第36話 メリット

ハルカワ「自分が第三に入って内側から封鎖するとA子を宇宙に締め出せる。」


ハルカワの考えではA子が宇宙空間にいる間に彼が第三体育館に入る。

そして第三の右エアロックを内側からワイヤーで封鎖すればA子は締め出される。

すると我々は第三体育館を奪還できることになる。

たしかにこれが成功すればメリットは多い。


まず室内カメラが回復できるので火災に対応しやすくなる。

もしもA子が何からの発火装置を作っていたとする。

第三に入ればそれをいち早く発見して破壊することも出来る。

一度破壊すれば万が一、第三に侵入されても再び作るのに時間がかかるだろう。

食糧が得られない彼女は時間切れでギブアップするだろう。

ギブアップした彼女が自ら冷凍睡眠装置に入る映像も確認できる。

つまり第三に一度でも入ればカメラを回復するメリットが大きい。

A子に発見されない小型のカメラを複数追加することも考えている。


さらに冷凍睡眠装置が故障していないか確認できる。

いくらA子が冷凍装置に入っても装置が動かなければ死んでしまう。

それから他の大型装置が破壊されていないかも大事だ。

今回は輸送機で大切に運んできた大型装置を惑星に投下することが任務だ。

その装置が故障していては任務の前提を失う。

簡単には破壊できないだけのカバーは備えているが不安だ。

出来るだけ早く第三を奪還したいの理由のひとつがコレだ。


俺「たしかにメリットは多い。しかしダメだ。」


ハルカワ「どうして?」


俺「まだA子はエアロック付近でテザー(命綱)の固定をしている。」


ハルカワ「ああ。」


俺「もし第三に我々が入った後にA子が室内に戻ると鉢合わせになる。」


ハルカワ「・・・2対1だぞ。」


俺「ダメだ。記録ではA子は25人を殺害した容疑で有罪になっている。」


ハルカワ「25人・・・。」


俺「起訴はされてないが彼女の犯行が濃厚な事件で140人が犠牲になっている。」


モニターではA子がエアロック内に戻った映像が流れた。


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