命懸けの脱走劇2

塀のあるところまであと数メートルというところであった。

俺は、今までにない位の鳥肌と冷や汗が自分に出ているのがわかった。走って体調を崩したというよりは何者かの視線を感じたのだ。


後ろを振り返る前に体が叩きつけられた。





「がぁ!」


あまりに突然のことだったので驚きを隠せない。体がずきずきと痛み出す。




「どこへ行く気だ」




やっとのことで振り返ると、そこには小柄な少年が俺を睨みながら立っていた。


声にならない声で




「お前は誰だ」




と問うと




「僕は枯草(かれくさ)。枯草ササメだ」





と睨みながら返され、もう一発殴られた。





しかし、おかしいのである。少年と俺の距離はそれなりに空いているのだ。少なくとも俺に一発殴れる距離ではない。





目を凝らして見ると、彼の手は金属らしきもので出来ていて、即座に義手であるということがわかった少年に似合わない、がっしりとした重そうな義手。



そこから導き出される結論は至ってシンプル。







ロケットパンチをされたということか。






恐らく、あの金属の義手は武器だ。




銃や、刃物も内蔵されているのだろう。



表の社会では決して見ることのできない裏社会の代物。


漫画みたいなことが、この社会では普通に存在するのだと確信した。





しかし、いくらなんでもこちらはお客様である。いきなり攻撃してくるとはちょっとあんまりではないだろうか。




「俺はき」




「知っている。お前は、貴生川だろう」




「そ、そうだ」




こいつ、俺が貴生川だと知って殴ってきたというわけか。

そしてサギは自分が幹部だと言っていた。ということは




「お前は、サギの命令で俺が連れて来られたことを知って俺を殴ったというなら、それは命令違反なんじゃないのか?」





痛いところを突いたみたいで、枯草は少し苦い顔をした。





「このまま、攻撃するって言うなら」




「・・・うるさい」





先ほどよりも、もっとおぞましい視線。



これは・・・殺気だ。




コイツ、間違いなく個人的理由で俺を恨んでいる。




どうしよう。殺される。







脱走なんてしようとしたから?

でも、俺は書きたくないんだ。





さっきのサギを待っていたら?

あいつは誘拐犯だぞ。





枯草は義手に仕込んであるナイフを振り上げた。



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