僕の世界系物語

星羅輝月

第1話 南の空の流星

星が降る夏の日、僕らの光が灯った日。

消えない景色がもし消えたら、僕の世界はどう変わるのだろうか…。


手にしたいもの。手に入れなきゃいけないもの。たくさんあっただろ…。

なんで、なんでこうならなきゃいけないんだ。悪かったのはお前、俺は何も…何も悪く…ないのに…。


八月三日 AM:8時27分 「開始」


「やっべぇ!!寝坊した!」

わざとらしく笑いながら学校のない夏休みに蝉の音と共に起床した。

何の予定もないカレンダーを目前に朝の支度をし今にでも誰かと出かけるような忙しさを醸し出しご飯を急いだ。

「あれ?今日も1人で出掛けるの?」

「いつも1人で何してるんだか、そろそろ友達作りなさいよ」

心苦しくボッチで痛いヤツを代表するような僕を母と妹が笑った。

苦笑をしつつ頭を下げ、たまたま耳に入ったテレビの音に耳を傾けた。

「今年の夏、最大級の輝きを放つ流れ星がこの街の上空を通り空を彩るそうです!皆さんこの絶好のチャンスに大事なお願い事などをしてみてはいかがでしょうか!」

あまりその言葉を信用せず僕はリモコンを片手にテレビの電源を消した。

「星なんて好きじゃないし願いなんて絶対叶うはずないよ約束なんて形だけなんだ」

そう丁度五年前の夏僕は大切な人と流れ星が落ちた日約束を交わし去年の夏出会うはずだった。

僕の大切な人は遠くの場所で僕のことを忘れ今頃はきっとほかの誰かと素敵な夏を過ごしているんだ。

そんなことはもうどうでもいい…そろそろ行くか。

飲みかけのお茶を残し僕はお気に入りのバックをしょい外へ出掛けた。

「行ってきまーす!」

今日もテンション上がってる!

僕と自転車が一心同体のように跳ね上がり僕の思うように動いてくれる。

「あれ、みなみんじゃない?」

「ほんとだ笑 またテンション上げてどっか行く気かよ笑」

昔同級生だった。高橋雪菜(たかはしゆきな)と飯嶋岳(いいじまたける) だ。

いつも僕が自転車を漕ぎながら家のすぐ近くの歩道を抜けた大通りに入ると約99.98%の確率で出くわす僕が一番会いたくない幼なじみ達(通称:オサナーズ)だ。

「よ、よう。」

いつも話してるおかげがあまり嬉しくなく、てか超会いたくなかったんだけど…それでも苦笑しつつ僕は挨拶だけして先を急ぐことにした。

「待って!!」

実質乙女中の乙女であり中学生の頃からおしとやかだった雪菜が声を張り上げて僕に言った。

「思い出したくないから避けてるの?」

あれ、君は誰だっけ?僕とそこまでいい思い出があるほどの人質ではないはずなのに何故だか頭が痛い。岳が続けて言う

「そうならお前は間違ってるぜ」

何?お前は俺の何を知ってるんだ?

あの時…あの時僕の周りにいたのは…。

考えているとどんどん頭が痛くなり嗚咽しそうなくらい体調が悪くなりそうだったので一言残し僕は立ち去った。

「ごめん。」

彼女らは何も悪くない忘れた僕が悪い

何も知らずただそう思いペダルを漕いだ。

「はぁ。今日もいろいろと疲れたな、なんで僕はいつもあれを思い出すだけで…」

数分大通りが続きコンビニの手前を左に曲がる大きな山道と思えるくらい高い坂を登りそこにある駐輪場に自転車を預けた。

「はぁ、はぁ、死ぬぅ。」

息切れしてもうクタクタ、1度目を瞑ったら倒れてしまいそうだ。

でも僕は目的地のないただそこへ目指すきっかけとなる場所を探して道を行ったり来たりした。

「あれ?こっちだっけ?ん?ここだ!あれ違う…」

いや…迷ってしまっただけだった。

ただカッコイイセリフを言ってみたかっただけです。許してください。

同じ道ばかりを進んでるうちさっきまで朝だった空が黄金色に彩り僕の脳内の理想の風景をグラデーションして導いてくれた。

空と太陽に見とれている度足が1歩また1歩と進み綺麗な景色が見れる丘へたどり着いた。

「うわぁ!なんて綺麗なんでしょう!うふふ。」

自分でも思ってもいない言葉とオネェ具合に自分がおかしくなったと思いながら実際はこれ他人から見たらわらけてくるのかな?と誰かと居たいんだと思わせるようなことが頭に浮かんだ。

孤独とこの街の素晴らしさを僕は与えられる場所に僕は来た。そう今感じた。

「星が綺麗で空気も美味しい悪いとこなんてなんにもないなぁ!」

ガサッガサガサ…。

ん!? な、なんだ!?

「だ、誰だよそこにいるの!」

ガサガサ…

人影が見えた…こちらへ近づいてくる。

く、来るな!お、おばけ!!

「おいおいふざけんなよ、みなみ」

「誰がおばけですって!?勝手に殺さないで!」

あれ?岳と雪菜!?なんでここに!?

と聞くまでもなく僕がここに来ることが最初からバレてたんだと知った。

「昔、ここでみんなで遊んで…笑いあって…泣いてさ…どんな時もここで皆を笑顔にするぞ!って張り切りながら作戦会議したよな」

僕は覚えてない。そこに僕がいたのかな?

「みなみんと私と岳他にも夏香と桜木が居たよね!?懐かしいなぁ」

なんでだろ。僕の記憶にないことを皆僕がまるで居たかのように話してる…

「う、うん。そんなこともあった…よね。」

「でも、そんな時ももう変わった。お前が大切なことを忘れてしまったから、俺達は何度も取り戻そうもしてもできなかった。お前は今あの時を忘れ、約束を忘れ、今どこにいるんだよ!」

「岳!もうみなみんにそのことは言わないって…みんなで決めたでしょ?」

おい…なんだよ。僕が忘れる?そんなことないよ。約束だって君らが忘れ…君ら?あれ、あの時交わした人は君だけじゃなかったのか?そしたら僕は…僕は…。

く、苦しい。吐き気がする…

でも思い出さなきゃ…

そして僕が1度目を瞑った後僕は気を失い

体だけが動き心の中の僕と入れ替わったように僕は言い出す。

「僕の昔になにがあったの?俺の過去を教えてくれ」

おかしいな…ほんとは…違う…のに。

覚えているのに…知っちゃだめだ。

知ったら何もかも…終わりなのに。

「ごめん。みなみ」

僕を操る誰かがそう言った。

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