大型輸送機ゼラニウム(体育館)
おてて
第1話 体育館
レモン汁の酸っぱい香りがして、目が覚めた。
耳の下が痛いので、とりあえずコックピットから出て朝ご飯を準備しに行く。
先ほどのレモン汁の香りは目覚まし時計と連動している。
起床時刻が来るとレモン香料が自動的に噴霧されて俺を起こしてくれる。
それでも起きないとベルの音が鳴るわけだ。
朝食の準備が出来た。
宇宙を飛ぶ輸送機の中ではレトルト食品をレンジで温めて食べることが多い。
今日のメニューはマトゥ屋の牛丼だ。
無重力で米が飛び散らないように少しねばり気があるが、ほとんど気にならない。
地球上で食べるあのマトゥ屋の牛丼と同じ味だ。
俺が乘っているこの宇宙輸送機は中学校の体育館ほどの大きさだ。
形も体育館のように長方形で長細く平べったい。
コックピットは前の方、ちょうど体育館のステージ部分にある。
出入り口は両サイドに一つづつ、計二つのエアロックがある。
後部は大型機材搬入用のハッチになっている。
外側にはシールドが分厚く設置されているので体育館よりひと回り大きい。
この体育館のような大きな機体が三つ連結されている。
イメージとしてはグラウンドに体育館を三つ隣接して建てているような配置だ。
川の字に三つの機体が固く連結されている。
この大型輸送機は「ゼラニウム」と名付けられている。
しかし形から体育館と呼ぶ者もいる。
第一体育館、第二体育館、第三体育館、という具合に。
そういえば床は茶色で壁は白い。
天井に照明がいくつも付いているので体育館にそっくりだ。
俺はテラフォーミングの先発隊としてある惑星を目指している。
大人数が移り住んで作業をする前にまず必要な物を運んでおく必要がある。
後発隊が移り住んだ時に食糧が足りないでは済まされないからな。
惑星到達までは地球から1年ほどかかる。
俺はこの輸送機の機長として雇われて仕事をしている。
俺の仕事はこの貨物を運んで置いて地球へ帰るだけ。
他の機体は全て貨物なので乘っているのは俺だけだ。
俺は第二体育館の真ん中で、ひとり牛丼を食べている。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます