【コラム】論文を読む方へ

 さて本書は、一般的なネット上の記事や、本を読む場合を想定しておりますが、ここでは論文を読むにあたって必要となる基本事項について紹介していきたいと思います。


 論文を読むにあたり重要なのは「ランク付け」です。論文を読む前に、その論文の重要度はどれくらいかをランク付けしてから読むのです。

 では、その「ランク付け」はどのように行うのか。いくつかポイントを挙げていきましょう。


 1つ目は、自分の目的との関係性です。

 何の目的もなく論文を読む方というのはまずいらっしゃらないでしょう。では、今あなたが手に取った論文、「どのくらい」あなたに影響を与えますか?

 ただ知見を広げるためですか?アイディアをもらうため?それとも、論文の引用元として使いたい?

 何のために論文を読むのか、目的をはっきりさせましょう。

 そして目的がはっきりしたら論文を探し始める訳ですが、このとき注意したいのが要約です。

 論文には必ず要約がついているはずです。英語では"abstract"と言います。まず読むのはこの"abstract"です。そして、「その論文が自分の目的にどれくらい関わっていそうか」をよく考察します。


 2つ目は、その論文の信用度です。

 まずは、前述した「いつ誰」ですね。ですが論文を評価する場合にはさらに注意していただきたい点が2つあります。

 それが、「査読」と「主張の強さ」です。

 まずは「査読」についてです。査読論文とは、同じ分野を専攻する学者によって内容の妥当性を認められた論文を意味します。査読論文であるかどうかは、その論文の妥当性を評価する良い指標となります。

 次に、「主張の強さ」です。例を挙げて説明しましょう。

 今ここに、『色が食欲に与える影響』について考察した2つの論文があるとします。

 1つは、論文の著者自らが行った調査に基づくものでした。もう1つは、他人が行った実験について考察した論文を、さらに引用して根拠とするものでした。

 さて、この2つの論文の主張の強さの違いは明確ですね。1つ目の論文の根拠は"first person"によって行われたもので、2つ目の論文の根拠は"third person"によって行われたものです。もしこれが、引用の引用の引用の引用の引用の…と引用が続き、論拠となる調査が"tenth person"によって行われた実験だとしたら?その根拠にどれだけ信用が持てるでしょうか。そして、もはやそれは「筆者の主張」とは言い難いですよね。

 こんな風に、「実際に調査を行ったのは誰か」や、「何番目の引用か」などの情報を元に、筆者の意見が「どのくらいの強さ」を持っているのかを評価するのです。


 以上の項目から、その論文に自分なりのランクを付けます。甲乙丙でもパーセンテージでも何でも構いません。お好きなように評価してください。また、自分で項目を付け加えていただいても構いません。

 この評価も「クリティカルリーディング」には重要な作業です。


 頭の中にある情報に優劣をつけていくこと、それが、客観的思考を助けることになります。


「え、ランク付けが客観的思考を助ける?」

 すでにご理解いただけた方にはくどいかもしれませんが、まだ疑問をお持ちの方の為に、あと少しだけ説明を加えさせていただきますね。



 「うーん、なるほど、確かに賛成意見の説明は納得がいくなぁ。でも反対派の意見も捨てがたいし…あぁもう、結局どっちがいいのか分かんない!」


 みなさん、この人が「知的な人」に見えますか?なんだか頼り無さげですよね。

 情報にランクを付けることはすなわち、考察の際の優先順位をつけることです。


「確かに賛成意見はすごく論理的で納得もいくけど、彼らの主張の根拠はたった一つのアンケートに基づくもので、優先順位は低いかな。対して反対派の意見はいくつかの視点からアプローチをしていて、信用度はこちらの方が高そうだね。よし、僕は反対派に1票かな。」

 どうです?さっきの人よりは賢そうでしょう?

 客観的にとは、どっち付かずという意味ではありません。どちらにどれくらい比重を置いて、どの意見をどれくらい取り入れるのが妥当か。それを考察できることが本当の客観性です。そして客観的に物事を見ることができる人というのは、自然にこれが出来ているのです。



 いかがでしたでしょうか。もちろんこれは論文以外にも使えるスキルですが、ぜひとも学生のみなさまに特に意識していただきたい項目でしたので、コラムとして取り上げさせていただきました。

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