ってしまったら、それこそただの変な小娘、変なおばさんでしかないんだから。
後年、舞台とかはじめたら扱いが良くなかったことに、なにかを察したりはしなかったのだろうか?
梓は小説しか出来ないし、小説のみによって存在を許されているんだから、もう死にそうだってのにやれ年末にライブだ新年には晴れ着みせびらかしライブだとか、なんか違うだろーよー。
なんか話がそれてしまった。
えーと、あとは何枚か梓の描いた絵が載ってるんだけど、思ったより上手くて驚いた。
あと何枚も写真が載ってるけど、やっぱり梓は太っているというより、根本的に丸い。いい意味でも悪い意味でも。
往年の梓はちょいワルパンダみたいなイメージで、ネタとして楽しまれていたのかもしれない。
なんか妙に辛辣になってしまった。いやだって、やたら有名人や有名作家ときゃいきゃいやってて、ひるがえっていまの梓のこと考えると切なくなるんだもんよ……素直に楽しめないよ……。
中国好きや当時の中国の様子を知りたい人には悪くはないと思う。資料性があるためか、近年に電子書籍化もしている。
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